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短編置き場(異世界関連)

異世界で日本人と結婚しました。

作者: 蒼稲風顕

『あなたは、どんな力を望みますか?』

「得られる力は一つだけでしょうか?」

『いえ、それは力の強さ次第です』

「でしたら私は──────」


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 白い空間の中、俺は神と呼ばれる存在に力を貰うことになった。

 で、こうして俺は力を貰ったのだが、望んだ力が異世界のバランスを崩すくらいに強すぎたので制限をうけることになった。

 で、以下が俺の貰った力だ。


──────


 1.1ヘクタール(100m×100m)の広さのビニールハウスを貰い、そこで地球にあった植物の種を植えれば、通常の物より簡単に育てることができる。

 ビニールハウスは区分けされており、それぞれに温度を設定することが出来る。

 また精米所なども完備されており、俺が許可した人物しか立ち入ることが出来ない。


 ※1ヘクタールは100アール。1反は約10アール。


──────


 2.ビニールハウスの中では、24倍まで時間を進ませることが出来る。

 簡単に言えば、野菜や果物などを1時間で1日のスピードで育つことが出来る。

 また区画によって時間を分けることが出来、対象は人間・動物以外の物なら対象になる。

 とまあ、これによって塩を作ることも可能である。


──────


 3.地球の植物なら、どんな物でも種として貰うことが出来る。

 ただし、種をそのまま食べることが出来ないのと、ビニールハウス以外だと植えても芽が出ない。

 だが、ビニールハウスで育った物の種なら植えて育てることが出来る。


──────


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 で、俺が白い空間から転移したのは、王都と呼ばれるこの世界の中心地の一つで、その地の少しはずれだった。

 ちなみに俺は先祖代々そこに住んでいるという設定になっている。

 これももう、かれこれ十年くらい前のことだ。

 で、ここいらに住んでいる人たちには俺が農家の人と認識されており、俺が珍しい植物を育てて、また王家が後見しているといったことになっているので、余計なチョッカイを出されないようになっている。

 そんな訳で、のんびりとスローライフを送っていたのだが……。



「お兄さん、甘くて美味しいです!」



 日本から転移した女の子が、俺の出荷した果物を見て俺の家に来たのが三年前。

 で、それから半年後には俺の家の隣に引っ越してきた。

 そしてかれこれ二年半、毎日俺の家に来ている。

 で、今食べているのはイチゴ。



「そういえば、こっちにイチゴはなかったな」



 結構ありそうでないのが地球産の植物。

 俺が市場に持って行くと、かなり高い値が付く。

 すでにお金もたんまり持っていて、本来なら半月に一度卸せば楽に生活をしていけるのだが、俺の持って行く野菜や果物を待っている人たちがいっぱいいるので、二日に一度ほど卸している。

 まあその半分は王城行きなんだが。



「お兄さん、桃が食べたいです」



 桃か……。

 俺、桃って結構苦手なんだよね。

 缶詰に入っているのとか、ピーチゼリーは好きなんだが。

 というか、俺って果物はそこまで好きじゃないんだよね。

 とはいえ、納入して喜ばれるのは果物だったりする。

 こっちの世界より品種改良された地球産の方が糖度が高いからというのがその理由である。



「そういえば、こっちになかったな。ただ桃の種を植えるが少し時間がかかるぞ」

「お兄さん、ありがとう。出来るのを楽しみにしているよ」



 俺のビニールハウスに余裕はまだまだあるから1本くらい植えても問題ない。

 すでにミカンや柿、栗などは植えてある。

 桃は忘れていただけである。



「そういえば、もう二十歳になるんじゃないか?」

「そうなんですよ。お兄さん、私をもらってくれませんか?」

「そっちがいいなら、いいよ」



 もう俺も三十半ばだしな。

 この子とも三年いるけど、自然体でいられる。

 一緒に居て楽なのだ。



「よし! 私、お兄さんと一緒になる」

「なら、今日から俺の家に来るか?」



 びっくりするほどあっさりとした求婚の申し出である。

 ちなみにこっちの世界には結婚するのに届け出などない。

 日本で言う事実婚みたいな感じである。

 簡単といえば簡単だが、その分闇もありそうだ。

 まあ俺には関係のなさそうな話だが。



「う~ん。今日からでもいいけど、家具など片付けたりするから三日後でいいかな?」

「なら、せっかくだから改築して少し部屋を増やそうかな」

「いいかも。そしたら私の家にそれまで住む?」

「そうだな。でもそしたら、こっちも準備をしないといけないからやっぱり三日後だな」

「りょうかい!」



 俺はギルドへと家の改築の仕事依頼に行く。

 ちなみにこのギルド。

 たぶん冒険者ギルドと思われるが、あいにくとこの世界に魔物などこの世界にいない。

 ギルドは所謂、仕事の仲介屋みたいな感じである。

 一定の手数料が発生するが、その分きちんとしている。

 今回のような場合、欠陥住宅だったらギルドが責任を持って新たな業者に依頼をかけるのだ。

 無論、その場合経費はギルド持ちである。

 だからギルドを通せば、多少割高になるが安心なのである。

 しかも俺は、後見に王家が付いているので下手な事をすれば大問題に発展する恐れがあるから安心な事この上もないのだ。



──────



 ギルドに依頼をし、自宅に戻る。

 家で荷物をまとめていると、さっき一緒になるっていった女の子を思い返した。

 彼女は、俺と同じように神によってこの世界に連れてこられた日本人だ。

 ちなみに俺は元の世界では死んだとか物騒なものでなく、俺の精神と肉体がコピーされ片方、まあ今の俺がこっちに来た訳だ。(スライムか?!)

 そんな訳で、片方の俺は普通に日本で今も暮らしている。

 ただ俺がこっちに来たから、向こうの俺に少しボーナスがあった。

 簡単にいうと、ジャンボ宝くじ1等の前後賞の一億円が当たった。

 俺は使えなかったが、こっちに来れたのだから文句もない。

 実際にこっちでは裕福に暮らしているし。



 だが彼女は俺とは違い、どうも日本で病気で亡くなったとのことだった。

 で彼女は、その肉体を治して貰いこっちの世界に渡ったと俺に言ってた。

 それが原因か、彼女は神から製薬という力を貰ったとのことだ。

 それは、植物、動物、鉱物から薬を生み出す力とのことだ。

 で、俺と会うまで病院で働いていたとのことだ。

 いや、まだ働いているな。

 俺の隣に引っ越してからは薬の納入しかしていないが、二日に一度、俺が市場に行く時に病院へ納入をしている。



 そんな彼女は、俺と性格だけでなく、神から貰った力との相性もいいのだ。

 ただ残念ながら、こっちの植物をビニールハウスで育てることは出来ないが、元居た地球の植物は育てられるので漢方薬の原料などビニールハウスの片隅で育てている。



 で、出会いは先ほどいったように、こっちの世界にない果物を見て俺を探したんだそうな。

 まあ一歩間違えたらストーカーだよな。

 とはいえ、俺も日本の話に飢えていたから何の問題もなかった。

 でもあれだよね。

 あれじゃあ分からないと思うが、日本とこっちの世界の価値観ってかなり違うから、こっちの世界の人と一緒に生活をするのは厳しいんだ。

 俺もこっちに来てだいぶ経つけど、まだこっちの人間側になれきれてないんだよね。

 距離感がちょっとばかり、いやかなり違うんだな。

 それは彼女も俺と同じ事言っていたし。

 だから彼女と一緒に生活をする事に違和感とかなかったんだ。

 もしかしたら出会ってすぐにお互いに結婚を意識したのかもしれないな。



──────



 ────で、三日後、俺たちは新婚生活を始めた。

 とりあえず、俺が彼女の家に転がるような形で。

 祝福をしてくれる人などいない。

 だって誰にも言っていないのだから。

 でも、俺たちはペアリングを作り、お互いの薬指に付けた。

 それだけで、何となく二人の距離が縮まった気がした。


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 それから二年後。

 今、俺たちの腕には男の子と女の子の双子の赤ちゃんがいる。

 半年前に生まれた子どもたちだ。

 異世界での出産は不安だったが、母子共に無事に産まれることが出来た。



 で、産まれた夜に神から何か祝いをしてくれると言われたので、ビニールハウス内に音楽を流して貰うようにお願いをした。

 当初、俺たちみたいなスキルをお願いしたが、この子達がこっちの世界で生まれたから、無理だと言われた。

 ちなみに、こちらの世界だと十歳になった時に生まれ育った環境、本人の願望、体質などの複雑に絡み合った何かの力でスキルが発現するらしい。



 それと、神から大きな力は無理とのことだったので、それなら俺たちの住んでいた世界を少しでも知って欲しいと思い、音楽にしたのだ。

 だがこの音楽というか聞く装置、俺の思っていたよりもすごかった。

 ────簡単にいうとユウ○ンだ。

 ビニールハウスの入り口にエアコンのようなボタンで好きな音楽を選ぶことができる。



 で、初めて嫁と口論した。

 無論、どの音楽を流すことかで。

 まあすぐに、二時間交代で自分の好きな曲にすることにしたのだが。

 とはいえ、子ども(赤ちゃん)の起きている時はモーツァルト。

 寝たら、自分の好きな音楽を流すことが出来る。



 ちなみに子どもたちは普段というか昼間は、ビニールハウスにいる。

 ビニールハウスの一角を、子ども用スペースに改造したのだ。

 温度や湿度など快適にして、嫁がそこで面倒を見ている。

 とても過ごしやすいらしく、三人でよく寝ている。

 子どもたちも家にいるよりも住み心地が良いらしく、こっちにいる方が機嫌がよくぐずらない。

 ちなみに嫁と子どもが寝ている時は自分の好きな曲を流すことが出来るので、こっちとしてはwinwinな状態だ。



 今も俺の好きな1980年代のアイドルの曲を流してノリノリである。

 一度試しに、1980代の曲を流したところ俺の心を揺さぶったのだ。

 残念ながら嫁の心は揺さぶらなかったみたいだが。

 そんな彼女はビートルズの曲を流している。

 この辺りの二人の微妙な選曲がもしかしたら二人を結びつけたのかもしれない。



──────



 ────と、そんなこんなで俺たち家族は異世界で生きている。

 ぶっちゃけ半分、海外で生活をしているような気分だが。

 時おり、トカゲの顔をしたお隣さんがやって来て、お茶を飲んだり、ちょっとばかり怪しげな魚をくれたりするが他は至って普通だ。



 たぶん異世界を堪能するのは俺たちの子ども達だな、きっと。

 だって俺も嫁さんも、すごく狭い範囲で生きてきたから。

 もしかしたら俺たちもそこから一歩踏み出せば、地球とは違う異世界での楽しみがあるんだろうけど、俺と嫁にその選択肢はなかった。

 たぶん、これからもないだろう。

 今の生活に満足をしているのだから。



 で、子ども達が外に出たいと言ったら俺たちは応援することにしている。

 子どもが生まれた時に嫁と話したことだ。

 俺たちは子どもたちが帰ってくる場所を作って待っているということに。

 ただ俺と嫁の子だと考えると、どうも積極的に外に出るというイメージが全く湧かないのは何故だろうか。

 まあそれはそれでいいかと思い、今日も今日でビニールハウスで植物を育てている。

農業の設定は、一生懸命に考えたんだ……

1ヘクタールとか1反も調べた。

……でも。


いつか役に立てよう、この設定。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ビニールハウスで植物を育てるという能力を得た主人公が、冒険もモンスターとの危険な戦闘もなく堅実に暮らしていく様子に、読んでいてほのぼのしました。 幸せに暮らしている主人公を見ていると、異世…
[一言] 異世界になじみ切れない転生者、ありそうなんだけど実の所扱いにくいネタを上手くお話にしておられ、引き込まれました。 良いです。
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