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お代理さまと三人神女(おだいりさまとさんにんかんじょ)  作者: つっちぃ2号
プロローグ 死人の町?のおひな様
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エピソード⑤ 怪し気な儀式

私、川神亜里沙は今まで自覚すらしなかった能力…人々を悪い感情へと誘う邪悪な能力を持つ宗教団体教祖の末裔であることを知った。

教えてくれたのは異動先の三友電機新規事業開発室、蔑称『おひな様部屋』の面々たちだ。

特に、お内裏さま…じゃなかった、お代理さまの二人、晴野川智仁室長代理と三友陽菜子室長代理は特別な存在のように思えた。

これってまさにおひな様状態なのではないのか…


じゃなかった、本題に戻ろう。

今、私は邪悪な能力を消し去るために、おひな様部屋の面々がこれから始める儀式のために使わせて貰いたいとのことだった。

「まあ儀式といっても、そんに難しく考えることは無い。平たく言えば、君の能力を(にえ)にして、この一帯の結界を強化したいだけなんだ」

今まで不愛想だった、晴野川が急に優しくなったのは怪しさ満点ではあったけど、これ以上悪いことが起こらなければ良しとしたい。


でも、贄…って何??

神様へ供物…のようなものと説明されたが、贄って、生贄(いけにえ)の贄ってことだよね…

私、本当に大丈夫なの?

無事に生きて帰れるの??


「川神さん、いくらなんでも、考えすぎよぉ」

陽菜子氏が笑いながら、その場を取り繕おうとしたが…目が笑ってない…

「あのぉ…遺言か何かを残しておかなくて大丈夫ですか??」

「大丈夫、私は失敗しないので…」

晴野川が笑顔で応える。

え?儀式って、外科手術みたいなものなんですか!?


「あ、そろそろ始めますので…」

私は白装束に着替えさせられて神楽殿のど真ん中に座らされた。

なんだか人柱にされるみたいでイヤだなぁ…

あるいは時代劇で見た切腹とか処刑される罪人みたいだ。


するとそこに巫女装束の神田英子、神崎未歩、それにさっきまで軍服を着ていた神戸薫の三人が静かに入って来た。

ああ、三人官女…いや神女の登場か。

手にはなんか怪し気な神器らしきものが握られている。

そして神職の格好をした長い棒のようなものを持った五人林と共に、短い槍に似た神器を握ったお代理さま二人が登場する。

なるほど、おひな様部屋全員で儀式か…などと感心する間もなく、皆、何かをぶつぶつと唱え始めた。


同時に私の身体が反応し始め、全身に青白い光を帯びて来る。

こ…これって何?

考える間もなく、私の身体が雷に打たれたような衝撃を受けた。

「うぐっ…」

いや正確には私の身体から、巨大な光の柱が飛び出して、天井を貫いた。


「逃がすな!」

晴野川の号令で、五人林や一斉に長い棒のようなもので光の柱を取り押さえる。

同時に三人神女が鈴のようなものを鳴らしながら神器を突き付けて、私に向かって近づいて来た。

そして晴野川が、訳の分からない祝詞を大声で唱え始め、槍のような神器を私に向けた…

同時に再び全身に強い衝撃を受けると、私の意識は遠のいた…


これは夢の中なのか?

暗闇の中を漂っていた私の前に突然、紫色の大蛇が現れた。

『よくも…よくも裏切ってくれたな…』

え?この蛇、何を言っているのかな?

『おのれ!こうなったら貴様もろとも!!』

そういうと、大蛇が大口を開けて私に襲い掛かる。

ひっ…と思わず目を瞑る私。

『もう大丈夫だ…』

暗闇の中から声が聞こえたかと思うと大きな光の渦が湧き出して大蛇を包み込む。

『ギャーーーーーー』

大蛇は断末魔のような悲鳴を上げて光の中に溶けていった…ところで、ゆっくりと目を覚ます私。


和室のような部屋で布団に寝かされている私。

「気が付いた?」

神田英子ら三人神女が見守ってくれていた。

「…私、生きていますよね」

「ええ、もう大丈夫よ…あなたの邪悪な力は全て吸い出されて、この土地の守り神に変わったの」

「そう、なんですね…良かった」

「ともかく今日はゆっくり休んでね、明日、智仁さまと陽菜子さんから、あなたの今後についてお話があるって…」


私の今後って?

まあいい、こうして私は無事で、これからは体調不良に悩まされることなく生きて行けるのだから。


翌日、私は新規事業開発室の会議室に呼ばれ、晴野川と陽菜子氏から私にいくつかの書類が手渡された。

『休職願い』と書かれた書類が最初に目に入った。

「これは…?」

「君には今日付けで、三友電機を休職して貰う」

晴野川が静かに言った。


やはりクビか…でも退職ではなく休職なのか…

「わかりました…まあ、部外者の…しかも常務派のスパイの私が、この部屋の秘密を知ってしまったのですから当然ですよね…」

でもまあ、結果として私は救われたのだから恨みはしないが、


「何か誤解をしているようね…あなたは今でも新規事業開発室の立派な一員よ…ちゃんと書類全部に目を通しなさい」

陽菜子氏にそう言われて、慌てて書類の束を見てみると、大学入学のための書類や学芸員資格取得に関するものなどが揃えてあった。

「これは…」

「この新規事業開発室の正規メンバーとして仕事をこなすには、君はまだまだ勉強不足だからな…まずは國學館の神道学部に社会人枠で編入して貰う。そこで神職の資格を取りつつ、いずれ発足する三友文化財団で働けるように学芸員資格も併せてとって貰いたい…っていうか業務命令だ」

「いいんですか?私が…」

「まあ、あなたがこの土地を守るための強い力を私たちに授けてくれた、せめてものお礼だと思って…もちろんこのまま、あなたが会社を辞めてもっと別の道を目指すなら、割増の退職金とか三友グループの力を使って、いろいろ支援をさせて貰うわ」

「まあ、私としては、君には今後、貴重な戦力になって貰いたいんだけどね…どうかな」

私は嬉しくて涙が出そうになった。

何故なら常務派のスパイの仕事をしていても、ここまで必要とされたことがなかったからだ。


だが、気になっていることもあった。

「はい、もちろん…え、でも私、"三人神女(さんにんかんじょ)"の人たちみたいに名字が"カン"ではなく

"カミ"なんですけど、いいんですか??」

晴野川と陽菜子氏が二人して顔を見合わせると、大笑いをした。

あれ?私なんかウケること言ったのかな??


「ああ、あれってね、実はカモフラージュがそのまま悪ノリしていただけなの…たまたまだったのよ」

「え?たまたま??」

陽菜子氏にそう言うれ、唖然とする私。

「ああ、ちょうど林がつくのが五人集まったから、神も三人揃えようと思っただけだよ!」

「そう…だったんですね」

「さすがに神職にも精通した人材は限らているからね…今後は違う名字の人も入って来ると思うよ…並木常務派が揃って失脚したら…ね」

「なるほど…いろいろ勉強になります」

恐らくは、高橋取締役も含め、常務派は長くないだろう。

そして、新規事業開発室は会社の枠を超えて、この社会になんらかの大きな力を行使しようとしている気がしてならない。

私がもし末席でもその一員に加えて貰えるなら、彼らの作り出す未来を見てみたい、そう思うのだった。


「これからも、どうか、よろしくお願いします」

私は立ち上がると、二人に深々とお辞儀をした。

この瞬間から、私の未来も良い方向に向かうと信じつつ…

プロローグの川神亜里沙編はこれで終わりです!

次回からはいよいよ本編が始まります。

お楽しみに!

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