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スクラッチ!  作者: 横山
9/66

続、エルフの里

前回の続きです

「十三歳にもなってママはないと思うぞ?」

 呆れた自分がそう言うと、

『えっ?』

 その場にいた全員から聞き返された。

「え、ママってだめなの?」

「ママが許されるのは精々六歳までだろ」

「ママってどう意味なのかしら?」

「小さい子どもが使うお母さんって意味でしょ?」

「何でヒィロが知ってるんだ?」

「何でって、普通じゃないの?」

 上から、ネル、ロシュの妹のニーネさん、ロシュの順である。

 三人にそれぞれ答えた後、自分は『ママ』が日本語(元英語?)だという事にやっと気付いた。

「ママがどうかしたの?あ、いや。ママって言葉がどうかしたの?」

 言ってから別の意味にも取れるなと思い言い直す。

「ああ、ネルがな、喋る様になってからずっとニーネをママと呼んでいて、どこからそんな言葉が出て来たのかって話をしていたんだ」

「ヒィロの村ではお母さんって意味だったのね」

 謎が解けたとミーニャさんが頷いたが、ニーネさんはまだ不思議そう。

「でも何でこの子がそんなこと知ってたのかしら?」

「さぁ、自分に言われても?」

「そりゃそうか」

 シェルは納得したように頷いた。

「ボク、大きくなったからこれからはお母さんって呼ぶ!」

 最後にネルがそう宣言して話は落着し、別の話に移っていった。

「ねぇヒィロ、外で遊ばない?」

「ん、分かった」


 外の川で葉っぱを流してどちらが早いか競争したり、家の畑で木苺を摘んで食べたり、また川に行って石をとぽんと放り込んでみたり、正直に言おう、退屈だ。

「お前、ネルって本当に十三歳?」

「そうだよ?」

 それにしては行動が幼い気がする。

 とぽん

 石を放り投げる、川に沈む、それだけ。

 岸にある石の上に座ってそれを眺めていたが、近くに平らな石を発見。目の前にはゆったりと流れる川。

 小指から中指を握りその上に石、人差し指で石の側面を包み、親指で上を押さえる。石は地面に水平に。なるべく水面に近くなるように腰をかがめて、回転させながら石を投げる!

 ぱしっ、ぱしっ、ぱしっ、とぽん。

 石は三度跳ね、四度目で沈んでいった。

「今の何!?」

「え、水切り」

「もう一回やって!」

 あ、何か嫌な予感。


「もう一回やって!」

「さっきので最後って言ったじゃないか」

「もっかい!最後だから」

「はぁ、ほんとにこれで最後だよ!」


「もう一回やって!」

「ほんとのほんとにこれで最後だからな!」


「ただいま~!」

「ただいま……」

 結局、手ごろなのが無くなるまで投げさせられ、石は八回まで跳ねるようになった。


 それから三日ほどネルの家に泊まらせてもらい、出発の日。

「じゃあ気をつけてね」

「うん!」

「元気でな、またいつでも遊びにおいで」

「わかった。ロシュも元気で」

 見送るのはニーネさんとロシュ。見送られるのはシェルとミーニャさんとネルと自分。

 皆の話を聴いたネルが冒険者になると言い出して、ニーネさんはそれも良いかもね、なんてあっさりと決まった。一応魔法が使えるらしいし、弓も上手いらしいけど、

「ねえヒィロ。見て見てこれ、かっこいいでしょ!?」

 腰に付けた長剣がずるずる引きずられている。

「お前、剣使えないんだよな?なら荷物になるだけじゃないか?」

「でもかっこいいし……」

「むしろ格好悪い」

「……やっぱやめる」

 ネルの頭が心配だ。

 ま、エルフの成人は五十歳らしいし、十三歳といえばこんな感じという話だからきっと大丈夫なのだろう。

「ほら、ちび二人、早く行かないと壁外で野宿だぞ」

「はーい、ほら、ネル、行くよ」

「あ、待って、待って!」

 ニーネさんに手伝ってもらって、結びつけた長剣を解いてもらいようやく出発。

 来た道を逆にたどり里と外をつなぐ門を見張っている二人の横を通る。

 門をくぐったら森の外だった。

「え?」

「はは、びびったろ?行くのは大変だけど帰るのは簡単なんだよ」

 どうやらこういうものらしい。振り返ってみるけどただの森だ。

「じゃぁ、私はここで」

「ああ、またな」

 ミーニャさんはここで自分達と離れて故郷へ向かう。しばらくのんびりしたら神話関連の名所をめぐるらしい。

「ヒィロ」

 呼ばれてそばに行くとぎゅっと抱きしめられた。ちょ、くるし、あ、何かいいにおい。

「あなたが治癒魔法を覚えられなかったのは残念、怪我しないようにね、無理もしちゃだめ」

「うん」

「好き嫌いせずにちゃんと干し果物も食べなさい。キノコもね」

「え~、うん」

 腕の力が増したのでしぶしぶ頷く。

「やられたらやり返すこと、むしろやられる前にやりなさい」

「承知」

 胸の中から開放されて、肩に手を置かれ見つめ合う。

「最後に、私の子どもになって一緒に行かない?」

「ん~、やっぱりやめとく。でも、絶対に会いに行くよ」

「ふふ、楽しみにしてるわ」

 ミーニャさんを見送って、残ったのはシェルと自分だけだ。いや、ネルのことは忘れていないけど。

「ほら、門が閉まる前に次の町に着くぞ!」

「はーい。ほら、ネル」

「うん」

 太陽はもうすぐてっぺんに到着するとこ。自分たちは少し足早に歩き始めた。

主人公はあまり前世とか気にしません

ネルが生まれ変わりっぽいけどまぁいいか

そんな感じ

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