俺が見間違える訳がない
こちらも良ければ読んでくださいね♪
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文字数は少ないですが、出来る限り毎日アップしていこうと思いますので宜しくお願い致します。
ピ~ンポ~ン。
心臓の動悸がヤバい事になっている。
ピ~ンポ~ン。
まだ早過ぎたのだろうか・・・
当たりを見渡すと人の姿がチラホラ。
「早いって訳じゃないよな・・・」
その後も何度もチャイムを鳴らすが応答がない。
すると横の住人がちょうど出てきたので話を聞く事にした。
「申し訳ありません。ここにお住いの鈴木さんに会いに来たんですが、今日はご不在なんですか?」
当たり障りのない聞き方だったのに隣のご婦人が訝しげな眼で俺を見た。
なんだ・・・俺の背中に冷たい汗がつたう。
「とっくに引っ越しちまったよぉ~」
「はぁ?」
「あんれ~お兄さん知らんかったけ~?」
「な・なんで・・・」
話を聞くと
俺がケガを負ったスキーの後の事になる。
時期で言うなら俺が高2のGW当たりの話のようだ。
そこから家族間がぎくしゃくし始めて1年前には引っ越したそうだ。
どこに行ったのか知っているかと聞いたが、知らなかった。
「どうなっている・・・また未来が変わったって言うのか・・・」
これじゃ何のために今まで我慢してきたのか・・・
気が付くと自分の唇から血が零れ落ちていた。
「何なんだ・・・おかしいだろう・・・俺は未来の志津音本人から聞いたんだぞ!?」
“高校の卒業と同時に家を出た“間違いなく彼女はそう言ったんだ・・・。
「なのに1年以上前に全員いないって・・・どう言う事だよ!!」
時間いっぱい他にも調べたが、結局手掛かりがつかめなかった。
「慌てるな・・・まだチャンスはあるはずだ・・・」
そう。彼女は20歳の時に千葉の団地に引っ越しているはずだ。
そう自分に言い聞かせ新潟を後にした。
志津音に会える事を楽しみに・・・
ただ、それだけを楽しみに生きてきたと言っても過言ではない。
逢えなかった事が龍徳の心に穴を開けていた。
「やる気が出ない・・・」
先日、卒業式を終えたばかりだ。
ある程度は、後輩や同級生にリップサービスをするつもりだったが、誰と何の話をしたのか記憶がない。
心ここにあらず
心配した龍徳の女達があの手この手を使って元気付けようとするが龍徳の目の輝きが消えてしまった。
それ程、志津音の存在は龍徳に取って大きい。
彼女だけは他の女と一線をかくす。
それはそうだろう・・・何度人生を繰り返しても命が引かれてしまう。
同じ時を過ごせば過ごす程、惚れ続ける事が出来る女性など居るはずもない。
しかし、龍徳は老後となった志津音にさえも恋してしまった。
今であれば望や静音と別れたとすれば少しはセンチメンタルな気持ちにはなるかも知れないが、胸に穴が開くほどの喪失感は有り得ない。
他の誰かが1000人集まって龍徳を喜ばせようと志津音の笑顔には勝てない。
彼女がいるだけで、それ以上の幸せが存在しない。
あのスキーの事故から2年も我慢した。
実際1日・・・否、1分でさえ我慢の限界だった。
2年後に団地にいると分かっていてもこれ以上我慢できない。
当然だ・・・2回目の人生で志津音の死。
悔やんでも、悔やんでも悔やみきれない辛さを何年も経験した上での、この2年間だったのだから。
余計な事をして彼女を傷付ける位なら自分が発狂した方が良いと覚悟を決めた2年間だったのだ。
大学に通うも覇気がない。
そんな状態でも無意識に努力をしてしまう自分に気が付いた。
「ハハハ・・・そうだよな・・・俺の命は分かっているのか・・・分かったよ・・・そうだよな・・・こんな俺の姿なんて志津音に見せられないよな・・・」
そう呟くと龍徳の目に光が戻り始めて行く
「そうだよな・・・ダメダメな俺が彼女の横を歩くには努力しないと・・・」
そして姿勢を伸ばすと顔付が戻る。
「負けてたまるか・・・今度こそ会うんだ・・・2年も待ってられるか!!下を向くのはまだ早い!!」
完全に以前の目の輝きを取り戻したようだ。
洗面所に行き鏡に映った自分の姿を見る。
「ハハ・・・酷い顔だ・・・龍徳よぉ~・・・ホレた女にそんな顔を見せるつもりだったのかよ・・・馬鹿か俺は!!! 時間を無駄にした・・・」
ボサボサに伸びた髪を掴むとハサミで次々に切って行く。
髭を剃って鏡に手を付く
「待たせたな相棒・・・だらしない俺の代わりに頑張ってくれていたんだな・・・今まで悪かったな・・・だが!もう大丈夫だ!!」
それからの龍徳は凄まじかった。
今まで無駄にした時間を取り戻すかのように全てに全力を尽くす。
そこで改めて望、静音、詩織、加奈の存在の有難さを理解した。
彼女達はスッカリ人が変わった龍徳を変わらず愛し続けてくれていたのだ。
苦しんでいる龍徳を見て同じ様に自分達も苦しかった。
悲しんでいる龍徳を見るのが何よりも悲しい。
完全復活した龍徳を見て全員が涙を流して喜んだ。
たったそれだけの事なのに彼女達は本当に幸せな笑顔を龍徳に見せたのだ。
彼女が出来るまでの女。
互いに納得している話だが、望と静音には家族の様な感情さえ抱き始めていた。
実際、望だけでなく静音にも大金の入った通帳をプレゼントしていた。
『志津音!俺は・・・ここにいる! いるんだろうそこに!!』
今までは、社員に任せていたコマーシャルの打ち合わせにも積極的に参加する。
『どうせ未来が変わるなら・・・恐れてたまるか!!』
今までは、出来る限り露出を避ける為に芸能界には触れないようにしていたが、マスメディアの情報力は突出している。
自分が芸能界に入る事は考えていないが、それでもどこかのタイミングで探し人を扱って貰えるかもしれない。
その為、タレントにもどんどん接触を試みた。
今や日本で知らない人がいないと言っても過言ではなくなった神木グループの最高責任者が、こんな若いと業界は驚いたようだ。
基本的には、顔バレNGにしてあるので、普通に生活するのには何の問題もない。
そして、1991年3月バブル景気の終わりが始まった。
ここから2年かけて日本は最悪な時代へと突入していく。
いつまでも続くと思われていた泡の上に存在した経済が弾けた。
この年から2年間の間にいったいどれ程の企業が倒産したのか・・・
だが、龍徳の会社は何の被害もないどころか投資事業だけは圧倒的な成長を遂げていた。
学業と仕事に全てを注ぎあっと言う間に1年が過ぎた。
龍徳が19歳となり大学2年生になった4月の事だった。
「神山社長!」
「ああ松本君。いつも良いタレント紹介して貰って助かってるよ。」
「滅相もありません。」
「それで今日はどうされたんですか?」
「お願いに参ったのですが、この度弊社に新しい女優が入りましてね。」
「ハハ・・・その女優さんを使って欲しいって事かな?」
「流石、神山社長ご明察、恐れ入ります。」
「おべっかはいらないよ。で?どうせ連れてきているんだろう?」
「いや~全部お見通しですか」
「それで?今回の女優さんはどんな子なんだい?」
「デビューしたのは去年なんですがね。グラビアアイドルとして人気が上がって来ておりまして、そろそろ本格的なドラマか映画のオーディションを受けさせようと思って、半年間のレッスンを終えたところですね。」
「ふ~ん。話は分かったよ。」
「では、連れて来ても宜しいでしょうか?」
「ああ構わない。が、余り時間は取れないぞ。」
「分かっております。」
そう言って連れてきた女優に俺の時間が止まってしまった。
「ホラ挨拶して。」
「神山社長、今日はお忙しいところお時間を頂き有難うございます♪ 田中志津音と申します。精一杯頑張りますので宜しくお願い致します♪」
「な・・・なんで・・・」
何だこの違和感のある体型は・・・だけど・・・俺が見間違える訳がない・・
泣きボクロもある・・・まちがいない・・・
「あの・・・どこかでお会いしましたか?」
「志津音・・・だよな?」
「はい♪ 田中志津音19歳です♪」
「違う・・・そうじゃなくって・・・鈴木志津音の間違いじゃないのか?」
「わぁ~嬉しいです♪ 私の以前の名字までご存知頂いているとは恐縮しちゃうな♪」
なんだ・・・これは・・・
「演技・・・だよな?」
「へへ♪ 一応演技の練習はしているんですけどまだそれ程じゃありません。」
「ま・松本君・・・この子とジックリ話をしたいんだが」
そう伝えるとコソコソと龍徳の傍に行き小さな声でこうつぶやいた。
「お気に召して頂けたようで、お任せください社長!宜しければお持ち帰り頂いても大丈夫ですので!」
「な・何を言っているんだ?」
「大丈夫です!絶対外にはバレませんし本人の了承も得ていますから!」
「意味が分からんが、兎に角、時間を貰えるなら助かる。」
「お任せください!少々お待ちください。」
そう言って龍徳から離れ志津音を何かを話し合っている。
「OKです社長! 今日はお泊りOKだそうです!」
「泊りがOK? 良く分からんが・・・なんにしても良いんだな?」
「もちろんです♪ ホラ!社長をエスコートして!」
「はい♪ 今日は私とお話して下さるそうで有難うございます♪」
「ああ・・・当然だろう?」
「わぁ~こんな素敵な社長様にそこまで言われたら嬉しいな♪」
何なんだ・・・このぎこちない違和感は・・・周りに人がいるからなのか?
「社長!お話するならホテルが良いですからね!」
なるほど・・・確かに売り出そうとしているなら理由は兎も角・・・
「分かった。」
「では、心行くまでお楽しみください。」
「そうだな・・・楽しみだ。」
「まぁ・・・そんなハッキリ恥ずかしいです・・・。」
何なんだ・・・気持ちが悪い・・・
そして、自分のホテルの最上階に静音を連れて行く。
「わぁ~凄~い♪」
「志津音に見せたくて買い取ったホテルだ・・・。」
「まぁ~初対面なのに嬉しいです♪」
「志津音・・・そろそろ・・・その仮面を取ってくれないか?」
俺が何かしたのか? それとも・・・何か理由があるのか?
その龍徳の言葉に恥ずかしそうに頬を染める。
「はい・・・」
そう言って身に付けていたドレスをストンと落とした。
「優しくしてください・・・。」
そこには下着姿の志津音がいた。
だが、龍徳には違和感が残る。
志津音の魅力の一つは健康的なプロポーション。その肉体から迸るエネルギーが顔に現れていたからこそ爽やかな優しい微笑みなのだ。
だが、今はスタイルこそ悪い訳ではないのだが、以前よりもふくよかな胸に異常に括れたウェスト・・・これではまるで男に媚を売る為にある様な身体だ。
「な・・・何をやっているんだ・・・」
『夢じゃないのか・・・何がどうなっているんだ・・・』
すると
「申し訳ありません。」
そう言って裸のまま龍徳に迫ると龍徳の服を脱がし始めた。
「これなら・・・どうですか?」
「ちょっと待ってくれ・・・一体・・・何の冗談なんだよ志津音・・・。」
「冗談ではありません。私・・・本気ですから!」
そう言って脱がした龍徳の胸にキスをする。




