プロローグ
また性懲りも無く別のものを書き始めました。
これが終わったら、おれ、未完成なヤツ完成させるんだ……
ある時代、ある国での出来事。
一人の男性が病気で入院していた。
毎日その男性の妻が見舞いに来ていた。
休日には幼稚園に通っている一人息子も一緒に来ていた。
その近所に、一人の少年がいた。
科学が大好きで両親にも良く解らない物を作ってよく遊んでいた。
ある休日、少年はまた良く解らない物を背負い住んでいたマンションの屋上へ。
空には黄色い雲が立ち込め、動物のうなり声のような音が響いていた。
何が原因だかは分からなかったが、その日、一人の少年が落雷にあって死亡。辺りは一時的な停電に陥り、手術中の男性が一人亡くなった。
その数日後、ある幼稚園の遠足で乗用車が突っ込み園児の一人が死亡、二人が重傷の事故がおこった。
「物騒な世の中だなぁ」
ハローワークの帰り道、僕は新聞を読みながらつぶやいた。
在学中に就職先が見つからず学生時代からのバイトを惰性のように続けていた僕だけど、親からはせっつかれ弟は大学卒業と同時に就職し、このままではいかんとようやく重い腰を上げたのだ。
ブラック企業は嫌だけど選り好みをしている場合では無いと、いくつかの企業に申請を出しておいた。二日後には面接の予定も入った。今読んでいる物も面接に向けた情報収集なのだが……。
「幼稚園児の列に車が突っ込むか、まだ小さかったのにかわいそうにな。こないだの落雷でも一人死んだって聞いたし、良いニュースがほとんど無いなぁ」
車が動き出したことで信号が変わったことに気付いて僕も一緒に歩き出した。
新聞しまうか、信号見過ごすと面倒だし。
折り畳みながら歩く、向こう側から女子高生が二人並んで歩いて来るのが見えた。
新聞を鞄に入れる。
ドゥッ!
叩きつける様な打ち付ける様な音がして、顔を上げると女子高生が一人立っていた。
横に立っていたはずの友人と、それに覆いかぶさるように倒れている女性を見る。
青ざめていくその顔色、叫び声を上げようと口を開くがすぐにそれを真一文字に引き結んだ。
「そこの人!」
睨み付ける様な視線を向けられようやく僕は動き出す。
「は、はい!?」
「携帯持ってるなら急いで救急車呼んで、場所は……」
信号機に目をやる女の子。
「も、もしもし、救急車ですか!?人が倒れてます、二人です、え、場所は?」
「愛知県今川市掛豊町千年南信号交差点」
「愛知県今川市掛豊町千年南信号交差点です、事件?事故?人が急に増えて倒れてて」
そこで携帯がもぎ取られた。
「かわりました、はい、女性が降って来て友人にぶつかりました、はい、返事はありません、移動は、はい、分かりました」
通話が終わったのだろう、畳んだ携帯が差し出される。
「ありがとうございます、助かりました」
その手は細かく震えていた。
道行く人が数人、何事だろうかと足を止める。遠くから救急車のサイレンが聞こえてくる。信号が青に変わり、女の子が一人横断歩道を歩き始めた。その向こうからうるさい位エンジンをふかして向かって来る派手な車。
男女が乗っていたその車は横断中の女の子を跳ね飛ばし、そのままこちらへハンドルを切った。
隣にいる女子高生を庇おうとでもいうのか、とっさに僕は手を伸ばした。
物騒な世の中だな、何が起きるか分かりゃしない。
馬鹿みたいな激痛と、薄れ行く意識の中で、僕はそうつぶやいた。
回収者の独り言
はぁ?
緊急集合ってどういうことだよ!?
今から回収した魂持って帰って手続きしてから行ったんじゃ間に合わないし、このまま行っても袋半分しか空いて無いし……。
何でこんな時に紛争なんて起こるかな?
まぁいいや、この国の人はおとなしいし異世界なら記憶あったって何の役にも立たないだろうしね。
輪廻の穴にざばぁっと、これで良し。
悪く思うなよ、次もなるべくおれが回収できるようにするからさ。
計十人死にましたご確認下さい。
お読み下さりありがとうございました~。