第30話『第2層 水禍劇場』 第2節
遅くなってしまいすいません。
今回は説明回となっております、よくわからないところは読み飛ばしていただいて結構です。
俺たちのすぐ近くの足場に現れたのは傲岸不遜、大欲非道な黒いうろこの魔人ジャッバールだった。
ジャッバールはこちらに気付くと大仰な身振り手振りで挨拶を行う。
「これはこれは、羽虫の諸君こんなところでどうしたのだ?もしかして産卵期か?このような場所でしか巣を作れぬとは羽虫とは可哀そうなものよな。フハハハハハ」
「プレイヤーの方失礼いたします。あちらの皆様方は次のゲームのあなた方の相手でございます。それに見た限り蟲族の方はいらっしゃらないようでございます」
「チッ、これだから神族というのは気に食わん、冗談の一つも通じないのだからな。にしてもまさかあの羽虫どもが我々の相手とはな、これは勝負にもならないではないか。本当につまらぬ」
そんな事を言われてこちらも何も思わないわけがない、俺が反論してやろうと身を乗り出したのだが、他の人々の様子があまりに変なのでおかしく思い、近くにたまたまいたオッサンに話を聞く。
「どうしたんだよオッサン、俺たちあんなこと言われたんだぞ!なんか反論しなくていいのか?」
「お前!あの魔族と知り合いなのか?!」
「いや知り合いってか、いきなり俺たちに絡んできたやつだけど……」
「クソッなんで俺はこんなにツイてねぇんだ!!」
「オッサンあいつらのこと知ってんのか?」
「直接面識があるわけじゃねぇ、だが噂には聞いたことがある。魔族の中に浅黒い肌に黒いうろこを生やした一族がいるってのは聞いたことがある、その中でも赤いマントに豪奢な装飾品をつけた奴は危険だと海洋国の連中が噂をしていた。」
「それがあいつだっていうのか?」
「わからねぇ。だが、俺の傭兵としての勘が、あいつは危険だと言っている!」
そうオッサンは今まで見たこともないような真面目な顔で言っているため、嘘だとはとても思えない。
確かに現実としてあいつに襲いかかってきたときに足がすくんで動けそうになかった。オッサンの言うことが例え嘘だとしても、俺の経験は嘘だとは思えない。俺は改めて自分の対峙している相手の危険性を思い知った。
そうしているとジャッバールはこちらが話しているのを聞いていたのか、不機嫌な様子でマントを翻すと部屋中に響くような声で話し始める。
「我は陰でいろいろ言われるのが嫌いだ。なので貴様ら羽虫にわかるように教えてやろう。絶望するがよい、我が名はジャッバール・ガリブ・ヴァイル。ガリブをこれより継ぐものであり、魔族十貴族に与えられる称号十極悪の一『貪欲なるもの』を父から継ぐものである。恐れよ、震えよ、絶望せよ!!我が貴様らに死を与えるものである!」
その言葉は全員の心をすくませるには十分なものだった。
アルフレードは何かを言おうとしているようだったが、いま一歩踏み出せないようだ。他の騎士たちも同様に沈黙を保ち中には後ずさっている者すらいる。
ハーフリング族とルーは大丈夫そうだったが、一番様子がおかしいのがカズだった。
カズは立ちすくんだまま頭を抱えてブツブツと独り言を呟いている。
「おいカズお前大丈夫か?おいってば!」
「……あ……う……せぇ!」
「なんだ?なんて言ったんだ!!」
「うるせぇって言ってんだ!友達面してんじゃねぇこの野郎!!そしてそこの蛇野郎!てめぇでけぇ面してんじゃねぇ何が魔族だ、テメェみたいな蛇野郎は酒にでもつけて飲んでやるぞこのクソッたれめ!!」
あ、え?なんだ、こいつホントにカズか?どうなってんだ意味が分からん。
俺は救いを求める視線をアズに送ったのだが、アズは頭を抱えてああついに来たかとつぶやいている。
「アズお前何か知ってんのか?」
「ああ、うんまぁね。私もこんなになってんのは始めて見たよ、でも近いのは何回か見たことあるけどまぁ発作?みたいなものじゃない?すぐ治るし」
「ホントかよ?」
「うん多分、……ねぇカズ?」
「……うん?ごめん、僕またやちゃったみたいだね」
ホントに大丈夫なのか、もしかして二重人格とかそういうのか?
もしかして昨日ジャッバールにつっかかっていったのも関係があったりするのか?
俺は友人の変化に全く付いていけず、戸惑うことしかできない。
そんな中ジャッバールの哄笑が部屋に響いた。
「フハハハ、フハハハハハハハハ羽虫が!羽虫ごときが!この我にこの高貴な血を引く我に二度までも侮辱するとはなぁ……。殺すころすコロシテやるぞ、塵ひとつ残らず皆殺しだ!!」
ジャッバールはそう叫ぶと首より侵食するように黒いうろこがせりあがっていく。そして頬をすべて覆うと目は赤く光り瞳孔は縦に割れていき、そして何時でも飛び掛かれるような態勢を取ろうとしたところで、その場には似つかわしくない冷酷で暢気な声が掛かる。
「あ~皆様お話し合いはお済でしょうか?そろそろゲームのルール説明に入りたいのですが?」
「ウルサイゾ、神族ハ口出シヲスルナ!!」
「そうは参りません、ここはワタクシが任されている階層でございます。こちらのゲームのルール外の行動はペナルティが付くことになります」
「ワレニ指図スルナ!!コノ神族フゼイガ!!貴様カラ殺シテヤル!!」
ジャッバールは付き人の静止も振り切り、弾丸のような速さでGMのオイロスに向かって飛び掛かる。
「ああ、ワタクシはちゃんと注意いたしましたのに。やれやれ仕方ありません」
飛び掛かってくるジャッバールを軽くいなすと、右手を掲げ何かを呟くとジャッバールの体が光に包まれ着地できずに空中でそのまま、まるで紐で吊るされているように静止させられる。
「ガアアアア、オノレ神族キサマ我ニ、何ヲシタ!!
」
「申し訳ありませんが、あなた様はゲームの進行に著しい遅延を生じさせると判断しましたので、ワタクシが認めるまでの発言の禁止、及び能力の一部制限を設けさせていただきました」
「ナンダト!!ソンナ事ガ許サレルト思ッテイルノカ?」
「許されるのです。ワタクシはFM兼GMですので。それではあなた様は自陣でおとなしくしていてください」
「オ……ノ……レ!!」
そうジャッバールが言うのを最後にゆっくりと自陣に下されまだ何か言い足りないようだったが、声が出ないために自陣の中で暴れ、付き人の何名かを殴って吹き飛ばしている。
そんな光景はどこ吹く風でGMのオイロスはルール説明に入ろうと、俺たちの前に空飛ぶ岩に乗りながら移動してくる。
「皆様お待たせして申し訳ございません。改めましてワタクシがここのFM兼GMのオイロスです。これよりルール説明を行わせていただきたいと思います。先ほどのように進行を邪魔されますと、そこの方のようになりますのでご注意くださいね」
そう言って右手を胸に当てながらゆっくりお辞儀する。
「それではまずはこのステージの説明から行います。あなた様がたがいる二つの場所が自陣でございます。そちらがパーティーの待機場所となっております。直接ゲームに参加されない方は、自陣で待機をお願いいたします」
俺たちが今いるこの長方形で、20人ほどがゆうに立てるほどの広さがある足場の事だろう。
「それでは次にゲームステージの紹介でございます。こちらの中央の円が攻撃側の陣地、そして周りを取り囲むようにある出っ張りが周回側の陣地になります」
オイロスは会場内を飛びながら場所を指さして説明を行っている。
ステージの大きさはかなり広く大きめの公園一面ほどの大きさがあり、中央に7人ほどがらくらく乗れる円形の石柱を中央に、2mほど離れて周りを取り囲むように、時計で言う12時と6時の所に赤色の大きな水滴のよう足場が二つ、その間にも中小合わせて10個の水滴状の足場が中央の円をアメーバのように取り囲んでいる。
「ルールは簡単です。攻撃側は円の周りを右側にむかって周回する相手チームを、場外に叩き落すか戦闘不能にするだけになります。そして周回側に移動し、赤色の大きな足場から、左回りに足場を乗り継ぎながら元の足場まで一周するだけになります」
確かにルールだけ見れば簡単だ、スタート地点の足場から時計回りにぐるっと一周攻撃側の攻撃をかわしながら移動すればいいだけだろう。
しかしここは異世界の迷宮だ、そんなに簡単にクリアできるようなものではないだろうか。
「ただし攻撃側は自分の陣地以外に出ず、赤色の陣地への攻撃以外何をしてもアリでございます。周回側も攻撃側に対して直接ダメージを与えるような攻撃以外は禁止しておりません。ただしスタート地点の足場ともう一つの赤色の大きな足場は必ず経由していただきます」
赤はセーフティーゾーンで攻撃できないといったところか。
そして魔法や呪術といった攻撃や弓矢や槍での攻撃など俺たちがわからないような攻撃を仕掛けられる可能性もあり、苦戦は必至だ。
「そして勝利条件になりますが、行われるゲームの数は6ゲームで攻撃と周回を交代で行っていきます。1ゲームの制限時間は砂時計が落ち切るまで、そうですねだいたい鐘半分といったところでしょうか、その中で周回時に周回達成者に3点、攻撃側で相手パーティーを舞台から落とせば1点与えられます。最終的に点数が多い方が勝利チームになります」
俺たちのチームは16人、相手のジャッバール達は22人はいる。
もし交互にやって全員周回したとしたら単純計算で負けてしまうことになる。
どれだけ相手を足止めして周回させないか、鐘半分はだいたい30分ぐらいだろうその時間の中でどれくらいやれるのか、やってみなければ今は想像もできない。
「そうそう忘れておりました、周回時に舞台から落ちたプレイヤーは次の攻撃に参加できません。最初のゲームでは一方のチームが有利にならないように相手チームと同じ数のプレイヤーのみの参加になりますが、くれぐれもプレイヤー参加人数にはお気を付けください」
これは意外と厳しいルールかもしれない人数で押していては、もし全てのメンバーが落ちてしまった場合、次に攻撃するものがいなくなり、相手は楽々周回できる。しかし人数が少なすぎれば周回できる可能性が減るかもしれない。要は戦術次第なのだろう。
「それではこれより質疑応答の時間を設けたいと思います。質問のある方は挙手をお願いいたします。」
俺たちはルールを覚えることで精いっぱいだが、そんな事にお構いなしでオイロスは質疑応答を始めるのだった。
読んでいただきありがとうございます。
ゲームの内容は肉弾という遊びの内容まんまなので、よくわからなかった方は調べていただければありがたいと思います。




