第4節 十三話 座敷童の女の子
「じゃあ座敷童ちゃんってことで、トランプの大富豪をしよっか!」
そう言うと唯はトランプをシャッフルして交互に配り始めた。座敷童は手慣れた唯のシャッフルを興味深そうに見つめている。
「このゲームのルールはね…」
大富豪のルールを口頭で説明する。座敷童はゲームが大好きな妖怪なので、口頭で言うだけで正しく理解できる。見た目は子どもだが、とても賢い妖怪だ。
「おっと、Aのトリプルかー私パスだね。」
さすがにゲームが好きな座敷童は、あっという間にカードの枚数を3枚まで減らした。
かわいい顔でニヤニヤしながら唯の様子を見ている。
「じゃあこれならどうかな?」
唯が4を4枚並べて革命を起こす。カードの強さバランスが一気に逆転する。
「!!」
座敷童の顔に焦りが見えた。そしてそのままの勢いで唯は一気にカードを全て出し終えた。
座敷童は、家にいる間は家主に幸運をもたらす。つまり今この家の家主である唯は、幸運の恩恵を受けながら座敷童と大富豪をしているのだ。
「はい!私の勝ちね!」
座敷童は悔しいというより、驚いた顔をしていた。おそらく今までゲームで一度も負けたことがなかったのだろう。だが、生憎唯は大富豪が大得意だった。そして負けた座敷童は、懐から徐に何かを取り出して唯に手渡した。
「これは、、まさか真名の依代?」
座敷童は、木の札に拙い文字の書かれたものを唯に手渡した。妖怪は基本的に本当の名前を人に明かすことはない。だから自由な存在なのだが、認めた相手にだけは真の名前を明かすことがある。この依代を使えばその真名の妖怪になんでもお願いすることができるのだ。
「いいの?」
座敷童は唯の膝下に抱きついて嬉しそうに頷いた。よほど唯のことが気に入ったようだ。
「ただいま帰りました!あれ、唯さんその子は?」
燈が本に妖怪を封印して戻ってきた。シライシ様も一緒だ。
「新しい司書を雇うことにしたの。燈くんも仲良くしてあげてね。」
こうして、緒方書店にまた新たな仲間が加わったのだった。