★おまけ★ 3.夜の猫は遊びたい (1)
シュージの用意したお夕飯を食べて、「あーおいしかった」ってごろごろしてるうちに、パパさんママさんシュージは、また下の「お店」にお仕事に出掛けていった。
窓の外はもう、すっかり真っ暗。
アタシは、ちょっとずつ気分が上がってくるのを感じる。
猫って、夜に元気が出る生き物なのよ。
誰もいないおうちの中を、軽くパトロールしたり、またうとうとしたり、また起きて、だだだってひとりでかけっこしたりしてたら、
「フーちゃん!」
オダイドコのそばの、玄関のドアが突然開いて、シュージが飛び込んできた。
「……!」
びっくりして、アタシは思わずぴょんってしちゃったわ。アタシとしたことが、だだだってしてたせいで、シュージがお外の階段を上がってくる足音聞き逃してたのね。
でも、びっくりしたのには、他にも理由があって。
実は、さっきかけっこしたときにね。オコタの上にあったパパさんのオユノミが倒れて、中からちょびっとお水がこぼれちゃったのよ。
やっぱちょっと、気まずいじゃない? 子猫みたいな失敗しちゃって。
だけど、オコタの前に駆け込んできたシュージは、オユノミなんて全然目に入ってないみたい。
(この感じは、あれね。多分)
アタシはぴんとくる。
シュージが、小さなお目目をぱちぱちさせながらアタシの方に手を伸ばした。
「フーちゃん、来て! ミーコさんが!」
(ほうらね)
予想が当たって、アタシは気分よくしっぽを振る。
お呼びがかかった、ってわけね。下の「お店」に来た、あの子たちから。
「仕方ないわね」
余裕たっぷりに答えると、アタシはシュージに近づいた。
遊んであげようじゃないの。腹ごなしに。
なーんて、久しぶりにアタシも会いたかったしね。あの子たちに。
シュージに抱っこされて、アタシはおうちの玄関を出た。
ドアの外には階段。階段って、おうちの外にもあるのねー。
その階段を降りて地面に着くと、シュージはちょっと向きを変えて、からからって音を立てた。
「お待たせしましたー」
声を掛けながら、シュージが「お店」の中に入る。
「フーちゃあん!」
たちまち響く、ミーコの声。
お待たせ。今日も熱烈歓迎ね。
「久しぶりねー、ミーコ」
アタシが優しくお返事すると、えへ、って嬉しそうな顔をするミーコ。ふふ、素直でいいわー。
奥のテーブルからこっちに駆け寄ってきたミーコを見上げながら、アタシはシュージに抱っこされたまま、くんくんと鼻を動かす。
今日もなんだか、いろんな匂いがしてるわねー、ここは。
そばに立ってるママさんが、こっちを向いてにこにこしてる。
奥の方から、パパさんもちらっと顔を出した。でも、ここではいつもみたく「フーちゃーん」ってふにゃふにゃ声で言わないのよ。かっこつけてるのかしらねー。
シュージがミーコに、
「ミーコさん、はい」
って、アタシを手渡す。
アタシをきゅっと抱っこするミーコ。
「会いたかったよー、フーちゃん。いっぱい遊ぼうねー」
(もちろんよー!)
アタシはぎらんと目を光らせる。




