俺のせい・・・
こちらも良ければ読んでくださいね♪
■「そこにいる君に逢いたくて。」を新しくアップ致しましたので、宜しければご一読ください。
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■「小さな小さな 大冒険!!」続編を開始しましたので、宜しければご一読下さい。
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文字数は少ないですが、出来る限り毎日アップしていこうと思いますので宜しくお願い致します。
「神山社長♪今日も有難うございました♪」
「ああ・・・君はどんどん綺麗になるね。」
「フフ♪お世辞でもうれしいです。」
少し前。
「神木グループのイメージタレントに田中志津音を起用する。」
「「「「「「ハイ!」」」」」」
鶴の一声。
その結果、彼女は現代のコマーシャルクィーンになっていた。
「この後、お食事に行きませんか?」
決まってこのセリフを言う理由は分かっている。
「有難う。嬉しいよ。でも・・・社交辞令は大丈夫だから。」
「社交辞令じゃありませんよ~」
分かっている・・・会社に言われているんだろう?
「ハッハッハ。仕事抜きで誘ってくれる時があれば喜んでお相手させて頂きたいんですけどね。」
「えっと・・・」
「君を困らせるつもりじゃないから。安心して」
「それは、信じられる様になったんですけど・・・でも・・・何でこんなに良くしてくれるんですか?」
「前に話しただろう?」
「それって・・・私の初恋の人が神山社長に似ているって話ですか?」
「そうだし、私の初恋の人も君に良く似ているんだよ」
「前に聞きましたけど・・・その人・・・羨ましいですね♪」
「・・・羨ましい・・・か。」
これまでに分かった事は、彼女は記憶喪失ではない事。
何かしらの心的要因により別人格が表層に現れた所謂2重人格だ。
俺は彼女の為に使うお金を惜しまない。
今まで苦労した全ての未来の分も幸せになって貰いたい。
だから、スポンサーになるだけじゃなく高級マンション、貴金属、ドレスから洋服に至るまで全てプレゼントした。
俺ではない誰かと結婚する事になっても・・・俺は彼女を愛するだろう・・・。
それが、今俺に出来る罪滅ぼしだと信じて・・・。
だが、彼女であって彼女ではない姿を見るのが辛い。
偶に食事をしないと会社に怒られると言うので月に何度かは食事をする。
だが、それだけだ。
これ以上彼女を傷付けたくない。
でも・・・願いが叶うなら・・・もう一度、志津音に触れたい。
もし・・・願いが叶うなら・・・もう一度、あの微笑みを俺に向けて欲しい。
だが、それは望んではいけない。
それでも俺は・・・お前が好きだ。
自分が愚かな事は分かっている・・・だが、それでも命が君を求めてしまう。
少し前の事・・・
まだ、神木商事のイメージタレントとして売り出す前にお祭りに行った事がある。
「社長♪今日はお誘い下さって有難うございます♪」
そう言った彼女は、とても綺麗だった。
振り袖姿が本当に似合っている。
「今日も綺麗だ。」
「フフ♪有難うございます♪」
「本当に・・・綺麗だ。」
「そんなに言われると照れちゃいますね♪」
そういう彼女の頬は赤く染まってもいなかった。
それでも彼女が愛おしい。
子供の頃に彼女と言ったお祭りを思い出す。
「懐かしい・・・」
ふと口から零れた。
「そうですよね♪お祭り何て中学生の頃以来だなぁ~♪」
胸が痛む。
その記憶は俺と言った祭りの記憶だったからだ。
俺であって俺ではない誰かと行った祭りの記憶。
思い出を共有できるのに会話が噛み合わないもどかしさ。
それでも喜んでしまう自分が惨めに思えた。
彼女に触れたい・・・
それは叶わぬ願い。
彼女を抱きしめたい・・・
目の前にいるのに目の前にいない・・・
俺の惚れた彼女に触れて抱きしめたい・・・
だが、それは叶わぬ想い。
あれ程、恋焦がれた女性が横にいるのに俺の手は届く事はない。
それでも志津音と一緒にいる幸せを感じる自分が惨めに感じる。
元の彼女に戻るまで、俺は彼女を守り続ける。
それが、俺の贖罪になると信じて。
志津音の家族の動向を調べていたらお母さんの居場所を見つける事が出来た。
「良く探してくれた!」
「喜んで頂けて嬉しいです。」
この男は、俺が新たに作った探偵事務所の今野正樹だ
「それにしても・・・ここにいたとは・・・」
今野の調べによると志津音の母、典子は現在パートを3つ掛け持ち、弟の健一と2人で生活しているらしい。
「よし、早速行って来る!」
「あまり無理はしないで下さいよ社長!」
「それは約束できないよ木村さん。」
そして3度、訪れた場所・・・それは
「まさか団地に戻っていたとは・・・ここまで未来が変わったから考えもしなかった。」
前回、志津音と出会った団地だ。
ピ~ンポ~ン。
「は~い!どなたですか~?」
懐かしい健一の声が聞こえた。
『少しだけ声が低くなったか?』
ガチャっと玄関が開き健一が姿を顕した。
「久しぶりだな健一・・・背が伸びたな。」
「誰ですか?」
「あれ?分からないか?・・・5年以上あってなかったからな・・・神山だよ・・・神山龍徳・・・覚えてないのか?」
「龍兄・・・なんで・・・」
「お前達が心配で探していたんだ。」
驚き見開かれた健一の目付きが変わる。
「いまさら・・・何しに来たんだよ!!」
「だから心配だったって言ったろう?」
「ふざけんな!あんたのせいで姉ちゃんがおかしくなったんだぞ!!」
「そうか・・・」
「そうか・・・だって?ふざけんなよ!!俺の家族がバラバラになったのも全部あんたのせいだ!! 俺は絶対に許さないからな!!!」
激しい憎悪を龍徳に叩き付ける。
「何があったんだ・・・それを教えてくれないか?」
「そんな事も知らないでぬくぬくと生きてきたあんたなんかに話す事はないんだよ!!」
「頼む・・・本当に分からないんだ・・・この通りだ」
そう言って頭を下げた。
「姉ちゃんをアレだけ傷付けておいて分からないだと・・・」
「スマン・・・この通りだ。」
「だったら教えてやるよ!あんたが大怪我を負った後、東京の病院に転院したんだってな!」
「ああ。」
「木村って人から手紙を貰った姉ちゃんがGWの前に学校を休んで、あんたに逢いに行ったんだぞ!」
「俺に・・・逢いに来た・・・だと? 木村には手紙を出しておくように伝えたから知っているけど・・・来なかったんだ・・・」
「行ったんだよ!」
「本当だ!志津音の記憶が戻ってさえいれば来てくれると信じて待っていた・・・だが、来なかったんだ。」
「まだ!しらばっくれてんのかよ! 二股賭けて仲良さそうに歩いてたそうじゃねえか!!」
「・・・・・どう言う事だ・・・」
「こっちが聞きてぇ~よ!帰って来た姉ちゃんの・・・あんな顔した姉ちゃんを見たのは初めてだった・・・。」
唇を噛みしめて龍徳を睨み付ける。
「姉ちゃんがボソボソ呟いていたよ・・・」
≪龍徳君には2人も綺麗な本当に綺麗な彼女がいたのよ・・・私なんかが入る余地のない彼女さんが・・・バカみたい・・・私・・・一人で浮かれて・・・何期待していたんだろう≫
「ってな!何やってんだよ!それを見せつける為に姉ちゃんを呼びつけたのかよ!!」
「ち・違う・・・俺は・・・!それは俺のリハビリを助けてくれていた女の子の事だ! 間違いない・・・あの頃は満足に一人で歩けなかった・・・」
「そんな事は俺の知ったこっちゃねぇ! 手紙が寄越せるんだったら何で教えておかなかったんだよ!!そっからだよ・・・姉ちゃんがおかしくなっていったのは・・・毎日・・・毎日!自分が嫌い!自分が憎い!自分が愚か!自分なんていなければ良かったって!!毎日・・・毎日だ!!」
「・・・・・」
俺は言葉を失ってしまった。
「部屋に閉じこもって出て来なくなって・・・日に日におかしくなっていく姉ちゃんを心配して父ちゃんと母ちゃんが毎日喧嘩して・・・それを見た姉ちゃんが自分のせいだって・・・生まれて来てごめんなさいって・・・あんたが言わせたんだ!!」
「・・・・・」
言葉が見つからない。
「あんなに明るかった姉ちゃんが・・・生まれて来てごめんなさい・・だぞ? ふざけんな! どんな仕打ちをすれば、そんな言葉が出るんだよ!!」
『志津音を苦しめたのは俺だって分かっていた・・・つもりだったのか・・・』
予想を超えた現実に息が上手く吸えない。
「日に日に夫婦喧嘩が悪化して・・・何なんだよ!あんた何がしたかったんだよ!!俺の家族を引っ掻き回すなよ!!」
フゥー、フゥーっと息遣いを荒立て捲し立てる。
「俺は・・・そんなつもりは・・・」
「あんたに、そんなつもりがあろうがなかろうが、実際にウチの親は離婚したんだよ!!姉ちゃんは部屋に閉じこもって返事もしないし・・・高校も辞めて・・・どっかに消えたって俺だって後から友達に聞かされたんだよ!!」
「俺のせい・・・」
「そうだよ!偶然グラビアアイドルの雑誌で姉ちゃんを見つけて、逢いに行ったら・・・誰だよあの人!!あんなの俺の姉ちゃんじゃねえよ!!知ってんのかよ!!・・・別人じゃん
・・・姉ちゃん・・・俺を見て・・・健一君って言ったんだぜ・・・誰なんだよ・・・あの人は・・・誰なんだよ・・・教えてくれよ・・・なぁ~!!!!」
「分かっている・・・俺も志津音に逢えた・・・。彼女の幸せは俺が守って見せる。」
「遅い・・・遅いよ・・・何でもっと早く来てくれなかったんだよ・・・姉ちゃんが言ってたよ・・・」
≪龍徳君は私が助けてって願うと絶対に来てくれる不思議な人なの♪≫
「スゲェ~幸せそうな顔で、俺に自慢する様に・・・自分の事の様に喜んで・・・そう俺に言ったんだ・・・狂っていく姉ちゃんが夜な夜な魘されて・・・
≪助けて・・・龍徳君・・・助けて・・・行かないで・・・≫
「って何度も・・・何度も!! 出来ないなら約束すんなよ!! まだまともだった姉ちゃんの最後の言葉がそれだぞ!! もう二度と来ないでくれ!!!」
ガチャ~ンっと扉が閉ざされた。




