それでも俺は君しか愛せない
こちらも良ければ読んでくださいね♪
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文字数は少ないですが、出来る限り毎日アップしていこうと思いますので宜しくお願い致します。
「はいOKです!」
「お疲れ様でした~♪」
「じゃ~着替えて次の撮影に入りま~す!」
「はい♪」
某撮影スタジオで、神木グループのアパレル部門のCM撮影に志津音の姿があった。
袖には、それを見守る龍徳の姿がある。
様々な衣装に着替えた志津音の姿に懐かしさを覚えた。
『こうしていると中学生の時を思い出すよ・・・』
それは、仲良くなり始めた頃の記憶。
ショッピングに行くと必ず様々な洋服に着替えては
「これは、どうかなぁ~♪」
「うん♪ とっても似合っている♪」
「エヘヘ♪ じゃ~」
そう言ってカーテンを閉めては着替え直し
「これは?」
「それも似合っているけど、さっきの方が明るく俺は好きかなぁ~♪」
「じゃ~こっちにしよう~っと♪」
「じゃ~こんなのは、どうだろう? 似合うかなぁ~?」
「おぉ~♪ 女性らしさが出て良いよ♪ 超可愛い♪」
「女性らしい方が、龍徳君は良いと思う?」
「どっちも似合っているけど偶には女性らしい志津音とデートしたいかなぁ~♪」
「私の事を女の子と思ってくれているんだぁ~♪」
「当然だろう? 志津音ほど女性らしい人は、そうそういないからね? まぁ~それに気が付かないところも魅力なんだけど♪」
「そ・そっか・・・何か恥ずかしくなってきたかも・・・うぅ・・・」
「その服・・・凄く似合ってるよ♪」
「あんまりジロジロ見ないでよ・・・何か恥ずかしいよ・・・」
「そうは言っても可愛いから見ちゃうよ♪ そうだ♪ クルって一回転してみて♪」
「こ・こ~お?」
腕を畳んでからクルって一回転するとスカートがフワッと広がった。
その姿に龍徳の目が奪われた。
「ど・どうだった?」
「はぁ~何て可愛さだ・・・メロメロだよ♪」
「ふ・ふ~ん・・・そっか♪ フフ♪ 何かこの服好きかも♪」
そして、次の服と毎月2回開かれる龍徳の為だけのファッションショー。
普通の男性は、嫌う人も多いのだろうが、龍徳はこれが好きでたまらなかった。
恥ずかしながらも嬉しそうに微笑む志津音の姿を独占できる。
龍徳の言葉に一喜一憂する彼女を見られるだけで幸せそうに微笑む龍徳がいる。
そんな昔の思い出をダブらせながら志津音の撮影姿に魅入ってしまう。
『フッ・・・余計な思い出は忘れないと・・・』
そんな憂いを帯びた哀愁漂う龍徳の姿を志津音と共に撮影に入っている他のモデル達が「はぁ~何て切ない顔なの~」っと魅入られていた。
「神木グループの社長って話は本当なのかなぁ?」
「それ私も聞いたけど本当らしいよ!」
「あ~ん♪ 誰か気になる人がいるのかなぁ~」
「噂だと志津音さんらしいよ」
「えぇ~そうなのぉ~」
「見てればわかるよ。志津音さんの時の神山社長の表情見て見なよ」
そう言われて良く見ると
志津音以外の女性タレントの撮影の時は、嬉しそうに微笑みを絶やさない。
ところが、志津音の撮影の時だけ愁いを帯びた顔になっている。
同じ様な微笑みを向けているのに志津音の時だけ切ない顔をみせてしまう。
そのギャップにモデル達の胸が締め付けられてしまっていた。
『綺麗だ・・・本当に綺麗になった・・・クッ・・・今すぐ抱きしめたい・・・』
夢にまで見た最愛の女性が目の前にいるのに、その願いは叶えられない。
志津音の母に今の志津音と向き合うとは言ったものの、これ以上志津音を苦しめる事はできない。
触れたくて、大好きだった最愛の女性の微笑み・・・それを想うと柔らかく微笑んでいる龍徳の表情が愁いを帯びてしまう。
龍徳から見た今の志津音は、分かり易く言えば志津音の身体に別の命が宿っている様なもの・・・外見だけが好きなのであれば、こんなに辛い思いをする事はない。
志津音の意志の強さ、優しさ・・・そして龍徳への秘めきれない想いがあって初めて見る事が出来る微笑み。
考え方を変えれば記憶喪失と変わらない。
だが、それでもスキーの時に記憶を失っていた志津音の微笑みは龍徳の知っているものだったのだ。
それが、今は見る事が出来ない。
パッと見は魅了されそうな笑顔も龍徳だけは、偽物に映ってしまう。
愛が深い事が、それを見抜いてしまうのだ。
昔の志津音を知らなかったのであれば、今の志津音に惚れていたのかも知れない。
否・・・それでも龍徳は違和感を覚えたに違いない。
それでも、今の彼女の微笑みを絶やさない様に龍徳は見守り続けた。
志津音が龍徳に向ける偽物の微笑み。
それを見続ける事が、自分の贖罪だと言い聞かせて・・・
その微笑みを見る度に心が抉られる様な痛みが走った。
もう2度と見る事が出来ないかも知れない最愛の人の微笑みを自分が奪ってしまった。
世界で一番幸せにしたかった最愛の女性を一番傷付けてしまった。
健一に聞かされたあのセリフ。
≪生まれて来てごめんなさい≫
この言葉が頭から離れない。
溢れんばかりの命の輝きを自分が奪ってしまった。
彼女の幸せを願う度に臆病になってしまう。
余計な事をして、また志津音を苦しめてしまうのではないか・・・
それを想うと恐怖で足が竦んでしまう。
だが、それでも傍にいたい。
憧れ続けた小学生の頃に戻ったかのように・・・
気軽に声を掛ける事が出来なくても少しでも近くにいたい淡い想い。
それこそウェディングドレスの撮影があれば、それだけは志津音を外してしまう。
自分以外の男と結婚したとしても・・・っと言葉としては・・・否、本気で思ってはいるが、それでも諦めたくない。
撮影と謂えど龍徳以外の男がウェディング姿の志津音の横にいるシーンを見る事に耐えられない。
『お母さんのあのセリフ・・・君はそこにいるのか? 教えてくれよ・・・』
その後も一定の距離を保ったまま誠実に志津音に尽くし続けた。
そして、志津音の母親と健一を志津音に会わせ生活の基盤を東京に移してもらう事が出来た。
健一からは未だに許しては貰えないが、高校を卒業して就職しようと考えていたようだが、本当は大学に行きたいと胸の内が聞けたことで、謝罪の一つとして予備校と大学に係わる費用を龍徳が持つ事を許してもらった。
そうして月日が流れ、志津音と2人きりの食事を重ねれば重ねる程、昔の姿を取り戻していく志津音に惹かれて行った。
徐々にではあるが、今の志津音の中に一瞬だけ見え隠れする思い出の志津音の姿が見えそうな気がしていた。
諦めたくない・・・
俺の愚かな行動で彼女が傷付いた事は分かっている。
それでも諦めたくない・・・。
彼女の中に俺がいなくとも・・・
また彼女を傷付けてしまうかもしれない・・・
自分の我が儘なのは分かっている・・・。
それでも俺は君しか愛せない。




