第13話『雷鳴、城壁を砕く』―補足描写あり―
かつて、南蛮の技師から教わった帆走術と、蒼真が編み出した蒸気制御技術が結びついた日。彼の手によって誕生した「反転帆付き蒸気小舟」は、織田軍の補給線を劇的に加速させた。
しかし、それはあくまで“運ぶための舟”でしかなかった。
そして今、城を落とす“撃つための舟”が必要だった。
──「雷鳴艦」──。
それは、かつての蒸気小舟を骨格に持ちつつ、軍事用に再設計された鉄と蒸気の怪物であった。船体の側面には、雷玉を発射する蒸気砲を左右に2門ずつ、甲板には射手の陣取る火縄銃陣地。外装には厚手の鋼板と焼き固めた木を幾重にも張り、簡易ながら敵の矢弾を弾き返す防御力を備えていた。
「補給船を、ここまで化けさせるとは……」
信長が感嘆の声を漏らす。
蒼真は平然と応じる。
「運ぶ道具も、撃つ道具も、本質は同じです。“どこへ、何を、どう届けるか”さえ制御できればいい」
雷鳴艦の狙いは、川沿いに築かれた“白岩砦”。
天然の岩壁を背にした難攻不落の要塞だったが、その防衛は主に正面と山腹に集中していた。まさか川から、鉄の艦が雷を吐いて迫ってくるなど、誰が想像しただろうか。
――ドンッ!
一発目の雷玉が砦の前門を吹き飛ばす。
――ドゴォンッ!
二発目は岩壁を穿ち、上部の見張り台を薙ぎ倒す。
続けざまに雷玉を発射するたび、水面には白く泡立つ蒸気が立ちのぼり、まるで水神が怒っているようだった。
砦内は混乱に包まれた。
「な、何だあれは!? 船か!? 城か!? 雷神かッ!?」
蒼真の雷鳴艦は、左右からの射撃で砦の兵を釘付けにし、砦の裏手から強襲部隊が駆け上がる時間を稼ぐ。上陸後の兵たちも、携行式の雷玉投擲器で制圧を行い、ついに白岩砦は陥落した。
「戦に必要なのは、数でも剣でもない。運ぶ力、繋ぐ知恵、そして撃てる手段だ」
かつて補給のために生まれた小舟が、
いまや雷をもって戦局を制す。
この報に、他国の大名たちは蒼真を“蒸気の鬼才”と呼び、そして恐れ始める。




