5話
神殿の中は、外観と同じように白で統一されていた。
外からの光はあまり入ってこないが、天井や壁に埋め込まれた光の魔法石で明るさは十分だ。
神聖で荘厳。
神殿とは斯くなるものというべき、見本のような神殿だった。
しかし、やはり違和感を感じる。
綺麗すぎるのだ。
百歩譲って、この森の中に神殿があるのは分かるとして、塵ひとつ積もっていないのは異常だ。
ここは帰らずの森だ。
人は滅多に近付かないし、まさか帰ってこない人達がここに留まって管理しているなんてことがある訳がない。
人の気配は感じられない。
ここに来るまでも、人が住んでいる形跡は一切なかった。
この森が帰らずの森と呼ばれるようになったのがいつのことかは分かっていない。
しかし、千年程前の文献に既に帰らずの森と呼ばれ、今のような情況であったと記録に残っている。
そのことから、神殿が建てられたのは、少くとも千年以上前であることが推測される。
それにも関わらず、神殿は古びた感じが全くしないのだ。
可笑しいとは思いつつも、ルイスは歩みを止めることはなかった。
人二人が手を伸ばしてやっと届くくらいの太さがある柱が連なる中を奥へと進んでいく。
最奥には、フクロウが先に止まった杖を突いた女性の像があった。
勿論、その像も白一色だ。
白いフクロウは、精霊神の御使い(みつかい)と謂われている。
つまり、ここは精霊神の神殿ということになる。
精霊神は、精霊王をも従えるあらゆる精霊の母たる存在だ。
精霊神の神殿が、「はじまりの地」があるのではと囁かれるここにある。
期待が膨らんだ。
しかし、ここが危険な地であるということを忘れてはならない。
それに、浮き足たって重要なものを見落として「はじまりの地にいけませんでした」となってはつまらない。
深呼吸をして心を落ち着かせた。