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おばあちゃまと勇者の指輪

リュシレオン国にて、つい数年前に王の座についた新王…氷の美貌の持ち主である少年シャオンは、苦渋の決断として勇者召喚をおこなった。

勇者はこの世界において、毒にもなれば薬にもなる存在である。

前文明世界を救ったのが勇者なら、滅ぼしたのも勇者であるとこの国では語り継がれている。

召喚を決めた王族は、精霊の加護を失うとも伝えられていた。

それでも…

たった一人の妹を救うためには必要なことだった。


「私の名はシャオンといいます」

彼は『勇者』の前で最大級の礼をとった。魔法陣が召喚した勇者は老婆だった…驚いたことは驚いたが、一方的な都合で呼び出したのは自分なのだ。礼をとるのは当然だと思っていたが、老婆は首を傾げ何かを呟いた。そして気付く、言語が通じないのだと。

「モーリ」

妹の恋人である魔術師の青年を振り返り見ると、いつもは人の良さそうな表情に少し苛立ちを浮かべていた。妹を救う力を持つか不安なのだろう…しかし彼女は確かに召喚された人物なのだ。

彼らには、彼女の慈悲に縋るしか方法がないのだ。

「モーリ、彼女に私達の言葉を届けることは出来ないだろうか?」

遠い土地の人々と話せるようになる魔術があったはず彼がと促がすと、モーリははっとしたように懐から指輪を差し出した。

「どうやら召喚した魔術師は陣の中に入れないようです。王よ、この指輪を彼女に渡して下さい。そして自らつけるように促がして下さい」

その言葉に騎士が走り戻って、指輪を受けとって帰り、王へと差し出した。

魔法の品なのだろうそれを、シュオンは彼女の手のひらに置いた。

「どうぞこれをつけて下さい。言葉が通じるようになるはずです」

彼女はしばらく手のひらの指輪を眺め、おもむろにそれを床へと叩きつけたのだった。




装備品『勇者の指輪』

勇者・深町実森製作

通訳の効果を持つ勇者作成物

『隷属の装飾』

現在この指輪は呪われています。

呪いの効果

主人への隷属

魔力対抗能力が無ければ、自ら嵌めた

人間を術者の隷属化に置きます。


『神の目』は装備品の詳細情報も見れるらしい。

あらあら、通訳の効果は嬉しいけど、呪われるのは嫌だわ…と、由加里はそれを見る。

すると、プレートの文字が光とともに書き変わる。


『隷属の装飾』

呪いは装飾の破壊を意識しながら

衝撃を与えることで消し去ることが可能です。


あらあら簡単なのねと、早速由加里はそれを床に叩きつけた。

王は驚いたのかポカンと口を開け、魔術師は顔色を悪くする。

彼女はともかく指輪を拾い上げ、ぱらぱらと剥がれ落ちた茨の装飾を払いのけ、呪いが解けていることを確認してそれを指にはめた。

「こんにちは、これで言葉が通じるのかしら?」

「え、あ…」

まだ茫然としている一同に、由加里はにこにこと微笑む。

「小島由加里です。はじめまして、よろしくね?」

「あ、私の名はシャオンです。えっと、この国の王で、あなたを召喚させた者です」

動揺していたのか、歳相応な若さを感じさせるぎこちない口調で王は応え、俯いた。

「どんな怒りも咎も私にお向け下さい、私はあなたのお力を借りたい。妹の呪いを解きたいのです」

王は由加里の手を、再び額に当てた。

「どうか、お願いします。勇者の血が必要なのです」



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