《五章 神器》
「ねぇ、さすがに霧、濃すぎない?」
カルディアのすぐ側まで辿り着いたのに、街は依頼通り厚い霧に包まれていた。その霧は街だけでなく、周囲の森にまで広がっていて、簡単にはカルディアに入れそうにない。
深い霧の中、私たちは前へと進んでいる。けれど、その霧は尋常じゃない濃さで、すぐ近くにいるはずのルーグナーとインペルの姿さえ掴めそうにない。何より、妙に集中できず、頭がぼんやりしている。寝不足のせいか、あるいは悪魔との戦いの疲れなのだろうか────。
「それもそうだが、この霧から僅かに悪魔の気配がする。案の定、今回も悪魔が絡んでいるようだな」
「スムーズに終わってほしかったけど、やっぱりそう簡単にはいかないわね」
悪魔が絡むと仕事が増えて面倒だわ。せめてもう少し楽な依頼があればいいのに……。
「それにしても、こんなに進んでもまだ街に入った感じがしませんね?何かの魔法でしょうか?」
インペルの言う通り、記憶でも街から森まではここまで長くなかった。
「多分魔法か何かだわ。街までの空間が捻じ曲げられている。ルーグナー、対処法はあるんでしょうね?」
「……いや、ない」
「はぁ?何しに来たのよ!」
母や街の人のことが心配だから早く助けに行きたいんだけど!?
「すまん、間違えた。俺にはない」
「じゃあ誰ならこの霧をなんとかできるの?」
「お前だ、ルナ。列車で悪魔と戦った時の杖を使えば、多分いける」
「多分って、曖昧すぎない?それに、この杖ってどうしたの?装飾も豪華で、あんたのものには見えないんだけど」
私の手にある杖は小さく、手のひらに収まるサイズだ。妖界で使った時には私の身長ほどに伸びたけど、戦いが終わると元のサイズに戻っていた。
金と白を基調とした高級感あふれる杖。ルーグナーが作ったようなものじゃなく、国に寄贈されるレベルの美しさだ。
「教会から無理やり借りてきた、いや、ちょっと拝借してきたというか、なんというか」
「ルーグナー、あんた盗んだの!?」
「流石に窃盗はマズいですよ、ルーグナー!?」
私とインペルが同時に非難すると、
「黙れ黙れ。俺を犯罪者呼ばわりすんな。一応、教会の知り合いに話はつけてあるから安心しろ。まぁ、バレたらそいつが殺されるだけで、俺には関係ないけどな」
「なんてことしてくれてるのよ、本当に」
巻き込まれた教会の人が可哀想だ。早くこの依頼終わらせて杖を返してあげないと。
「でも、これがなかったらさっきの悪魔だって危なかった。あってよかっただろ?」
「それはそうだけど……」
杖で助かったのは事実だが、勝手に借りてきたと言うのだから困る。どういう神経してたらそんなことができるのか。
「俺がどう借りたかは置いといて、それは【神器】のレプリカだ。使用回数に制限があるから無駄遣いはするな。んで、それは悪魔に対して超特効があり、特徴としては杖からの〜、【神聖力】を〜〜、〜して〜〜」
長いわね、説明。【神器】とか色々気になるけど、要点だけ聞きたいわね。
「説明長すぎ。要点だけ教えてよ」
「ざっくり言えばめちゃくちゃ強い。【解放】と唱えれば使える。以上」
「了解。以上」
私、めんどくさいこと嫌いなのよね。やっぱり、物事は単純な方がいいわ。
「お二人とも、そんな状態では依頼に支障を─────スヤァ〜」
「「ん?」」
インペルがそう言いかけた途端、突如「スヤァ〜」と眠ってしまった。あまりにも突然で、私とルーグナーは呆気にとられる。
「おい、インペル?起きろ!」
ルーグナーが呼びかけても応答なし。完全に深い眠りに落ちているようだ。
一体何が起きたのだろうか。さっきまで普通だったのに、いきなり眠るなんて……あら、周囲から誰かがこちらを見ている感覚がするわね。
なにかの視線を感じたルナは周囲を見回した。
「……なるほど、ルーグナー。多分、こいつは起きないわ」
「どうしてそう断言できる?」
「周りをよく見てみなさい。悪魔に囲まれているわ」
「……いつの間に?しかも下級の悪魔ばかりだ。この数がどうやって現世に?」
百を超える悪魔に囲まれている。状況はかなりまずい。
「今はそんなこと言ってる場合じゃないわよ。この霧に悪魔の力が宿っているって、さっきあなた言ってたわよね?インペルが眠ったのもそのせいよ」
インペルが眠った理由は一つ思い当たった。
霧に入ってから妙に頭がぼんやりしていたのは、悪魔の力が原因だったのだ。
「あぁ、なるほどな。俺たちは悪魔耐性があるからまだ起きていられる。でも長くは持たない。だから、さっさと杖を使え!」
「言われなくても分かってるわよ!」
数の差は圧倒的。杖を出し惜しみしている余裕はない。この勝負は一手で終わらせる。
────あの時のように力を貸して。
「【解放】」
聖なる言葉と共に杖から光が溢れ出し、迫りくる悪魔の体を包み込む。その光は瞬時に悪魔を崩壊させ、森や街を覆っていた霧も消し去った。視界は鮮明になった。
「杖は温存すべきだが、今回はお前の判断で命拾いをした。よくやった」
「どういたしまして。さあ、インペルを起こして街に向かいましょう」
そう言って私たちは再び街へと歩み始めた。
ちなみに、インペルはルーグナーに一発叩かれてすぐに起き(起こされ)た。
【裏話】
最後の悪魔を倒す展開ですが、本来だともう少し色々書く予定でした。
(杖が使えない)(ルーグナーが寝かける)(【龍手】の新しい攻撃)とか。
一応部活動で書いてるので、文字数がある程度制限されてて……またいつかそこは書き足すと思います。
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