★おまけ★ 1.朝の猫は早い (6)
ミーコと、コーセーと、スイ。
まるで、昨日のことのように思い出すわ。あの子たちを木の上から見下ろしたときのこと。
アタシのことを探しに来た、バーチャンのお手伝いの子たちね、っていうのは、すぐにわかった。だって、懐かしいアタシのキャリーケースの匂いがしたんですもの。中に、大好きな○ゅーるとネズミのおもちゃが入ってるやつね。
じっくり考える間もなく、アタシは木から飛び降りて、キャリーケースを持ってる男の子の足元に走り寄ったわ。
……猫って、ものごとをあんまり深く考えない生き物なのよねー。
モモカさんはいい人だったけど。やっぱ、帰れるものならバーチャンのとこに帰りたかったのよ、アタシ。ちょっとだけ憧れてた野良暮らしは、思ってたほど快適じゃなさそうだったし。
ただ、どういうわけか、アタシが木の下に着地するのと同じタイミングで、ケースを持ってない方の男の子――スイが、ずしゃーって地面をすべって転がったの。あれにはちょっと、びっくりしたわねー。
地面に降り立ったアタシは、ケースを持った男の子――コーセーの脚に、はじめまして、ってすりすりした。
一目でわかったわ。ぶすっとしててちょっと怖い感じだったけど、あの子が抱っこが上手だってこと。だてにバーチャンのおうちで、お茶飲みに来てたお友達たちに撫でまくられて育ってないんだから、アタシ。
やっぱ、バーチャンのおうちから来たのね、この子。すりすりしながら、アタシは確信した。だって、お洋服からも匂いがしたもの。あのおうちの。
だけど、アタシを抱っこしてキャリーケースに入れたコーセーたちは。懐かしいバーチャンのおうちじゃなくて、初めて見るでっかいおうちにアタシを連れてったのよね。あの子たちの住んでた、あのおうちに……。
(……って、あらっ?)
はっと目を見開いて、アタシはお椅子の上であたりをきょろきょろ見回す。
何の話だったかしら? これ。
朝ごはんのあと、お気に入りのお椅子でお顔洗いながら考えごとしてたら、ついうとうとしちゃってたみたい。
猫ってほんと、こまめに睡眠とらなきゃなんない生き物なのよねー。
アタシはオダイドコのお椅子から降りて、とことこと東向きの出窓に近づく。
窓辺に飛び乗って、目覚ましがてら窓の向こうの道路を見下ろすと、下の道を歩いてた「小学生」たちがすぐさまアタシに気づいた。
「猫だー!」ってアタシを指差すちびっこたちに、アタシはしゃなりとしっぽを振って「いってらっしゃい」してやる。
大きい子やら小さい子やら、次々に現れるショーガクセーたち。
合間に、窓のそばの電線にとまってるスズメやハトを眺めて、狩りたいなあ、ってちょっと考えたり。
ショーガクセーって、かわいいわよね。あの黄色い帽子と、ムダの多いあったま悪そうな動きがたまらないわ。身体はアタシより大きいから、本気のやつはムリかもしれないけど、ぴこぴこ動くあの脚をたまにがぶっと狩りたくなっちゃう。




