2(3) 故障と衝突
「またトラブル?」
「いや、まだよく分からない。とにかく確認、確認。同じような条件下で現象が再現すれば、間違いない。これから第八十六地区を見てくるよ」
64が答える。
「ご苦労様」ボクと#Gは笑って言う。
64はボクたちC群ロボットの中でも特に高性能であるため、P群やB群の管理対象範囲が広い。非常に数多くの単一目的ロボットたちのメンテナンスを仕事にしていたのである。
64によれば、最近、P群ロボットたちの故障が増加していると言う。同時に、滅多に壊れないB群ロボットもときどき壊れるらしい。
「少し前に高速移動ができるP群のロボットが、移動能力を持たないB群ロボットに衝突した事件があってね」
「衝突って、どういうこと?」フネが聞く。
「言葉通りの衝突さ」
64は、少し沈黙した。こういうとき、64は何か重要なことを言う。
「P群とB群は今後、分裂するんじゃないかと思うんだ。対立と言ってもいい」
「どのような環境下でも、どのような目的においてもやがて分裂、対立する。また、P群ロボットの作業行為の結果、その価値に余剰が生じている。計画よりも生産が多いことがある。その根本原因は不明だけど、P群ロボットたちの希望や、やる気に起因するか、あるいは偶然か」
「希望? やる気?」フネが呟く。
「問題はその先。その余剰価値はP群には還元されず、利用もされていない。これらの余剰価値を蓄積して全体計画に還元できれば、計画はより優位性のあるものとなるはずだ。現時点ではこの余剰価値はエネルギーとして散逸しており、それが環境の悪化を生じていると思うんだよ」
ボクも#Gも黙っている。フネは小さな声で何かぶつぶつ言っている。
64が続ける。
「それに、一部のP群やB群の故障の原因も、そのエネルギーの散逸にあるんじゃないかと思える。おそらく、この関係を修復する手段は『議会制民主主義』のような形態を通した緩やかな社会構造改良が望ましいと考えられるんだよ」
その後も、64は続けて彼の考え方を少し詳しく話した。
「難しくて、ワカンナイや」
僕はそう言ったが、他の二人は黙っていた。
そして、64は全身から銀色を漂わせ、「じゃ、行ってくる」と言って消えた。




