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続こんぺいとう  作者: 大平麻由理
特別編2 街頭インタビュー
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クリスマス、恋人たちは…… その3

「では早速ですが、お二人のご関係から話していただいてもよろしいでしょうか」


 私はすっかり仕事モードに頭を切り替え、はるか君にマイクを向けた。


「ああ、そうですね。わかりました。えっと、クリスマスの過ごし方を訊ねておられたということは、恋人同士とか、そんな答え方がいいのでしょうか? 」

「え? あ、はい。あの、お二人の関係をそのまま教えていただければ……」


 どういうことだろう。

 質問の投げ方によっては、二人の関係性が変わるとでも言うのだろうか。ますます気になる。


「じゃあ、恋人同士、ということで。いや、婚約中、かな? 」

「こんやくちゅう……ですか? 」


 おっと! これはどういうことだろう。

 親に二人の関係を知られたくないのに、婚約中だって? 

 わけがわからなくなってきた。


「はい。今はまだ学生ですから、卒業後、二十五歳くらいで結婚しようと決めています」

「そうですか。それは素敵なお話ですね。では、今はまさしくラブラブのお二人だと思いますが、今年のクリスマスはどのように過ごされる予定ですか? 」


 家族に内緒の付き合いの二人は、いったいどんなクリスマスを過ごすのか。

 ますます気になる。


「そうですね。俺……じゃなくて、僕の方はサークルの活動が忙しいのでこっちに残りますが、彼女は、バイトが終わり次第、夜行バスで実家に帰らせます」

「え? ということは、クリスマスは一緒に過ごされないんですか? 」


 これはびっくりだ。本当に彼女に会わなくても平気なのだろうか。

 年が明けて大学が始まるまでは結構長い。


「そうですね。クリスマスだからといって、特別に何か予定を立てるとかはないですね。でもまあ、年末から新年にかけてはずっと一緒ですので、別にかまわないかと」

「そ、そうなんですか。年末から新年はご一緒なのですね。では、その間、お二人で旅行にでも行かれるのでしょうか。いいですね」


 それなら納得だ。自由に振る舞えるのも、学生である今のうちだけなのだから。

 私まで幸せのおすそ分けをもらった気分で、ついつい笑みがこぼれてしまう。


「いや、旅行なんて行きませんよ。僕たち、貧乏学生ですから。実家でゆっくりします」


 な、なんと。旅行ではないらしい。

 となると、それぞれに実家で過ごす、ということなのだろう。

 実家に帰るとなると、そう頻繁には会えないのではないか。

 だとすれば、長期間会わなくても平気なはるか君。

 ここにも草食系男子発見! ということになりそうだ。


「ではお二人は、しばらくの間、会えないということですよね。寂しくないですか? 」

「いや、だから、一緒に実家に帰るので……」

「一緒に? ちょっと待って下さい。よくわからないのですが。あれ? 私が理解力が乏しいのでしょうか。あのう、ご実家にはお二人のことは内緒、とおっしゃってましたが……」


 なんだかよくわからなくなってきた。

 これは最初から整理して考える必要がありそうだ。


「ああ、そのことですね。僕たちが婚約してることはまだ祖母にしか言ってませんが、実家は同じところなので、彼女とはずっと一緒にいられるんです。大掃除も一緒にしますし、紅白も一緒にみます。初詣も家族総出で行きます」


 祖母にしか言ってない? それに実家が同じところ? 

 年末年始の恒例行事は常に行動を共にする……。

 私の頭の中はますますこんがらがって理解不能領域に侵され始めた。


「あの、申し訳ありませんが、ちょっと質問させていただいてもいいですか? ご実家が一緒とおっしゃられましたが、まさか、ですが、お二人は、その……」


 ご兄妹でいらっしゃいますか? などと誰が訊けるだろう。

 そんな質問は、もちろんテレビ的にはご法度だ。

 けれどそのように見れば、どことなく二人が似ているように見えてしまう。

 やぱり、禁断の恋に陥ってしまった二人ということなのだろうか。

 兄妹でそんなことになるなんて。

 あああ、大変なことになってしまった。

 絶対に引き止めてはいけない二人だったのだ。額に季節はずれの汗が滲む。


「そうなんです。親戚同士ですから」


 へ? はるか君、今何て言いました?


「親戚同士、ですか? 」


 確か、そう聞こえたような気がする。いや、そうであって欲しい。

 だって、この絵になる二人には、必ずや幸せになってもらいたいんだもの。


「ええ。ですので、同じ敷地にそれぞれの家があります。年末年始は僕の祖母宅に皆が集まりますので、寝る時以外はずっと一緒にいますから」

「あ、そ、そうですよね。そうそう、ご親戚ですよね。ずっと一緒に過ごされても何ら、不思議はないです。あはは、ははは……」


 よ、よかった。兄妹じゃなくて。

 私は額の汗をハンカチでぬぐい、ごまかし笑いと、そうですよねご親戚ですよねと何度も繰り返して言いながら、こくこくと小刻みに相槌を打ち、何とかその場を乗り切った。


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