第4節 第十二話 唯の一日
今回と次回は唯視点のお話です。
「やーっと学校終わった〜唯は今日も家の手伝い?」
「うん、今日はまた留守番なんだごめんね!」
「いいよ。ならまた今度誘うね!」
「じゃあね!唯また明日!」
「うん!また明日ね!」
私は緒方唯高校2年生。
この先にある緒方書店の一応店長をしてる。
前は一人で妖関係の仕事をこなしていたけど、最近はもう一人店員が増えて、仕事が少し楽になった。彼はまだまだ不慣れだけど妖力が強いし、一生懸命で頼りになる。
「ただいま〜って誰もいないんだけどね」
いつも書店に帰ると、私はまず紅茶を淹れる。そして、書庫に光っている本がないかを見渡して確認する。光っていたらマコマに持ってきてもらうのだ。
「よし、今日はこの一冊だね。これは燈くんにやってもらっちゃおう。」
光っている本があったら、店員の元へマコマに届けてもらう。そうやって仕事を割り振るのだ。他にも、市役所だったり民間の企業から妖関係の仕事が入ることもある。緒方書店は知る人ぞ知る妖事件解決屋なのだ。
「唯さーん来ましたー!」
「お、来たね。じゃあこれ今日の分。お願いね。」
私は先程光っていた本を燈くんに手渡す。今日は学校が早く終わったのか燈くんがいつもより早く書店に来た。
「分かりました!さっそく行ってきますね。」
その後燈くんが帰るまで、私は本棚の整理をする。そして封印された妖怪たちに異変がないかも確かめる。
「ん?今日は2冊かな。この本も光ってる。」
珍しく2冊目の光る本が目に入った。名前は''座敷童''と書いてあった。
「これは、また珍しい妖だね。しかもこの光の向きだと書店の中に居るみたいね。」
座敷童は、室内に出現する珍しい妖怪だ。滞在している間は家主に幸運をもたらし、居なくなるとその分の不運をその家に置いて行く。一般的には非常に厄介な妖怪とされている。
「最近燈くんにばっかり仕事してもらってたし、たまには私も仕事しないとね。」
紅茶を一口飲んでから、私は店内に居るはずの座敷童を探すことにした。
「おーい。出ておいでー!私と一緒にあーそーぼ!」
「ア、ソブ…?」
「お、いたいたこっちにおいで!」
座敷童はソロソロと近づいて来ると、唯の座ったソファーの向かいの椅子にちょこんと座った。