第三話 妖力
今回は少し唯の語りが多いです。ゆったりと読んでくださいね。
昔々、豊後の国に1人の心優しい姫がいました。ある時は病に苦しむ人々の看病をし、ある時は動けなくなった老人の世話を進んで請け負っていました。その姫の美しさと心の清らかさは、国中で噂になっていました。
ある時、そんな姫を我が物にしようと時の権力者が無理矢理姫の家に攻め入ってきました。なす術なく姫の両親が殺され、姫はその大名主に連れて行かれると思われたそのとき、1人の男が大名主の兵を蹴散らして姫を救いました。その男は刀の一振りで50人を薙ぎ払い、斬られたその傷は瞬時に元通りになり、更には睨んだ者たちを次々と石に変えていきました。その後、男は満月の夜のみ姫の元へ何度か訪れ、やがて姫は子を身籠りました。しかし、姫は依然男の顔を1度も見たことがなかったのです。
ある夜、姫は男の跡をつけることにしました。男はどんどん山の奥へ進んでいき、大きな洞窟に姿を消しました。姫がその洞窟に足を踏み入れると、中から呻き声が聞こえてきました。
なんとそこには戸愚呂を巻いた巨大な竜が横たわっていました。竜は苦しそうに呻き、近づいてきた姫に気がつくと、来るな、近づくな、と力なく言いました。
竜の心臓には大きな禍々しい槍が刺さっていました。嫌がる竜を横目に姫はその槍に手をかけて一気に引き抜きました。すると竜の姿は姫が愛し合ったあの男の姿に変わりました。その瞬間姫は初めて月明かりに照らされた男の顔を見ることができたのです。しかし、男の胸からは光り輝く液体がとめどなく流れ出ていました。男は最期に、姫のお腹の子が豊後を統べることになるという予言と、姫を愛しているということを言い残して光となって消えました。
姫は槍を引き抜いてしまった後悔と、予言の使命感を抱えてこの豊後の覇者となる子を出産し、それと同時にこの世を去りました。
それから15年後、、、
この2人の間に生まれた子は、予言の通り
その絶大な竜の力を使って、
この豊後の國を初めて統一する大名となったのです。
「っていうつまらない話があってね。
それが私の力のルーツなんだけど、、って
ごめんごめん話が逸れたちゃったね!バイトの面接なのに。」
「いえ、店長さんのルーツが少し知れて嬉しいです。力の強さのわけもなんとなく分かりました。(ん?バイトってなんの話?)」
「力を発現するにはそのルーツが重要なんだよ。だから私も今失われた家系図を探してるんだよね。そういえば君お名前は?」
「大神 燈です。あなたは?」
「私は、緒方 唯 この書店の店長よ
燈もここで自分の力のルーツを探して、見つけていけば力を使いこなせるようになると思うし。もうあれらを怖がる必要もなくなるよ。」
「そうなればいいですが、、、僕は弱いので」
「今まで怖い毎日だったよね。気持ちわかるよ。でもそのうち自信がつくよ。もしかしたら住んでる場所も同じだし私たちは遠い親戚だったりするのかもね!じゃあ今から簡単な検査をしようか。」
「検査?」
「そう検査!この水晶に手をあててみて」
「こうですか?」
言われた通りに右手を水晶にかざした。すると、水晶が激しく紫色に光り輝いた。
「これは、すごいね、私みたいな式神使いは、水晶のなかにその式が映るんだけど、君の場合はとても強い紫の光を放っているね。」
「これは、何か意味があるんですか?」
「冠位十二階って知ってる?あれと同じで紫は最も力の強い色なんだ。あと、光を放つと言うことはおそらく状態変化の力を表してるね。例えば対象を毒にしたりとかそういう力だね」
「すごいですね。たったこれだけの情報でそこまでわかるんですか?」
「面白いでしょ?また新人さんがきたら、一緒に試そうね!」
ようやく落ち着いて書店を見回すと、普通の書店とは明らかに違う異様な雰囲気に気がついた。そう、この書店には、妖怪についての本しかないのだ。
「さて、じゃあお仕事の話をしましょうか!」
こちらの様子を気にすることもなく、唯は淡々と緒方書店についてや、その仕事内容について話を始めた。
クッキーはプレーンがいいです。色んなお茶に合わせて飲めますよ♪