ミッション
私達は、遥々、数百光年を旅して、この美しい惑星に辿り着いた。
私達に課せられたミッションは、生命体のサンプルを入手して、持ち帰ること。危険なことは、重々承知している。それでもやらなければならないのだ。
私達が辿り着いたこの星には、様々な生物がいるようだ。しかも、巨大な生物が多い。植物も動物も、何もかもが巨大だ。だから、ミッションの遂行には慎重さが不可欠なのだ。
「隊長。あそこに四足歩行の獣がいます。サンプル入手しますか?」
「よし、サンプル入手作業にかかれ。」
「はい!」
私達は手際良く、作業にかかる。
獣は寝ているようだ。体が上下に動いている。
「後ろ足を狙いましょう。」
「よし。右方向に前進。足の部分を狙え。」
船の先頭には、サンプル入手用の硬質針が付いている。針と言ってもかなり大きい。針先は、対象物に侵入すると開いて固定されるような作りになっている。
「対象物に接近。針挿入準備完了。」
「前進。針を挿入せよ。」
「前進。針を挿入します。」
ガタガタ、、、と機体が揺れる。
針の挿入は上手くいった。
「針先を開け。サンプル吸入開始!」
「サンプル吸入開始します!」
「第一タンクに注入。40、60、80、100%」
「吸入停止。針を抜け。」
作業はスムーズだ、獣もまだ寝ている。
「消毒液射出。」
最後に、針を刺した傷口に消毒液を噴射する。傷口を修復する効果もあり、対象物の保護の為にも、重要だ。
私たちの目的は、あくまで調査。この星の生態系を壊すようなことはしてはならない。
「全速、後退。」
「対象生命体から離れます。」
一先ず、この星での最初のミッションはクリアできた。
巨大な木が鬱蒼と繁った森には、他の生命体もいるはずだ。
「上昇して森の上に出るぞ。」
「了解。上昇します。」
かなり上空まで来たようだ。森の向こうまで見通すことが出来る。
「隊長。あそこに石の建造物のようなものが見えます。」
「よし、調査に向かおう。」
「全速前進!」
無数の巨大な石の山が近づいてきた。
白や灰色、不思議な色の石もある。しかも正確な立方体だ。
「これは・・・」
「町のようです!複数の生命体反応あり。この星には文明があるようです!」
よく見ると、巨大な人間が歩いているのが見えた。
「人間がいます!巨大な・・・巨人?」
私は、驚きで我を忘れそうになるのを堪えながらミッションのことを考えていた。
「巨人のサンプルを入手するぞ。慎重に近づくんだ。」
「了解!」
私は、町のはずれにある草原にいる小型の巨人に目を付けた。
「あの小型の巨人が目標だ。」
衣服のようなものを身に着けているが、肌が露出している部分が多い。
ねらい目は、腕だ。
「左腕を狙え。慎重にな。」
「了解。」
機体を慎重に小型巨人に近づける。
「左腕に接近。着地します。」
「硬質針挿入準備。」
「挿入準備!」
「着地しました。」
「機体を固定しろ。」
「機体固定完了。針、挿入します!」
不安定な小型巨人の腕に機体を固定できたが、ここからが本番だ。
硬質針をゆっくりと挿入して固定する。
「針、挿入完了。先端部固定。サンプル吸入開始します。」
こんなチャンスは滅多にない。我が星の科学の発展にも寄与するはずだ。
この巨人のサンプルは、絶対に持ち帰る。。。
「第二タンク解放。サンプル注入開始。20,30,40,・・・」
突然、機体がガタガタと揺れ、大きく動いた。
小型巨人が腕を動かしたのだ。
「うわー!」
私たちは必死にしがみつく。
何とか機体は落ち着いたようだ。
「第二タンク、サンプル量、60、70、80・・・」
もう少しだ。
「90、100!吸入停止!消毒液噴射!」
「よし、離脱準備だ。」
離脱しようとした、その時だった。
急に周りが暗くなった。
「何だ・・・!」
「周囲を壁に囲まれています!脱出不能!」
「何とか脱出口を探すんだ!」
「だめです!周囲の壁が狭まってきます!」
もう、これまでか・・・
私は観念した。
思えば、長い旅だった。
せめて、後に続く者たちの礎になりたいものだ。
みんな、ありがとう。。。
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プチッ。
あ、蚊に刺されちゃった。
ママに痒み止め塗ってもらわなくちゃ。