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お代理さまと三人神女(おだいりさまとさんにんかんじょ)  作者: つっちぃ2号
第1部 ヤバい!秘密がいっぱい!?おひな様部屋
6/6

第1部① おひな様部屋集結!

1週間お待たせしました。

今日から本編スタートです。

いちおう舞台は、現代世界とよく似通った別世界の話…という設定で、よろしくお願いします!

(でも異世界モノでもないですが…)

その日、神戸薫(かんべかおる)は、三友電機四人之町(よにんのまち)別館、通称『死人の待ち別館』の入り口に立った。

今日から出向で配属される、新規事業開発室、通称『おひな様部屋』に向かうためだ。


三友社員たちからの評判は最悪の部署だと、所属機関(航空防衛隊)からは聞いていたが、それは”あのお方”がわざと流ししているのか、足を引っ張りたい役員連中たちの好きにさせているのかの、どちらかだろう。


だけど薫にとっては、そんなことはどうでもよい、との認識だった。

この部屋の"本来の目的"を遂行するには、島流し部署と思われている方が何かと都合が良いからだ。

エレベータが最上階に停まると、エレベータの前には今後、同僚となる神崎未歩が出迎えた。

「わざわざのお出迎え、ありがとう未歩!」

「いえ、薫先輩こそ、本日からよろしくお願いいたします」

ペコリと頭を下げる未歩。

「…ここでは、あまり”先輩”って呼ばないこと。他の人に聞かれたら厄介よ」

「大丈夫ですよ!このフロアは"我々"の完全管理下にありますから…盗聴器すら機能していませんよ」

よく考えたら常務派とやらはスパイスら送り込んで来るのだから、当然、盗聴器くらいは仕掛けているのだろうが、それを外さずに機能しないようにしているところは、さすがだ。


「で、あのスパイちゃんは、どうなったの?」

川神…亜里沙とか言ったか、あの異能者は…

「ああ、智仁さまのお計らいで、國學館大学の神道学部に…」

「なるほど…そこで自分の"力"と向き合わせる訳か…でも彼女は元々、仏教徒ではなかったのか?」

確か浄土神教とか言っていたよな、と薫は思い出した。


「あの宗教自体が一向宗の流れを汲むと見せかけた神道ような曖昧な存在でしたから…まあ、この国では神道と仏教の境目が相変わらず曖昧ですがね…っていうよりは、仏教がこの国に入って来た時点で変容してしまったため…ともいいますよね」

この国は伝統を大切にするが、海外から入って来るものは容赦なくこの国の都合に合わせて改変するといった恐るべき能力を発揮する民族なのだと未歩は自慢げに話したいかのようだった。


「まあ、早い話がカレーライスやラーメンみたいなものか…」

「薫先輩の手に係ると、相変わらず食べ物の話題にすり替えられますよね…でも、この件は引き続き調査したいという考えもあったので、目の行き届くところに監視付きで置いておきたい…というのが智仁さまのお考えの様で…」

「未歩もすっかり智仁さまの腹心気取りだな…」

「そんな…私は陽菜子さんの腹心のつもりなのですが…」

「それは、私も同じだよ…表向きの裏事情としてはね」

薫はにこやかにそう応えると新規事業開発室の扉を開けた。


「三友電機へようこそ、神戸二尉!」

「よろしくお願いします!」

出迎えた陽菜子にそう言われ、思わず敬礼で返してしまう薫だったが、慌ててお辞儀に変えた。

「まあ、そう簡単に日頃のクセは抜けないわよね」

「ええ、今まで防衛隊以外で勤務したことが無いものですから…」

「でも、あなた…自衛大学校出じゃないわよね?」

「はい、一般の私立大学です」

「一般の…?まあ、そういうことにしておきましょうか?」

含み笑いをする陽菜子。

薫と未歩、それに智仁が全員同じ大学の同じサークルであったことを知る人は、恐らくこの部屋の人間ですら、あまり知られていないだろう。

まあ、その方がいろいろと都合が良いのかも知れないのだが…


「では早速、ミーティングに参加して貰えるかしら?」

陽菜子に促されて会議室に行くと、新規事業開発室のメンバー全員が揃っていた。

「今日からお世話になります。国防省から交流派遣で参りました、航空防衛隊の神戸薫です」

深々とお辞儀をすると、皆、拍手で出迎えた。

先週挨拶に来た際に、あの”儀式”に同席したため、既に知った顔ばかりではあったためか。

「室長の林です。それではあらためてメンバーの紹介をしますね」

そうだった、いちおう、このおひな様部屋の責任者は陽菜子ではなく、林であったのだ…今更ながらに自覚した薫であった。



同じ頃、三友電機本社ビル最上階にある常務取締役室でも、ある会合が持たれていた。

常務派と言われている並木常務に、スパイに仕立てた亜里沙を送り込んだ高橋取締役他数名が常務取締役デスクの脇にある応接スペースで密談をしている。

皆、いちおうに苦虫を嚙み潰したような顔をしている。


「で、高橋君の姪御さん?だっけ??彼女から最期に来た情報は、確かだったようだね」

並木が、神戸薫の顔写真付き履歴書をテーブルに放り投げた。

「いえいえ、姪ではなくハトコの娘を引き取っただけでして…元々、身体の弱い体質で他の引き取りても無かったので、いいように使わせて貰いましたよ…これで元がとれたのかな、と」


「君も仏の様な顔つきで相変わらずの極悪人だねぇ…それにしても、ドローン兵器の開発を新規事業の軸にするとは」

「全くです、常務…既に陸上防衛隊で海外調達することが決まったというのに…ウチの極秘ライセンス生産計画に影響が出たら、どう責任を取るつもりなんだ、おひな様連中は…」

あらためて、薫の履歴書を手に取って見直す並木だったが、

「まあ、わざわざ苦労して航空防衛隊から、大した人脈もない現場の尉官クラスを呼ぶというセンスのなさだ…せいぜいこちらのカモフラージュ代わりに好きにさせればいいさ…どうせ何もできまい」

「所詮は、おひな様のママゴト部屋ですからね」

「そういうことだ…ハハハハハ」



この常務取締役室での会話は、そのまま新規事業開発室の会議室に密かに中継されていた。

一同で、並木常務の高笑いの映像を呆れて眺めている。

「まあ、こんな感じで、予定通り常務派は我々の新規事業チームで今日から立ち上がるドローン兵器開発プロジェクトという餌に喰い付いたので、しばらくは安心ね」

「え…っと、でも、これって盗撮ですよね??」

「大丈夫!向こうも同じことやっているから…でも見ているものは、違うんだけどね…」

心配する薫に微笑んで応える陽菜子。


常務取締役室では、新規事業開発室の会議室の様子が同じように流れているハズなのだが、なぜか昼間から宴会を始めている様子が流れている。

室長の林が頭にネクタイを巻いて、薫にお酌して盛り上がっている映像を冷ややかに眺める並木常務がいる。

「見ろ、奴らは昼間から宴会とは、いいご身分だな…」

「全く…けしからんですな」

「でも、楽しそうだな…我々も、少し早めのランチにいつものイタリアンでも行くか?」

「いいですねぇ、もちろん極上のワイン付きで…ですよね常務?」

「ハハハハハ」



常務取締役室を後にする並木らの姿を映し出す映像を冷ややかに眺める陽菜子ら。

「ね、よく出来ているでしょ?三友先端研究所のAI同時生成映像技術は??」

「はぁ…」

「ここに仕掛けられた盗聴器や盗撮カメラの映像が毎日のように、飲み会や雑談しかしていない内容に自動で置き換えて流しているんですよ!」

得意げに研究員だった富田林が解説してくれる。


「でもこの映像を使って、常務派に新規事業開発室に脅しをかけたり、潰されたりしないんですか??」

薫が不安げに陽菜子に聞いてみる。

「大丈夫、盗撮や盗聴は証拠能力ないから…それに、もし本気で私に牙を剥いてきたら、あんな使えない番頭どもは、まとめて子会社に放り出すだけよ…」

所詮、サラリーマン役員たちは、番頭扱いか…オーナー社長一族、恐るべし、と薫は唖然とした。


「まあ、なんでこんなに回りくどいことしているかというと、あの雑魚どものバックにいるヤバい連中対策のため…ね」

「北米軍、ですよね?」

「そ、並木らは所詮、奴らの腰巾着だから…」

横須賀に本拠地を置く在留北米軍は、この国の敗戦からずっと居座り続ける占領軍だ。

事実上、80年間ずっと植民地化されていると、時々、占領されていることすら忘れる。

最近は、北米合衆国そのものが、なんで俺たち、タダでこの国を守ってやってるんだっけ?と占領している自覚すらなくなっていたりするので、余計にタチが悪い…


とはいえ、現状でも世界最強の軍隊である北米軍は本土とこの国を拠点にして世界中どこにでも軍隊を派遣できるし、たとえ北米本土が核攻撃で壊滅しても、この国を拠点に在留北米軍単体でも独自の活動ができるだけのインフラまでこの国に整えている厄介な連中だ。


並木常務は三友重工横須賀営業所長の時に北米軍上層部と懇意になり、最新兵器のライセンス生産を三友グループが一手に引き受ける道筋をつけたて今の地位にある。

お陰で三友イコール北米軍御用達…というイメージが強くなってしまった…

だが結果、そのことが仇になり最近では、ライバルの横浜重工に国防省の新型国産機の受注をまとめて持っていかれてピンチに陥っているのだ…

だが、それも海上防衛隊の軽空母『あかぎ』に載せる、北米製新型戦闘機のライセンス生産で乗り切ろうとしている状況だ。

常務派は北米軍なしにはあり得ないズブズブの関係なのだ。


「まあ、私個人としては、これ以上、北米製兵器に手を出さなくても三友は十分、やっていけると思うんだけどね…もうしばらくは常務派を泳がせて北米にこちらの意図を気付かれたくないのよね」

「それで国産ドローン兵器開発プロジェクトなのですね…」

「そう、神戸二尉に来て貰ったのは、そのための下準備っていう理由だけど、実際のところは三友電機中央研究所と国防装備庁で密かに共同開発やっているののカモフラージュなんだよね…でも本当に隠しておきたいのは、智仁さまの進めている計画」

「で、これでようやく、私が喋る番がまわってきたのかな?」

晴野川が前髪を掻き分けながら、ふっと笑い、全員が注目する。


「前置きは長くなったけど今日まで長い時間をかけて、準備を進めてきたことがようやく整った。神戸君に来てもらって、本物の”三人神女(さんにんかんじょ)”も揃ったことだしこれで…」

「そう、これでおひな様部屋、終結完了よ!」

晴野川の言葉を遮るように陽菜子が思わず拳を上げる。

「…結局、いいところは全部、陽菜子さんが持っていくよね」

溜息をつきながらも微笑む晴野川。

「そりゃあ、三友(ここ)()()()()だから!」

「じゃあ、話がまとまったところで、飲みにでも行きますか!」

「おーーーっ!」

室長の林が音頭をとると、一同も拳を上げた。

「あの…本当に昼間から飲みに行くんですか??」

「悪を騙すために放蕩にふけるフリをする…忠臣蔵の時代から、この国の正義の味方の伝統ではないですか!」

驚く薫に林がウインクする。

忠臣蔵で討ち入りした浪士が別に正義の味方?…とも思えないし、しかも最期は結局全員が切腹させられるバッドエンドなのだが…ともかく今は、放蕩三昧で周りの目…特に世界の核兵器保有国の目がこちらに向かない様に細心の注意を払わなければならないのだろう…


それは、この国で密かに計画されている、世界を滅ぼす程の究極の古代兵器復活計画を何としても隠し通さねばならないからだ。

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