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【Case1】4.「危ない橋」もいろいろ (7)

 思い出して、エレベーター前で境に投げ返されたUSBメモリーを翔馬はポケットから取り出す。


 さっきは焦っていて気づかなかったが、よく見ればこれは、自分が金曜の夜に渡したものとは別のメモリーだ。


(――これはいったい)


 周囲の様子をうかがいながら、翔馬はそれをパソコンに差し込んでみた。ウイルスでも仕込まれていたら、という不安もよぎったが、境がわざわざそんなことをする理由など思いつかない。


 開くと、こちらも中身は議事録データのようだった。表示されているのは、社内用の議事録定型フォームだ。


 すぐさまファイルを開くと、


(……は?)


 翔馬の目の前で、パソコンの画面が真っ白に変わった。


 その中央に数字が浮かび上がり、


「5、4、3……」


 唐突に、カウントダウンが始まる。


(なんだ、これは?)


 議事録用のそっけないテキストファイルのはずが、どうしてこんな。


 不審な画面を閉じる間もなく、「(ゼロ)」の瞬間数字が消えると、今度は画面に、ころころ、とカラフルな卵のイラストが転がってきた。アニメーションだ。

 次の瞬間、はじけるように卵が割れ、中から黄色いヒヨコたちが現れる。


 不審すぎる動きに、慌ててファイルを終了させようとする翔馬だったが、操作は無効化されているらしく、謎のアニメーションは続く。


(……ひょっとして、先輩は俺が、議事録の代わりにこんなものを渡したと思って?)


 混乱しながらも、翔馬はさっきの境の態度に納得していた。

 腹を立てられて当然だ。こんなふざけたファイルを渡したと思われていたのなら。


 ピヨピヨピヨ、と元気よくさえずりながら画面の中を歩き回っていたヒヨコたちが、急に横一列に並ぶと、あっという間に大人の鳥の姿になって、四方に飛び去った。


 と、ふたたび画面に戻ってきた鳥たちが、バン! と青いカードを画面いっぱいに広げる。


「……っ!」


 どうにかファイルを閉じようと四苦八苦する翔馬の前で、カードの上に白字でメッセージが浮かび上がった。



「さかいさんへ

やっぱり、ぶがいひはぶがいひです。

おねがいされたしりょうは、かいはつぶいんでないさかいさんには、おみせできません。

ごめんなさい。

よろしければまた、いっしょにおさけをのみたいです。

ほんごうより」



 書かれているのは、それだけ。


 読み手を、というより、翔馬が境をからかって書いた手紙のような謎の文章に、


「――なんだよこれ」


 翔馬の顔が、首筋まで真っ赤になる。


 一瞬ののち、鮮やかなブルーのカードがふらふらと揺れて、白字で書かれたメッセージが蒸発するように消えたかと思うと、謎の画面は閉じた。




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