act.01
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「ルキ! 手が空いているようなら、こっちもお願いします!」
暗闇の中、叫び声や銃声などが鳴り響く。
そしてその中で話し声が聞こえた。
声の主は、すらりとした体躯に、ふんわりとしたブロンズヘアー、眼鏡を着用している青年だった。
手には大きく綺麗な杖が握られている。所謂魔法の杖だ。
「おいおい、俺だって手がいっぱいいっぱいなんだ。悪ぃけど1人で何とかしろ!」
先程とは別の声が響いた。少し切れ気味の口調だ。
華麗にひらりひらりと動き回る青年。
さらさらとした漆黒の髪で、顔の右半分が隠れるくらいの前髪、手には2丁の小型銃を持っている。
動き回ると同時に前髪がふわりと上がり、右目を覆っている黒い眼帯が見える。
2人の青年、そして……その周りには浮遊する漆黒の翼を持った無数の―――悪魔。
青年たちは悪魔と戦っていた。
すると突然、眼鏡を掛けた青年がもう1人の青年の傍へと駆け寄る。
「なんだよ! 手なら空いてねぇって云っただろ!」
「いえ、そのですね……」
眼鏡の青年は少し口篭もり、中々云い出そうとしない。
其の間にも眼帯の青年は銃口を悪魔たちに向けて休まず弾丸を撃ち込む。
「あぁ? さっさと用を云えって!」
「えっ、と、その……。防御壁の張り方、忘れちゃいました」
てへっ、という御茶目な声と、信じられないと呆れた声、そして悪魔たちからの総攻撃。
「やべっ、終わった……」
油断していた2人に悪魔たちが放った攻撃が襲う。
全て同時に直撃し、辺りには爆音が伝わる。
周辺を立ち込める砂埃が視界を断ち切った。
青年2人の生死は確認出来ない――。