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素晴らしき このイカれた世界  作者: hi-g
魔導の神 ミトラス編
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王都の闇、死神と殺人鬼①

 ここまでで斧を一本に剣を二本、白魔石を十五個、青魔石を一個手に入れることができたので、全部売れば生活費の足し位にはなるだろう。


懐中時計で時間を確認するが、時間はまだ十六時だ。次の階層に行く前に、ユミルから渡されていた紙を確認する。クルスタルゴーレムの心臓の取り出し方が書かれているはずだ。


 なになに……。


「正面と背面が非常に硬くなっているが、側面と関節は比較的柔らかくなっている。まずは両腕を切り落とし、側面から二つに割って心臓を取り出せ」


 これは面倒だなぁ。十九階からはまた、階層の雰囲気が変わった。岩肌から水晶が見えている、あちこちから淡い光が漏れており。非常に幻想的な空間だ。

 この水晶持って帰ったら売れるのかな……試しに削ってみると、光を失い、ただの石になってしまった。


『おい、ゴーレムが近づいてきているぞ!』


 前方を確認すると、全身が透き通るような体をした魔物が近づいてきている。かなり硬いらしいので、双生剣を準備して斬りかかると、あっさりと真っ二つにすることができた。


『拍子抜けだな……』

『まぁ強くて倒せない、よりはマシだろう』


 動きは遅く、使ってくる魔法も聖光(ホーリーレイ)だったので、レジストしながら斬り伏せていく。気が付けば心臓も二十個を超えていた。


『たしかに魔法は弾かれるけど、それ以外は何もない魔物だな』

『その剣のおかげだろう、ためしに鋼の剣で戦ってみたらどうだ?』


 たしかに強度が気になるので、迷宮から戻る前に試してみよう。探すと中々みつからないのが魔物……少し探してしまったが、後ろを向いているゴーレムを発見した。


 気が付かれないように、静かに近寄り渾身の一撃を繰り出す……が思い切り弾かれてしまった。手がめちゃくちゃしびれている。


『なんて硬さだ……傷一つ、ついていない』

『ほらみろ、剣のおかげだったのだ』


 クリスタルゴーレムがこちらに振り向いてきたので、双生剣に持ち替えて処理をする。これで二十一個、二十階のボスまで行ってもいいのだが、今回は迷宮攻略が目的ではないからな。


 カバンから転移石を取り出し、十階を経由して迷宮から外に出る。時間はまだ十七時前だ。いつの間にやら雨は上がっている。


 賞金首の扱いが気になるから、このままギルドに向かおう。北門の門番に「今日は早いな」と声をかけられたので、たまにはねと答えておいた。

 夕方は朝よりも人通りが多くなっているかもしれない。ギルド前にはクエストから戻ってきたと思われる冒険者たちで賑わっていた。


 クリスは冒険者の対応に追われているようだ。こちらに気が付いて手を振ってくれているが当分順番はまわってきそうにない。ホワイトボードを見るとハルカの名前が書かれている。

あれ、今日は休みだと思ったんだけど……午後出勤とかもあるのかな。ハルカを探すと、丁度手が空いているようだったので報告に向かう。


「こんばんは、ハルカさん」

「こんな時間にめずらしいですね」


 たしかに、午後に来たのは初めてだな。


「今日はどうされました?」


 ふふふふ……驚かせてあげよう。


「これなーんだ」


 死者の書を手に取り、カウンターの上に置く。ハルカは大きく目を見開き「これは!」と大きな声で叫んでいた。あまりに大きな声だったので周りの注目を浴びている。

 当の本人は気にする様子もなく、死者の書を手に取り喜んでいた。


「あれ、誘惑(テンプテーション)のページがないですね……」

「ああ、そこのページだけ破いてしまったんです」


 カバンから一枚の紙をハルカに渡す。


「これです、これで計画を実行に移せます。私に感謝しているはずだから、簡単に落ちるわ……」


 ロクな計画ではないのだろう、独り言をブツブツ言っているので内容は聞かないことにした。


「ハルカさんにお願いがあるんだけど、誘惑(テンプテーション)のページは複写でもいいかな? その本呪われていたから一ページだけでも呪いの影響がでるかもしれないし」


 すると、ハルカが紙を俺に返してきた。


「もう覚えたから大丈夫です」

「はやいですね……」

「そうそう、ミトラス様が迷宮に潜る日ですよね! 三日後の満月の晩です。時間にして二十時くらいから潜ると聞いています」


 二十時ね……人目にもつきにくいから好都合だ。でも時間があいてしまったなぁ……もう迷宮に潜る理由もないし、迷宮クエスト以外でお金を稼いでおくか。


「あれ……それは死者の書ですか?」


 声のほうを振り向くとクリスが立っていた。


「お邪魔してすいません、ハルカさんが何を大声で叫んでいるのか気になってしまいまして」

「ああ、運よく呪いを解くことができたんだ」


 クリスが死者の書をみつめている。読みたいのだろうか?


『その本は呪いが解けてはいるが、禍々しい魔力は消えていない。あまり人に見せないほうがいいぞ』


 クロが忠告してくる。


「……リオンさん、突然で申し訳ないのですが、その本を私に譲ってもらえませんか?私が持っている物でしたら何でも差し上げます」


 何でも? とても魅力的な提案ではあるが、クロに注意されたばかりだからな。


「悪いけど、この本は譲れない。呪いが解けたとはいっても、また呪いが発動する可能性もあるし……俺自身も本に殺されかけたんだ。読みたいページがあるならこの場で読むのは構わないよ」


 クリスは残念そうに、そうですか……と呟いている。


「いえ、本一冊なければ意味がないので、今回は(・・・)諦めます」


 瞳の奥に冷たい光が宿っているような気がするのは気のせいだろうか。


「そうだ、少し時間ができたからクリスのオススメクエストを受けたいんだけど、まだ紹介できるかな?」


 ああ、それならと言い手元のファイルから紙を取り出してきた。様子を見る分にはいつも通りのクリスに戻っているようだ。


「コーラス侯爵から話を聞いてほしいと依頼が入っています、詳しい内容はその時に……としか書いてありません」

「オススメには聞こえないんだけど」

「この方は、いま一番勢いがある侯爵です。顔をつないでおくのは損ではない話ですよ。おそらく報酬も破格」


 そんなおいしいクエストをなぜ誰も受けないんだ。何か理由があるのだろう。するとハルカが「やめたほうがいい!」と強い口調で言ってきた。


「侯爵は素晴らしい方ですが、あのリドルと共謀しているって噂も流れています。現に侯爵の政敵である貴族が次々と惨殺されて、そのおかげで出世街道を突き進んでいますからね。関わらないのが身のためですよ」


 リドルと関係があるのかもしれないのか……嫌だなぁ、また半殺しですめばいいけど、今度こそ殺されそうだよね。


「クリスさん、そのクエストを受けます」……ぇ、クロさん? また勝手に!


『リドルにやられっぱなしでいいのか? 私はアイツをボコボコにしないと気がすまない。今ならいい勝負ができると思うぞ』


 ……忘れていた、こいつは根に持つタイプだったな。


「リオンさん! 私の言う事が信じられないの!?」


 ハルカが突然大きな声で叫ぶ、あまりの強い口調に驚きが隠せない。

 明らかに様子がおかしい。瓶底眼鏡からかすかに見える目が血走っており、いつものハルカと違ってヒステリックな感じがする……。


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