4話
不安を覚えながらも、森に入って三日が過ぎ去っていた。
やはり、魔物の一匹も出ず、何事もなく終わった。
ここまで来ると、いよいよ可笑しい。
引き返そうと、何度も思ったがあともう少しだけと結局森の奥へと足を進めた。
ふと、ルイスは空気が切り替わるのを感じた。
初めての変化である。
外から見た森の規模からして、森の中心辺りまで来ているはずだ。
「なんにも起きないから、そろそろ飽きてきたところだったんだよね」
気が付けば不安は吹き飛び、好奇心がむくむくと湧き上がってきた。
獣道のような道なき道を逸る気持ちを抑えれず、足早に前へ進む。
進行を邪魔していた木々が、次の瞬間ぱっと開けた。
下草が青々と茂り、色とりどりの小さな花を咲かせた野草が生えている。
大きく開けたそこには、白く輝く神殿があった。
何故神殿と判断したのかといえば、白い建物の前に門があり、その両脇に精霊たちを守護すると言われる伝説の精霊、精霊神の使いクー・シーを模した像が一対向かい合って建っていたからだ。
どの精霊を信仰する神殿にも、勿論、精霊神の神殿にも対になったクー・シーの像がある。
強面だが、何処か愛嬌のある姿のクー・シーをルイスは結構好きだったりする。
変化の乏しかった森に現れた神殿に呆気に取られていたルイスだったが、門や神殿の柱や壁に施された完璧なまでの彫刻に気付くや否や、駆け出した。
「様式はかなり古そうだな。きっと古代だろうな…はぁ…これは伝説の火の精霊フェーニクス!」
感嘆の溜め息をつきながら、夢中になって彫刻を眺める。
どの彫刻も、どうやら伝説の精霊達を描いているらしい。
しかし、誰も住んではいない森に、神殿…
ますます、ルイスの好奇心を擽る。