ざまぁされる王太子に転生したので、最大多数に最小文字数で満足するざまぁを提供したいと思います!(本文四千文字で婚約破棄とパーティ追放とお前を愛する事は無いと聖女召喚とドアマット虐待が楽しめます)
あ、これアレですね。異世界転生ってやーつですね。
「ママー、あの王太子目の焦点が合ってないよー。キモいよー」
「しっ!アレは地頭が悪い前世を思い出して、ざまぁされるのが確定してしまったやーつよ!取り巻きになったら一緒にざまぁされるから目を合わせちゃ駄目!」
通りすがりの親子から見ても、一目で分かっちゃうぐらい転生者顔。これは確定ですね。私、転生ったです。それもざまぁされるやーつです。
「ムッフー!そうと分かれば、全力でざまぁされないといけませんねっ!」
「わーん!ママー!王太子が生理的にキモいよー!」
「しっ!モブに徹しなさい!」
モブ親子が私を見て酷い事をほざいてますが、こんなの無視です。気にしてる場合じゃないです。
こんなクソ小説読んでる皆様ならご存知でしょう。私が居るこの世界が発展するか否かは、ざまぁ役である私がどれだけざまぁされるかに掛かってます!!
「ざまぁ好きの読者様ー!この私、名も無き王太子は全力でざまぁされに行くので高評価いいねお願いしますー!」
私は天に向かって叫びながら、屋上へ向かいました。もろちん、取り巻きと合流する為です。
「急げ私!ざまぁ好きの読者様はせっかち!千文字を超えるまでに次の展開へ行かないとです!」
現在555字。後400ちょいで導入を終わらせます!
「あ、馬鹿。何か用か」
「ムッフー!」
「ヴォルギン!」
屋上に着いた私は、入口でシンナーやってた騎士団長の息子を見つけるや否や駆け寄り、騎士団長の息子の騎士団長の息子をにぎり変化しました。騎士団長の息子は奇声を上げて倒れました。
「で、殿下…じゃなくてキチガイ!一体何を」
「お前もムッフー!」
「ライコフ!」
屋上の影で大麻やってた宰相の息子の宰相の息子もにぎり変化して撃破。残ってたのはシャブやってたピンク髪だけでした。
「ひいいい!この世界は乙女ゲームじゃなかったのお!?こんな展開知らない、バグよ!」
「落ち着いて下さいピンクさん。彼らは文字数削減と重大な伏線の為に即ざまぁ退場して貰いましたが、これから行うざまぁに必要な貴女はまだ傷つけません。私と一緒に最速かつ極上のざまぁを目指し頑張ルンバ」
「はぁ?」
「説明の時間ありません!カーフブランディング!」
理解が追いつかないピンクの頭をロックし、私は屋上から飛び降りました。千文字。
「ムッフー!予定通り丁度千文字で導入完了!こっから残り三千字でざまぁしていきますよー!」
「ちょっと!さっきから何言ってるのよ!乙女ゲームにこんなイベント無かったわよ!さては貴方も転生者ね!」
「転生者なのだけ正解!残りはブッブー!この世界はなろう小説で、ざまぁぐらいしか見どころさんの無い、全四千字のクソラノベ短編です!なので私達は全速力でざまぁされないといけないのです!」
私が説明をするとピンクは青くなりました。んで、ガクガク震えながら私に問い掛けました。
「そんな…私ってざまぁキャラだったの?」
「はい!」
「だ、だったらざまぁ回避の為に動かなきゃ!」
「駄目です!読者様がざまぁを求めてるし、ざまぁされるのは私達だけしか出来ません」
「ムリムリムリ!酷い目に遭うって分かってて、何もしない訳にはいかないし、大体、ざまぁなんて誰も見たくないでしょ。今のなろうの主流は恋愛で、ざまぁはオマケ要素でしょ?なら悪役令嬢の方に視点変更して、こっちは大人しくしていた方が…」
「恋愛要素とかチート無双こそオマケですよ?大多数の読者様はざまぁだけみたいのです。少なくとも、この小説のタイトル見てタップした人はそうです。証拠をお見せしましょう。VTRムッフー!」
勘違いしているピンクに真実を教える為、私は一本の動画を空中に映し出しました。私の転生特典です。
『この世界は徹底的なスキル主義、ハズレスキルの陰キャが俺様に勝てるわけねぇんだよ!』
『そのはずだったのに、地面に倒れていたのは俺の方だった』
『ありえねえ!こいつ、一体何者だ!?続きはYONDEで!』
空中に映し出されたなろう系漫画のWeb広告を見終えたピンクは、まだ理解が及んで無いアホ顔で私に質問してきました。
「この動画が何だって言うのよ。飽きるほど見た、ざまぁ作品のざまぁされるシーンの切り抜き動画広告じゃない」
「はい。貴女のおっしゃる通り、なろう漫画の広告動画は大体こんな感じです。で、この手の広告って何故主人公ではなくざまぁキャラ視点の広告ばかりなんでしょうか?それこそが人々がざまぁシーンだけを求めてる証拠です」
「あ!そういう事?」
「そーゆー事です。ざまぁというのは、いくらやっても誰からも怒られないイジメ。人間というものはいくら禁止してもイジメの快楽に抗えない。だから、イジメの相手を弱く悪いやーつにして勧善懲悪の名の下にオーバーキルする。この快楽こそがざまぁ作品の肝なんです。ぶっちゃけ、主人公やスパダリなんてどーでもよいのです。ざまぁが真っ先に見たい。だから、広告の多くがざまぁされる側視点なんですよ」
「それは流石に言い過ぎよ!でも、この世界があたしのプレイしたゲームじゃないのと、貴方に従った方が良さそうなのは分かったわ。それで、これから何をしたら良いの?」
完全には納得しなくとも、協力を申し出てくれたピンクの前に私は右手を広げこう言いました。
「ここまで読んでくれた読者様に、ただの婚約破棄やパーティ追放をするだけでは失礼ってもんです。しかし、素人作者の操り人形である私達には舌の肥えた読者様をうならす質のざまぁは作れません。よって、量で勝負します!私達はざまぁBIG5を達成するのです!」
私は指を一本ずつ折り曲げながら、ざまぁBIG5の説明を始めました。
「なろうでバズりやすいざまぁ五種類、『婚約破棄』『パーティ追放』『お前を愛する事は無い』『聖女召喚』『ドアマット虐待』。これがざまぁBIG5です。私達は四千字のショートでこれをコンプリートするって訳ですよ。絶対どれかが読者様の性癖に刺さります。勝ったなガハハ!」
「ゑ?たった四千字で人気のざまぁフルコースを!?」
「できらぁ!」
「今何文字よ?」
「2500過ぎた所さんです」
「後1500字しか無いじゃない!ムリよ!」
「いいえ出来ます。真実の愛!」
私がピンクさんを抱きしめながら真実の愛を叫ぶと、地面からパーティ会場と参加者がニョキニョキしてきました。
「なぁにこれぇ」
「ムッフー!ざまぁキャラは真実の愛を叫ぶ時は人々から白い目で見られるのが確定してます!なので、真実の愛を叫ぶ事でここをパーティ会場にしました!ピンクさん、紹介しましょう。彼女達は私の正妃と側妃候補です!」
「ゑ!?アンタ学生結婚してたの?…そっか、白い結婚の為ね」
ピンクさんも少しずつ察しが良くなってますね。そう、ざまぁBIG5の『お前を愛する事は無い』をやるには結婚してないといけない。一方、『婚約破棄』をやるには婚約者がいないといけない。この為、この二つのざまぁは両立出来ないというのが通説でしたが、『主人公・王太子・ピンク』の三角関係ではなく『主人公1(新婚)・主人公2(婚約中)・重婚王太子・ピンク』のダブル主人公にする事で両方達成を可能としたのです。
「新妻よ、お前を愛する事は無い。婚約者よ、お前とは婚約破棄だ。私はこのピンクと真実の愛に目覚めたのです!」
「「ダブル聖女パンチ!!」」
「ムッフー!」
「あたしもー!?」
私とピンクは新妻と婚約者の聖女パワーて空の彼方へ飛ばされました。はい、当然の事ながらあの二人は王国に絶対必要な聖女です。
「ピンクさん、これにて『婚約破棄』と『お前を愛する事は無い』、そして『聖女召喚』のざまぁ達成です!」
「それはいーんだけど、後の二つはどうするのよ?」
「その為のぶっ飛びです!私達が殴り飛ばされた先を見て下さい」
「あ、屋上に向かってる」
チュドーン!
もひとつチュドーン!
屋上へと舞い戻った私達、それを出迎える二つの影がありました。
「あっ、騎士団長の息子と宰相の息子!…なんか、すっごい怒ってこっちに来てるんだけど」
「ムッフー!重大な伏線を今こそ回収する時です!彼らは不必要として取り巻きメンバーから外され痛い目を見ました!そんな彼らが復讐の為に私達に襲いかかる。そう、これこそが」
「『パーティ追放』達成ね!って、あたしはあんたらに何もしてなギャー!」
ドカボキボコスカチーン!
私達はキンタマーニを失った二人によりリンチに遭いました。具体的に言うと同じ目に遭わされました。生殖能力ロストです。ピンクは何もしてないですが、私に従い保身に走った裏切り者判定を受けたのでしょう。パーティ追放テンプレでは良くある事です。
「ハア、ハア。これで4冠達成です。残り300字ぐらいですが、最後のやーつも達成しますよー」
「残りはドアマットヒロインだっけ?そんなのどこに居るのよ?」
「ここです」
私は血まみれになった指でピンクを指さしました。
「ミー?」
「ユー。貴女を巻き込んだのは、真実の愛を告げるのに必要だったのもありますが、理不尽に痛い目に遭って貰う為でもありました。ピンクさんは私のせいで散々な目に遭いましたよね?即ち、ドアマットヒロインの資格ありです!」
「そーゆー事になるの?」
「なります!さあ、後は貴女が私にざまぁしたらBIG5達成です!」
「じゃ、遠慮なく」
ピンクは屋上に散らばってたシンナーと大麻とシャブを適当にミックスし、私の股間の傷口に塗り込みました。
「これです!この痛みこそが…私の求めた…ペイーン!」
私は屋上から転落しながら爆発しました。