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エスケープ・ダンジョン~オルガニア迷宮へようこそ~  作者: ほうこう
第二層 水禍劇場攻略編
22/99

第19話『後悔と戸惑い、そして』 第3節

 俺とエスリン12はテセラに案内してもらい入口ホールの方に向かっていた。


 酒場棟の中はホントに豪華だった、床にはフカフカの赤いカーペット廊下のいたる所には絵画や壺、きれいな花が飾ってありしかもそれのどれもが雰囲気を壊さないものだった。

 こういうのもアステリさんが選んだりしているのだろうか。


「なぁテセラ……さん、ここの絵とか壺とかもアステリさんが選んでるのか?」


「テセラでよろしいですよ、ただの機体コードですから。それで質問ですが、答えはいいえです。こちらの壺や絵などはアステリ様が作られたものになります」


「作った?アステリさんがこれ全部?」


「はい、とは言っても全て一から作ったというわけではございません、記録にあるものをアステリ様が能力を使って複製したものが多いです」


「へ~なるほどな」


 それでかどうかわからないが、特に絵画などは一つ一つ作風が違ったものが多かったりする。

 どんな風に作ったのかはよくわからないけど、作品の選び方はすごく品があるように思えた。


「なぁアステリさんって何もんなの?なんかジャッバールって野郎はシンゾクとかって言ってたけど、それってなんなの?」


「神族はタイバス大陸に住む一族の名称です。神族は神に仕えることを使命にしており、頭部に生える角によって神託を授かっていると言われています。ここまでが私のデータベースに記録されている事になります」


「なるほど、よくわからん。でもさということは最初に出てきたミナスって人も神族なのか?」


「はい、そうなります。しかしワタクシタチは拝謁したことは一度もございませんので詳しいデータを持ち合わせておりません」


「そっかぁ、じゃあアステリさんの事は?どんな人なの?」


「アステリ様は素晴らしい方です。我らの創造者にして偉大な主人で、生命魔法や創造魔法の使い手でもあります」


「生命魔法?創造魔法は、まぁわかるんだけど、生命魔法は体とかを治す魔法でいいのか?」


「大まかに言えば間違っておりません。細かく言うと体の中のマナの増幅・減少それを利用しての身体強化と治癒能力の促進でございますので、不治の病などは治療することが出来ません」


「まぁそうだよな、魔法ですべてできるんならこんなところになんて来る奴いないからなぁ。ゴメン話は変わるんだけど、ジャッバールって奴が魔眼ってのを使っていたみたいなんだが、それも魔法ってことでいいのか?」


「申し訳ありませんが、一般に知られている事しかお話しできませんがよろしいですか?それにそちらの妖精族の方のほうが、そういった方面に詳しい様に思われますが?」


 そう話を振られたエスリン12は露骨に嫌そうな顔をする。


「そういえばあの時魔眼を打ち破ったのはエスリンだったっけ、じゃあ話を聞くのはエスリンのほうがいいのか?」


「ハンッ、俺様はてめぇみたいなバカに懇切丁寧に教えてやるってのはきれぇなんだ。そっちの人形の嬢ちゃんにペコペコ頭でも下げて、教えを乞うのがてめぇにはお似合いだぜぇ」


「お前サポート役なんだろ?そんなんで大丈夫かよ?」


「うるせぇんだよ、てめぇには能力の事ちゃんと教えてやったじゃねぇか!もう何も教えてやんねぇぞ!」


 そう言いながらエスリン12は俺の肩や頭をぽかぽかと殴ってくる。

 でも小ささのせいでくすぐっているぐらいにしか感じない。


「わかった、わかったからもうやめてくれ、それじゃあテセラ、一般に知られてる範囲でいいから教えてほしいんだけど」


「はい、かしこまりました。それでは魔眼についてですが、魔族が使う呪術の一つであり、ある一定の種族のみが使えるスキルに属するものと言われています」


「呪術?それって魔法と違うのか?」


「魔法は古の時代に、四女神がもたらしたと言われるものです。その後人族や亜人族によって派生が作られていったと言われています。ですが呪術は魔族が独自に作ったと言われる技術で、詳しくは不明です」


 四女神ってなんだという疑問はあるものの、話がそれてしまいそうなので控えるか。


 つまりは呪術についてはアルフリードなどに聞いてもそんなに詳しくは知らないということだろう、もしゲームの中で魔族と戦う事にでもなった場合対抗手段が無いことになる。

 それはかなりマズイ、防ぐことが出来なければ一方的にこちらがやられるということになりかねない。

できるだけ詳しく聞いといた方がいいかもしれない。


「呪術って具体的にどんなのがあるんだ?さっき受けた魔眼は体が動けなくなるような感じがしたけど」


「色々ですね、相手の体の動きを止めたり、痛みをあたえたり、混乱させたり、意識をうばったり、そして呪術だけで殺すということも可能です」


「マジか?そんなん防ぎようなくね?」


「呪術は精神や魂にマナを介して干渉するものと言われています。そのため精神力が強いものはかかりにくいとの事ですが、護符などのアイテムを持つことで防げることもあるようです」


 なるほど精神力を強くすることやアイテムを持つってことが対抗手段ってことか。

 もし護符を持ってる人がいるなら譲ってもらうのも一つの手かもしれない。


 それからまだ呪術について聞こうとしていたのだが。


「入口ホールに到着いたしました。他に何かご用事はおありでしょうか?」


 そう言われて、慌てて辺りを見渡す。


 入口ホールはかなり広く、舞踏会でも開けるんじゃないかと思えるくらいあり部屋の奥には螺旋階段があってシャンデリアや赤いカーペットが敷いてあって、お城のダンスホールといってもいいぐらいの豪華さだ。


 しかしそんな中豪華な部屋の一角にバーのカウンターに酒樽と酒瓶が置いてあって、そこだけ作り物のセットのように酒場が再現しようとしているかのようだった。


「なぁなんであんな片隅の方に場違いな酒場みたいなものがあるんだ?」


「あれはアステリ様の趣味でああなっております」


「趣味?あれが?」


「はい、アステリ様はお酒を飲むのが大変好きでいらっしゃいますので、酒場のスペースをどうしても作りたかったとか。それでこちらの建物が酒場棟と呼ばれているのもそれが原因になります」


 今の一言でアステリさんの、優しく包容力があるウエイトレス姿のおねぇさんという幻想は、辛くも崩れ去り、そこに酒好き(自分で酒場を作るくらい)というあまり良くないイメージが追加される。


 まあそれはそれでギャップがあっていいかもしれないなどと、妄想にふけっていると心配そうにテセラがこちらを覗き込んでくる。


「どうかされましたか、ご気分が優れないようでしたら治療室までご一緒いたしますが?」


「ヘッこの色ボケ野郎がただ発情しただけだ、あんま近寄んねぇ方がいいぜ、妊娠させられるからな」


「してねぇから!それにそんな事じゃ妊娠しないっつうの!!いやホントなんでもないし大丈夫だから」


 そういうと無表情にこちらの顔を数秒観察すると、小さくお辞儀をする。


「かしこまりました、少々体温が高いようですが問題ないでしょう。ワタクシはこれからまだ仕事がございますので失礼させていただきます」


「ああ、ここまでありがとうな」


 そういうと、綺麗にお辞儀をしてスカートをふわりと揺らしながら回れ右をして、元来た方向へ退出していく。その後ろ姿は人間と何も変わらないような気がして、離れていく後姿を見て少し寂しくなってしまう。


 さてと意図的に呟いて寂しい気持ちを切り替える。


 入口ホールにアルフレード達がいるはずなのだが、ぱっと見では見当たらない。


 バーカウンターのある一角にはテーブルやいすが多く並んでいて、ゲームの参加者とみられる多くの人々、人族や獣人、エルフやドワーフなどが酒を飲みながら静に語り合っている。


 いないものはしょうがないので誰も座っていない席に俺は腰を下ろす。


 そこで考えることはやっぱり代償の事だ。

 今はまだあまり自分自身変わっていないように思う、でもこれからはどうなるかわからない。もし俺が変になってしまっても前のように二人と友達でいられるのだろうか?

 そんな暗い考えが浮かんできては消えてを繰り返す。


「おお!あんちゃん探したでぇ、あんちゃんにお礼言いたいって奴いっぱいいんねんで!!……ってどうしたんやそんなシケた面してぇお腹痛いんか?」


 そんな風に話しかけてきたのは漫才好きの双子を連れたハーフリングのバイロンだった、その顔はお祭りに行く子供のようにうれしそうに頬を緩めていた。




読んでいただきありがとうございます。

今年一年もきょうで終わりです、来年もよろしくお願いします。

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