寂しがり屋なところだけは似ていた
生まれながらも体が弱かったシリウスは誰からも期待されていなかった。
現国王であり兄であるチャールズは、シリウスが物心つくようになった頃には既に次期国王となるべく政務を手伝っている立派な王太子で、王太子妃であるマリアンヌとの仲も良好でいつ子供を授かってもおかしくない状況だった。
誰もシリウスが次の王になるとは思っていなかった。
ただ、万が一の備えとして王宮に置かれている程度の扱いでしかなかったシリウスの下に、兄であるチャールズは忙しいスケジュールの合間を縫って会いに来てくれた。
シリウスにとって、兄であるチャールズと会っている時だけが幸せを感じられる時間だった。
だが、チャールズとマリアンヌの子供が生まれてからは、チャールズは弟であるシリウスよりも我が子であるエリックを優先するようになった。
長い間授かる事が出来なかった子供が出来たのだ。浮かれている兄上の気持ちもいずれ落ち着くだろうと思いながらも、シリウスは平静を装っていたが内心は大好きな兄を取られてしまったような気分に陥り、甥の誕生を素直に喜ぶ事が出来なかった。
それでも、兄に似ていれば愛せると思ったシリウスであったが、甥であるエリックの顔立ちは父親であるチャールズよりも母親であるマリアンヌに似ており、性格も真面目なチャールズとは全く似ておらず、第一王子としての責任感も欠如しており、王太子教育を受けても不満ばかり言うような甘ったれた性格だった。
やがて兄チャールズが即位し国王になると忙しさは王太子の頃とは桁違いになり、エリックは父親と会えない寂しさを叔父であるシリウスにこぼすようになった。
シリウスはこの時初めて、エリックに同情した。同時に、エリックの不満が手に取るように分かった。
エリックが父チャールズと会えなくて寂しい、もっと自分を見て欲しいと願う気持ちがシリウスには痛い程よく分かった。
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