《一章 星空を貴方と》
「落ち着くわね」
私は隣にいる彼にそう言った。輝き始めた星たちが無数に連なり、空は大きな一つのキャンパスとなっていた。田舎で見た星とは違い、街並みとのコンビネーションで夜空の星はより一層見るものを虜にする。いつもなら霧で見えない星が今夜は街から見れた。何か良いことがありそうな予感がする。
「そうだな。俺にはまるで似合わない」
彼はまたそんな反応をする。いい加減、自分が背負わなくていいものを捨てたらいいのに。アンタの罪は私が消したんだから。それに、口調も前みたいに戻っている。これはお灸をすえるべきかしら?
「私に逆らうの?」
「いえ、主様」
私が聞くと、彼は自身の胸の前に手をおいて頭を下げて言った。私との主従関係ってめんどくさくないのかしら?そう言えば、こいつの目、綺麗になったわね。両方とも透き通っていて、以前のどす黒さはまったくない。それに白い右目と黒い左目のオッドアイでそれなりにかっこいい。
「綺麗ですか?」
あまりに私が目を見ていたからか、彼はそう聞いてきた。
「前の貴方より、よっぽど綺麗よ」
***
冬の夜、月が昇り始めた王都で私は彼と街を軽く歩いていた。ルーグナーやペルはまだ外をほっつき回っていた。だからこそ、こうして彼と会えるのだが。
ちなみに、彼との出会いは最悪だった。でも、互いの境遇とかなんやかんやで意気投合。こうして今に至る。いつかそれも語るとしよう。
今回語るのはどういう経緯で私、ルナがルーグナーやペルたちの仕事を手伝うようになったのかだ。