表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/215

★おまけ★ 2.昼の猫は眠い (1)

 みんながお仕事に行ったあと、アタシはまた窓からお外をのぞいたり、オコタの上のオミカンが入ったかごをひっくり返してやったり(あの匂いが、うーってなるからやなのよねー。オミカンって)、ひと休みしてお水を飲んだりした。


 そのあとまた、ちょっとうとうとして。


 まわりがにぎやかになって目が覚めたら、みんながおうちに帰ってきたとこだった。


「んー、お腹いっぱい」


 ママさんが、ぽんぽんってお腹を叩く。下の「お店」で、「まかない」っていうのを食べてきたんですって。


 何なのかしらねー? マカナイって。アタシは朝と夜のごはんしか食べないから、よくわかんないわ。あ、あと、おやつね。


 みんなはいつも、昼間にお仕事から帰ってくると、夜のお仕事までちょっとだけお休みするの。


 パパさんとママさんは、お昼寝したり、テレビを観たり。あ、ママさんはお出かけすることもあるわね。「スポーツクラブ」とか。


 シュージは、いろいろなのよね。最近は、自分のお部屋でなんかしてることが多いみたい。……それってやっぱ、シュギョーなのかしらね?


 ちょっと興味がわいてきたアタシは、階段を登ってシュージのお部屋に突撃することにした。


 朝とは違ってドアが閉まってたから、


「ちょっとー、シュージったらー。開けなさいよー」


 廊下に座って、おっきい声で文句を言う。


「あれ? フーちゃん?」


 慌てた顔でドアを開けるシュージ。


 そうよ。アタシよ。

 わかればいいのよ、わかれば。


「遊びに来たの? フーちゃん」


 そんなとぼけたことを言いながら、アタシをお部屋に入れたシュージが窓のそばの机に戻っていく。


 やーね、そんなわけないじゃない。


「なに言ってんのよ」


 アタシはひらりとその机に飛び乗ると、「ご本」やなんやかやには乗らないように、しっぽを身体に巻きつけて行儀よく座った。


「遊びなんかじゃないわ。アンタのシュギョーの監督しに来たのよ、アタシ」


 びしっとシュージに言って聞かせる。

 シュージったら、まったく、世話が焼けるんだから。


(ふむふむ。これは、何のシュギョーかしらね?)


 早速アタシは、その辺にあった「ご本」の匂いを嗅いでみた。

 ……なのに、シュージったら。


 せっかくお椅子に座ったっていうのに、シュギョーの続きもしないで、


「はいフーちゃん。ハイタッチ」


 嬉しそうに、パパさんみたくアタシの顔の前に手を差し出してくるのよ。

 あったまきちゃう。


 デレッとしたその顔に、


が高いのよ」


 アタシは、渾身こんしんの猫パンチをお見舞いしてやったわ。


「あ、やられた~」


 シュージが、てへへと頭をかく。


 いいから、さっさとシュギョーに戻んなさいよ。

 遊ぶんじゃなくて監督しにきたのよ、アタシは。アンタのこと。


 アタシに怒られて、ようやく「ご本」を開いてシュギョーに戻るシュージ。

 そうそう、その調子よ。励むがいいわ、若者よ。


(……でもこの子、やっぱちょっと心配なのよねー)


 暇つぶしにお顔を洗いながら、アタシはちろっと横目でシュージを眺める。

 今だってほら、シュギョーを始めたはいいけど、


「そうだよなー。ミーコさんとの、幸せな未来のために! フーちゃんと遊んでないで、勉強勉強!」


 とかなんとか言っちゃって。

 なんか、「ご本」に「ペン」でしゅーってしたり、お目目つむってぶつぶつ言ったりしてるけど。


 ほんとに大丈夫なのかしら? この子。

 なんかこう、勘違いとか、早とちりとかしちゃってんじゃないかしら? いつもみたく。


 アタシは机の上で首を傾げる。


 ミーコっていうのは、あれよね? コーセーたちの仲間で、ときどき下の「お店」に来る、黒猫みたいなぴかぴかした目の女の子のことよね?


 子猫なのよねー、あの子もまだ。まあ、同じ子猫でも、シュージに比べたらしゃきしゃきしてて、アタシは気にいってるんだけど。


 でも、あの子とシュージの幸せな「ミライ」って、どういうことかしら?

 シュージったら、ミーコの前だとやたらそわそわしちゃってるけど、あの子の方では全然そういうのないみたいだし。


 ……そういえば、前にちょっとだけ、あのミーコたちのおうちにお泊りしたことがあったのよねー、アタシ。


 思い出しちゃったわ。さっきの話の続き。

 アタシは顔を洗う前足を止めて、ちょっと遠い目になる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキングに参加しています。クリックしていただけたら嬉しいです(ぺこり)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ