運命の瞬間
毎週水曜日と土曜日にアップします。
作者的には自分で書いていて泣いてしまうような物語だと思っています。
文字総数334000文字で完結迄書き終わっているので、良ければご一読ください。
では、何でその様な事が起きていたのかを冷静に考えた。
そもそも、何故デジャヴを見るのか?
何故、未来の記憶を知っているのか?
そう考えると一つの仮説が生まれた。
どこかで読んだ事があった。
生命は時間の概念が存在しないエネルギーである。
だが・・・それが本当だとしたら?
答えは、自らが経験した未来を魂の繋がりによって何かしらの方法で思い出している。
話は変わるが、タイムマシンは創る事が可能か?
答えは創る事は出来ても造る事は不可能だ。
何故なら時間とは生命と直結した力の流れだからだ。
生命の入れ物である肉体は時間と共に朽ち果てて行くが、生命は永遠に不滅。
この世に生を受けた瞬間から生物の全てが未来へと動き始める。
時が止まるのは、死んだ時。過去に戻る事はない。
だからこそ過去に戻ろうとすれば、生命と肉体を切り離さないと滅ぶ事になる。
だが、未来であれば行ける。
何故なら既に生き物は未来へと進んでいるからだ。
一瞬で未来に行けるかどうかは、時間の感覚だけの事。
分かり易く言えば、コールドスリープで肉体の時を止め1000年後に目覚める事が出来れば未来へタイムトラベルした事と同じだ。
本人だけは一瞬の出来事。
さて、問題は過去に行けるかどうか?
先程も話したが、生命そのものであれば可能だ。
問題は、過去に戻った魂の器があるかどうか。
無い場合は、どうなるのか・・・
それが、“金縛り”であり“デジャヴ”が実在する答えなのだ。
過去、何かしらの出来事に強く捕らわれた魂は、現在の生命を守ろうと無意識に過去に戻っている。
要するに金縛りにあった事がある人が良く言う
「おばあちゃんが足元に・・」とか
「おじいちゃんが枕元に・・・」や
「身体の上に女性が乗っていて・・・」などは全て魂の繋がりがある未来の誰か。
夫であり妻であり、祖父祖父母であり、親兄弟であり、そして自分自身なのだ。
だが、残念ながら生命の宿った肉体に魂だけの姿で干渉する事は不可能。
だからこそ質量をもたない無意識=夢に干渉するのだ。
それが、”デジャヴ“の正体であると未来の龍徳は結論したのだ。
成功した未来もあれば、回避したい未来もある。
未来の龍徳は自分が思っている以上に不満があったのだ。
歳を取ればとる程、デジャヴが減ってしまうのは、未来を諦めたり、未来を認めてしまうからに他ならない。
若い時には、こうなりたい!あの様になってみせる!っと夢を見る事が出来るが、歳が40を超えると死に向かって歩きだす。
故に希望に満ちていればいる程、デジャヴが起こりやすいと言えるし、将来、後悔し続ける出来事があった人ほどデジャヴが起きやすい事になる。
そもそも本人の魂が2つある状態が生じれば魂の宿り木である肉体が動かないのは当然なのかも知れない。
未来の自分を心配する場合、その未来に生きている者は、若い姿の自分の魂(幽霊)が見える事になる。
“このまま大人になったらどうなるんだろう“っと言う焦燥感これが強くなると後悔している事と同じなのだ。
では、魂はどうすれば交換する事が出来るのか。
その答えが、動かないはずの肉体でもう一つの魂に触れる
これが、トリガーであった。
そして、未来の龍徳は、ある程度は納得のいく人生を送れるようになった事で今の自分に満足し始めていたのだが、度重なる妻の愚かさに過去の理不尽を無意識に思い出していたのだ。
その結果、偶然にも昔を懐かしむ事が増え、封印していた後悔が呼び起されていたのだ。
だから、金縛りが起こったのだった。
龍徳にとっての人生の最大の転換期となった3月1日。
これは、友達と買い物の約束さえしなければ起きない出来事。
買い物に行かなければ回避出来てしまう位の簡単な事。
自分で考える事が苦手で常に周りの人の動きに合わせてしまう龍徳の最大の後悔だった。
逆にこの出来事があったからこそ、龍徳は大きく成長していく事になるのだが、それでも此処より先の龍徳の人生は壮絶の2文字となる。
凡そ普通の人では想像がつかない人生。
人間は苦労の大きさと数を乗り越えた分成長し強くなると言われるが、あんな思いや経験は2度としたくないというのが本音だ。
どれだけ壮絶だったかと言うと簡単に上げても
付き合っていた女性の死。
暴走族との抗争
ヤクザの抗争に巻き込まれる。
抗争に巻き込まれた親友の死
ホストでNo1
10代で億を超える巨額の富を得る
育てた部下の裏切りにより会社を乗っ取られる。
犯罪者を6回捕まえる。
8回の人命救助
3度の自殺現場の目撃
風浪者の様な生活
努める会社が全て倒産。
上げたらキリがない。
上に述べたものは、全体の1割にも満たない。
未来の友人の一人は、その大半を知っているからこそ龍徳の凄さを知っている。
友人曰く
「こんなに壮絶な人生を送った人は他にいないんじゃないですか?」っと本気で話していた。
龍徳と長年の付き合いがある者でないと間違いなく龍徳の人生経験を信じてもらう事はない。余りにも規格外過ぎて嘘にしか思えないのだ。
当の本人としても異常な結果や経験だと自覚があるが事実は事実。
イメージで言えば普通の人が7回人生をやり直す程の経験をしている様なもの。
単純な引っ越しの回数だけでも28回と異常な数。
それさえも大袈裟だと信じて貰えない。
営業の結果であれば上司から不毛な目に合わされながらも2位に5倍以上の大差を付けて圧倒しているにも拘わらず嫉妬による誹謗中傷を受けてしまう。
成約率は脅威の98%だったと話すとやはり誰も信じなかった。
25年以上の付き合いがある仲間や後輩であれば今では信じてくれるが、彼らも最初の頃は嘘だと思っていたと正直に教えてくれた。
普通の人では想像すら出来ない人生を日常生活の様に過ごしてきた。
兎も角、「苦労は買ってでもしろ」と良く言われたが、しなくても良い苦労はしたくない。
“もし、あの時の出来事が無かったら?”そう思わずにはいられない
その思いが、この奇跡をおこしたのだ。
翌日、まだ熱があると学校を休む。
そして、運命の3月1日。
変装をしてどうなったかを見に出かけた。
双眼鏡を片手にバス停が見える場所で陣取る。
すると・・・
「来た・・・後ろに誰か乗っているな・・・誰だ?」
龍徳の予想では、友人の善行が一人でバス停に来るが、フラフラ蛇行運転をする必要が無くなった事で、事故は起きないと思っていた。
「後ろに乗っているのは・・・見た記憶があるけど・・・誰だっけ・・・」
未来の龍徳にして見れば35年前の記憶。
余程印象に残っていないと覚えていないのも当然だ。
そして、善行がクネクネ蛇行運転を始めた。
「マジか・・・」
その後方では、歩行者信号が点滅を始めた事で加速し始めたトラックの姿が見えた。
そして、運命の瞬間。
善行はトラックに吸い寄せられるように道路を斜行する。
これに驚いたのは勿論トラックの運転手だ。
道路の左側を走行していた自転車が、わざわざトラックが通り過ぎる瞬間に目の前に出たのだから
運転手としても完全に死角からの予想外の行動。
ブレーキを踏んだ瞬間には衝突したのだった。
「うわっ・・・あんな速度で・・・これは死んだんじゃないか?」
どう見ても15メートル以上フッ飛ばされ空中を舞う。
そして、アスファルトに直撃し、転がった距離を入れれば20メートルはくだらない。
自転車はグチャグチャだ。
善行は、記憶と同じで軽いけがで済んだようだ。
バス停横のガソリンスタンドの従業員が駆け寄って行く。
バス停の友達もそれに気が付き集まり始めた。
耳を聳てると会話が聞こえる。
「大丈夫か!今救急車を呼んだからな!」
大人達の慌てる声だ。
その後ろに話しかけて良いかウロウロしているのが、買い物に行く予定だった友達一行。
その中の一人だった末永が声をかける。
「島田!大丈夫か!?」
「・・・・・」
島田の声が聞こえない。
『そりゃあれだけの事故・・・無事な訳がない』
「ほら・・・鏡で自分の顔を見て見ろよ」
『この会話・・・記憶にある・・・確か有り得ない位自分の顔が青かった記憶がある』
それから少しして救急車のサイレンが聞こえて来た。
『これは、どう言う事だ・・・俺の未来は変わったけど・・・未来に起きる出来事は決まっているのか?・・・必ず誰かが肩代わりするって事なのか?』
島田が救急車で運ばれた後、友達たちがどうするのかと思っていたら
「マジでビビった」
「ああ島田無事かな?」
「あの顔色だぜ?死ぬんじゃね」
「人間ってあんな顔色になるんだな・・・。」
「だよな!それ俺も思った。」
「ちょっと気持ち悪かったよね」
「それより買い物どうする?」
「後3分で来るから行こうぜ」
『あいつ等・・・心配何てしてないんだな』
龍徳が入院した時でさえ結局一人しか見舞いには来なかったのだ。
薄情な同級生達である事は、分かっていたが、クラスメイトの一人が目の前で大怪我を居ったにも拘わらず、この様な事を話し合っていたとは考えもしなかった。
龍徳は週明けの3月3日も学校を休むと島田が入院した病院に向かった。
誰からも入院場所を聞いた訳ではないが、自分が入院した病院だと確信があった。
一昨日の出来事から龍徳は仮説を立て始めていた。
本来であれば事故は起きないと思ったが、実際には俺の代わりに島田が事故にあった。
善行は、記憶が曖昧だが、ほぼ同じだと思う。
恐らく、買い物に行く事になっていたメンバーも同じ。
それに・・・倒れた島田に真壁(一緒に買い物に行く予定だった友達)が言ったあの言葉・・・
「島田・・・鏡見て見ろよ・・・本当に真っ青だぞ!?」
あれは、俺の記憶にある言葉と全く同じだった。
まるで、何かに操られているかのようだ・・・。
だが、少し違う点もあったな・・・。
俺は、救急車に乗る事を拒否して起き上がろうとしたから周りの大人達が強引に抑えていたが、島田はピクリとも動かなかった・・・。
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