★おまけ★ 3.夜の猫は遊びたい (2)
ミーコがアタシを下に降ろすと、早速おもちゃを取り出した。
初めて見る鳥っぽいおもちゃに、アタシは集中する。
鳥っぽいっていうのは、長ーい棒の先にふわふわの羽みたいな、でもスズメやハトとは違う色の……うーん、うまくいえないけど、鳥よねこれは! って感じのがついてるやつのことね。
(ていっ! ていっ!)
しばらくの間、わき目も降らずその“鳥”を狩ったアタシは、
(……ふー。なかなかすばしっこいわね、こいつ……)
さすがにちょっと疲れて、前足をぺろぺろする。
「休憩しよっかー? フーちゃん」
ミーコがアタシを抱き上げた。
いいわね。アタシもそう思ってたとこよ。
アタシを抱っこしたミーコが、コーセーやスイの座ってるテーブルに近づく。
久しぶりねー、アンタたちも。
「おー、フーちゃん」
コーセーが立ち上がると、両手を広げてミーコからアタシを受け取った。
「久しぶりー。今日もかわいいでちゅねー」
ちょっと目を細めて、アタシはうなずく。
声は大きすぎだし言い方もアレだけど、コーセーったらきっと、アタシに会えた嬉しさで舞い上がってるのよね。見逃してあげるわ。なでなでが上手だから。
ひとしきりアタシのことをなでなでしたところで、
「おまえも撫でる? フーちゃん」
コーセーが、スイを振り向いた。
「……」
黙ってこっちを見ていたスイが、ぱってコーセーの顔を見上げる。
(……あらまあ。お目目が)
ちらっと見たスイのお目目が、お星様でも入ってるのかしら? ってくらいキラキラしてて、驚きのあまりアタシは目をまるくした。
(なんだか、すごいわよ?)
猫って、ほんとは他人のお目目をじっと見つめたりしないものなのよ。礼儀なのよ、それが。
でも、これだけキラキラのピカピカだと、つい、ねー。
椅子から立ち上がったスイが、アタシを抱っこしてるコーセーの前に来た。
「フーちゃん、顔出せる?」
コーセーに言われて、
「任せて」
アタシはコーセーの腕の中で、スイの方にお顔を向けてあげる。
ほらほら。いつでもなでなでしていいわよ?
なのに、
「……」
片手を上げかけたポーズで、アタシの顔を見たまま固まってるスイ。
……もしかして、迷ってるのかしら? アタシの機嫌をはかりかねて。
アタシはあきれて、思わず小さく口を開ける。
ほんっと、慎重っていうか、なんていうか。いつまでたっても遠慮する子ねえ。
(これって、あれかしら? なかなか人間に懐かない、野良猫みたいなもんなのかしら?)
コーセーの腕にかけた前足をぐっとふんばって、アタシは胸を張った姿勢でスイを見上げる。
(いいのよ? ほら。なでなで)
遠慮しないでってば。
もどかしさのあまり、つい前のめりになったアタシは、
「あらっ……と」
バランスを崩して、コーセーに抱っこされたまま、ちょうどスイが出しかけてたお手手の上に左の前足をついた。
「……」
一瞬、アタシは猫の礼儀も忘れて、スイと目を見合わせる。
あらまあ。ほんと、ミーコとはまた違うけど、でっかいお目目だこと……。
その途端、そのおっきなお目目が、ふにゃーって細くなって。
「――golden eyes……」
アタシの知らない不思議な音でつぶやくと、スイがにっこりした。
そのお顔のまわりに、ぱーってなにかキラキラしたのが飛び出した気がして、アタシはびっくりして息をのむ。
あらっ? 何だったのかしら、今の?




