第6話『鉄騎と革新』
尾張・小牧原。蒼真は、織田軍の騎馬隊の演習を見ながら眉をひそめた。
「速さも突撃力もあるけど、弓や火縄銃に対しては無防備すぎる……」
騎馬兵は確かに戦国の主力だ。しかし、敵に砲火や鉄砲を撃たれれば、あっという間に撃ち落とされる。しかも、馬の補給や訓練には莫大な時間と労力がかかる。
「ならば、補う手段を作るだけだ――“鉄の馬”で」
蒼真は、鉄板と木材を組み合わせた簡易装甲台車を製作開始。小型ボイラーを台車の後部に搭載し、ピストン機構で前輪を駆動させる。操縦は二人一組、うち一人が銃座を回転させて射撃を担当。
名付けて――蒼真式・装輪装甲車 改壱型。
完成後、織田軍の騎馬と並走させた。鉄の車輪が泥を巻き上げ、火縄銃を連続して撃ち出す姿に、兵たちは言葉を失った。
「馬と並ぶ、いや、それ以上の力……」
さらに蒼真は、雷玉隊を創設。鍛冶職人たちと協力して生産した蒼真式雷玉(火薬入りの小型手榴弾)を装備した部隊で、鉄騎に随行し接近戦で投擲攻撃を行う。雷玉には火薬量を調整した地雷型も開発され、地面に埋めて敵騎を吹き飛ばす罠としても活用された。
この“雷玉地雷”による待ち伏せ戦術で、織田軍は今川方の小規模先遣隊を壊滅させた。
「馬すら踏み込めぬ“雷の野原”……これが蒼真の兵法か」
だが、蒼真の革新はすべてを喜ばせたわけではなかった。とくに旧来の武将たちは強く反発する。
「鉄で身を守るとは卑怯」「敵に恐れを植えつけるとは外道」
前線で蒼真の台車を間近に見た古参の将・柴田勝家は、舌打ちを漏らした。
「こんな化け物を戦に出すな。戦は武士の魂のぶつかり合いであらねばならん!」
しかし、信長は一蹴した。
「魂? よかろう。だが魂だけでは天下は取れぬ」
信長は蒼真の肩を叩き、兵たちの前で高らかに言う。
「伊吹蒼真こそ、我が織田軍の鍛冶神にして技の雷神。こやつの鉄と火薬が、未来の戦を切り拓く!」
その言葉に、蒼真は肩の力を抜いた。
「俺は戦をしたいんじゃない。勝って終わらせたいんだ。だから、作る。止まらずに」
その夜、信長の陣営では“鉄騎部隊”と“雷玉隊”の正式配備が決定された。
そして、前線の補給所では「鉄騎の設計図」や「雷玉の製造手順」が複写され、各地へと送られていった。
「武士の時代に、技術で抗う。……これが、俺の合戦だ」
鉄と蒸気と火薬で構成された異形の戦術。それは、やがて“雷神の戦法”として敵国にも広まっていく。
だが蒼真は、まだ一つ、超えねばならない壁を見ていた。
「城……か。平地では勝てても、山の上には届かない。なら、蒸気で叩き割ってやる」
彼の頭の中には、すでに次の発明の構想が描かれていた。




