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【Case1】1.「気づいてない」ってことに気づくのが、一番の難関 (3)

「そっちー!?」


 隣で爆笑するミーコ。


 ちなみにこの、翠が俺に使う「相棒」って呼び方には、もう慣れた。最初のころはいちいち、「映画の吹き替えかよ!」って心の中で突っ込んでたもんだけど。


「……『寝坊』だ、『寝坊』」


 俺らの反応に不満げな顔をしている翠に、諦めて俺は正解を教える。


「『絶望の起床』までは合ってるけど、意味が違う。悲しい夢の話じゃなくて、遅刻の連絡とかに使うのよ。チャットで、『絶起ぜっきしたんで遅れます』みてーな」


 少し前からこめかみのとこだけピンクにしてる髪をくしゃくしゃかき回しながら、仕方なさそうに説明した俺に、


「……なるほど」


 翠が目をまるくした。


(わかんねーんだろうなー。こいつ、友達と通話アプリとかしなさそーだし)


 これまでずっと他人と距離を取ってきたのであろう翠に、俺はちょっと切ない気持ちになる。


 この目の前のやたらきれいな顔をした、ついでにおつむの出来も抜群の男・新堂しんどう(すい)は、俺の同級生・兼・家主・兼・雇用主だ。


 去年の春、俺はこいつんちで暮らし始めたのと同時に、こいつの起業した「便利屋・ブルーオーシャン」という会社の唯一のアルバイトになった。といってもまあ、実際の作業は二人で、最近はミーコも入れた三人でやってるわけだけど。


 高三の終わりに父親を亡くして、ひとり暮らしになった俺は、翠に誘われて高校卒業と同時にこいつの家に居候いそうろうさせてもらうことになったのだ。翠の父親と住み込みのその秘書が仕事で不在がちで、部屋が余っているから、というありがたい申し出に乗っかって。


 ただし、少々残念なことにそれは、百パー純粋な好意からというわけではなく、こいつなりの目論見があってのことだったらしい。


 こいつが始めた便利屋でバイトに精を出していたはずの俺は、ちょうど今から一年ほど前の大学一年の秋、気づいたら「怪盗ブルー」っていう窃盗団? の一味っていうか、実行担当になっていて(頭脳担当はもちろん翠だ)


 知らないうちに勝手に犯罪者にされて、当初は激ギレした俺だったが、翠の事情や性格を知った今は、積極的とまではいわないまでも、ブルーの活動に協力はしている。


 その事情っていうのが、翠の出生の秘密やら、日本を代表する企業グループやらが絡んで、えらくややこしいことになってるんだけど。


 一方、さっきから俺の隣でごろごろしてる、ミーコこと仙道せんどう(あおい)は、本来なら高校二年生。横浜にある実家から、絶賛家出中だ。


 暴力団組長のひとり娘であるこいつは、去年の秋、十六になった途端に政略結婚させられそうになったらしい。そこでなぜか、「平成のねずみ小僧」とか「弱きを助け強きをくじく義賊」っていう、マスコミの作った適当なブルーのイメージに踊らされ、怪盗ブルーなら困ってる自分を助けてくれるんじゃねーかっていう一方的な期待をしたこいつは、俺らが当時住んでた都心のマンションを探し当てて転がり込んできた。



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