前世はシュークリームだった私は転生し、高校デビューではなく、悪役令嬢デビュー!?
【作者より】
作者は『悪役令嬢』を取り上げたのははじめてでもの凄く疎いです。
どうか温かな眼差しで見守ってくださいませ。
私の前世はどこかの工場で大量生産されたシュークリームではなく、プロのイケメンパティシエによって1つずつ丁寧に作られたシュークリームですの。
このお店に出されているシュークリームはサクサクのシュー生地に濃厚なカスタードクリームがふんだんに入ったもので、一番人気のある商品。
今日もお店のショーウィンドーの真ん中に私を含めた仲間達が店頭に並びます。
たくさんのお客様に買ってもらい、笑顔で美味しく食べてもらうことが私達の重要なお仕事ですのよ。
私がこの中で一番美しいですわ……。だなんて、いつもじゃない。
人気ナンバーワン商品のこの私のライバルは隣のチーズケーキを挟んで、フルーツタルト。
私とフルーツタルトが睨み合う中、間に挟まれたチーズケーキは毎度ながら怯えていらっしゃるの……。
*
ある日、私はシュークリームとしての生涯に幕を降ろすこととなります。
「イチゴのショートケーキとシュークリームがそれぞれ4個ずつですね!」
お店の店員さんがショーウィンドーからショートケーキを4個入れ、仕切りを挟んで私達を1つずつ箱に入れていきます。
ついに私もこの箱の中に入る時がきましたわ! と思っていた矢先に、店員さんが手を滑らせて私をベシャっと床に落としましたのよ!
「……あっ……」
あっ……? 私を落としておいて、拾ってくださらないの?
これにはイケメンパティシエは呆れ顔をしていますわ……。
「君ー、シュークリームを床に落としたの何回目? 原材料が高いの分かってるよな?」
「すみません……」
「その落としたやつは捨てろ。次はすみませんで済まされる問題じゃないからな」
「ハイ……」
その時に私の仲間達はその店員を睨んでおりました。
みんな、ありがとう。
私はみんなと一緒にいられて幸せでしたわ……。
どうせなら、私を食べて幸せにさせたかったのに!
そう思いながら、私は入りたくないゴミ箱に捨てられました。
一方のフルーツタルトはそんな私の姿を見て笑っていらしたの。
凄くイラッとしたわ。
いつかは復讐してやりたいと……。
*
こうして、シュークリームとしての生涯を終えた私は人間に転生しました。
私は石崎 浩奈と名づけられ、イケメンなお父様と美人なお母様に蝶よ花よと育てられました。
そんな私はついに高校生。
と言われましても幼稚園からある超有名大学付属でエスカレーター組ですが。
確か、中学を卒業する時に噂で訊きましたが、高校からこの付属校という人もいらっしゃるみたいでして……。
それにしても新たな出会いだけしか楽しみがないとはどういうことですの?
まぁ、一応は高等部の1年生ですので、新入生らしくしていますが、ね?
「ごきげんよう」
「ごきげんよう。石崎さんはクラス表はご覧になられたの?」
「まだですの。もしよろしかったら紗菜さんもご一緒に」
「本当ですか!? 行きましょう!」
彼女は井戸 紗菜さん。
私と同じくエスカレーター組なので、一緒にクラス表を見に行こうと誘ってくれました。
残念ながら、彼女とは別のクラスです。
「石崎さんと同じクラスじゃなくて残念ですわ……」
「私も……。でも、来年と再来年がありますからどちらかで同じクラスになれればよろしいのではないかと」
「そうですわね……」
私は一応、彼女にフォローしましたが、果たしてフォローになっているかは分かりませんね。
実は私、彼女と同じクラスではなくていいんですの。
むしろ、その方が嬉しいですわ!
今までのいい子キャラを捨てる機会がきましたわ!
「ねぇ……」
何よ? 私がある決意を固めたのに、話しかける馬鹿は。
その声は少し怒り口調の女の子の声。
第一声はおしとやかに「ごきげんよう」じゃなかったので、違う中学の方かしら。
「ごきげんよう」
「もしかして、前世はシュークリームだった?」
「えぇ。こちらだと、いろいろな方がいらっしゃるので、別のところで話しましょう」
私は見知らぬ少女と一緒に初等部の建物に行き、話の続きを訊くことにしましたの。
「着きましたわ」
「ここは?」
「こちらは初等部です。庶民の言葉ですと小学校よ」
「話を戻すけどさ、わたしのこと覚えてるよね?」
「誰でしたっけ? 存じ上げませんわ」
「とぼけないで! あたしの前世はフルーツタルト。あんたのライバルのフルーツタルト!」
私は彼女の前世を訊いて驚きましたわ!
まさか私のライバルであり、復讐してやりたいと思っていたフルーツタルトが同い年の少女に転生していたとは思っていませんでした。
「フルーツタルトね……。思い出しましたわ……」
私はふとあの時のことを思い出し、冷笑を浮かべました。
「それにしても奇遇だよね。シュークリームと同じ高校だなんて……」
私はとっくに同じ高校だと気づいていましたのに、フルーツタルトは呑気ですわね。
「私は幼稚園からのエスカレート組。ところで、まだ、名前を教えていただいていませんわね?」
「なんの?」
「転生した後の名前よ。私は石崎 浩奈です」
「あぁ、親からつけられた名前ね。あたしは前川 留果」
私達は簡単に自己紹介をします。
「ならば、フルーツタルトだった前川さん、シュークリームだった私から一言言わせてもらってもよろしくて?」
「何? 友達になってくれるの!?」
「誰があなたとお友達になるものですか? 私はあなたを友達になる気にはなりませんわ……」
「じゃあ、何?」
「私はあなたを……」
「あたしを?」
私が一旦話を切ると、彼女はキョトンとした表情をしていますわ。
その表情、私は待っていましたわ。
「あなたを奈落の底に突き落とすまで復讐させていただきますわ!」
「マジで!?」
「ハイ。あの頃から復讐を決意していましたのよ?」
「……」
「私はあなたが嫌い。そして、憎い。今度はあなたが私と同じ思いをする番……。」
「……」
「だから、私はあなたに復讐を誓いますわ」
シュークリームだった私、石崎 浩奈はフルーツタルトだった前川 留果さんに復讐を誓いました。
私はいい子から高校デビューではなく、悪役令嬢(?)デビューをしたお話でした。
読んでいただきありがとうございました!
2015/09/26 本投稿