第4話君の知らない物語【裏】
こんなバカみたいな会話が楽しいと思ったのはいつぶりだろうか
俺の母ラドュガは熊であるのにも関わらず圧倒的な頭脳と巧みな言語力によって人間界においても名の知れた存在だった。
彼女は人間の遥か先を行く技術力を有しており
それがどんなに称賛に値するものであっても人間というのはそれに値する肩書き、見た目、人種でないとそれを脅威と見なし攻撃する。
ラドュガはマリヤを手元には置けないと判断したとき
遥か海の先へとマリヤを潜水艦で逃がし最後の子供である俺を完成させた
ラドュガは研究所と子供を守るため町外れに偽物の研究所をつくった
わざと自分ごと見つかることで本物の研究所と最後の子供である俺の存在を隠すためだ
そのせいで彼女は死んだ
それは覚悟の上だったのだろう
しかし母親と言うものはつくづくバカである
熊だからバカなのか?
女だから感情的でバカなのか?
凡人の俺にはわからないだけか?
たかが機械に……
中身なんてないじゃないか
少し前まで俺達はスクラップとたんぱく質だったじゃないか
実際には存在しない愛着や大切さなんかに囚われて自分自身が死んでしまうなんて本当にバカだ
母親なんて本当にバカだ!!
そんなことを思った自分の目には涙が溢れていた
本心だが本心じゃない、怒っているが悲しい
合理的で現実的な判断だって分かっているけれど
なげやりでヒーロー気質だって言ってやりたい。
言ってやりたいけれど………言えない
あんな悲しそうな顔のラドュガを見せたら彼女はどんなに悲しむのだろう
マリヤ
君には知られたくない物語
この辛さはマリヤと喋っていた楽しい時ほど痛感した
遊園地なんかで友達といるときに普段の寂しさを突きつけられ
ちゃんと楽しめないときのような息苦しさがあった
次に進まなければ俺はマリヤにラドュガを殺した相手の名前を伝える
なんやかんやあって車の移動で発電所から憲兵学校に着いた
自分の寮部屋に入り落ち着いたころ
クロウからあることを告げられた
それは私の母ラドュガを殺した相手の名前だ
"グリフォンドル・スターライト"
彼はラドュガを恐れ、その副産物であるアンドロイドや半人を嫌っていたという
彼のせいでラドュガの残した研究成果は発電所地下のもの
以外はほとんどロストテクノロジーとなっている
それもグリフォンドル・スターライトの伝説として
ラドュガの素性を知らぬものはラドュガに対して人間を
陥れようと目論んでいた悪魔として語られている
それを倒したスターライトは民衆の支持を得て国のトップへと成り上がった
そんなやつを許してはおけない
ゲノム編集され人間とカラスのハーフであり鉄の翼を持つ
サイボーグクロウ
そしてラドュガの最初の子供である私でスターライトを殺す
「そういえばマリヤさんへお母様からのプレゼントパート2があります」
彼は翼を広げると自身を隠した
そして瞬く間に大きな武器をマジックのように出現させた
「じゃじゃーん」
彼はその武器を私に見せびらかす
エンジンがついた大きな斧
先端には銃口まである
手元には帯のようにされた弾丸まで
クロウはどこからともなく説明書を取りだした
「えっ~と説明書によりますとロケットブーストで簡単に爆発力を得る斧。30mまで殺傷性の出る連射式ショットガン。斧の刃には黒曜石が使われているそうです」
マリヤの頭には「これ良くない?!」と言っている楽しそうな母親の顔が浮かんだ
「いかにもロマンを求めるお母さんが好きそうな武器だね」
私はお母さんを思いだしなんだか心が暖まった
「では試運転しましょう」
クロウは私を足で掴み大きな黒い翼を広げて
窓から飛び降りた
「うぁぁぁぁあ!!!」
風をものすごい威力で感じる
しかし少ししてみると風が気持ちよくなった
目を開けて周りを確認してみると私は宙に浮いており
町の照明のおかげで上を見ても下を見ても夜空のようだった
「100万ドルの夜景だ」
私は感動のあまりこの言葉をこぼした
すると私をからかうように彼は言う
「知っていますか?"100万ドルの夜景"の100万ドルって電気代がだいたいそのくらいって言う意味なんですよ風情がない人ですねあなたは」
マリヤは少しイラっとしツンツンと答えた
「じゃあ私は人じゃなくてロボットだから関係ないね
宇宙のように綺麗っていえば良い?」
「それは夜景に失礼ですよ」
「何でさ?」
「馬の毛の種類の鹿毛って鹿の毛みたいだから鹿毛ですよね。でも馬からしてみれば馬の毛は馬毛なわけすよ。ここで鹿毛の馬に鹿毛が綺麗と言ってみてください。これに当てはめると●●みたいで綺麗って●●に似てるから綺麗つまり●●以下ってことになりません?」
私はその予想外の内容にイライラが吹き飛んだ
というか話の内容を理解するために忘れた
「あーそういう考え方もあるか」
しかしながらそのひねくれた解釈に納得し感心してしまう自分がいた
「ということで馬毛の敵打ちにいきましょう」
彼はいきなり私を空から突き落とし
「ロケットブースト使ってくださいよー」
とそれだけ言って瞬く間に遠くへ行ってしまった
いや私が落ちているだけだが
くぁwせdrftgyふじこlp
自由落下の威力のせいでボタンをうまく押せない
焦りながらもなんとかロケットブーストを起動した
!!ドッガーン!!
という爆音を立てながらも怪我なく着地できた
しかしロケットブーストの衝撃で地面はえぐれ下にあった建物は跡形もなくなった
足元には電線や金属片なんかが瓦礫の山と化したものが
「よしやばいので撤収しましょう」
クロウは冷や汗を流しながらもニヤリと笑い
私を足で掴んでさっきよりも速いスピードで憲兵学校へ戻った
恐らくネコなバス並みの速さだった
「くぁwせdrftgyふじこlp」
そして私は気絶した