桃花先輩
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文字数は少ないですが、出来る限り毎日アップしていこうと思いますので宜しくお願い致します。
夏が終わり、想いを引きずる事なく龍徳の新学期が始まった。
未だに週一回のペースでリハビリに行ってはいるが、ほぼ完治したと言っていいほど回復していた。
いつもと変わらないメンツと時間を共有する中、いくつかの出会いや切ない別れがあったが、それはまた別の機会だ。
そんな中でも、話は遡るが、俺のリハビリ中にあった一人の後輩の話をしておこう。
俺は、これでも男の後輩から尊敬されている。
まぁ~大半が恋愛相談的なものだが・・・
その中の1年下の後輩に山中雄大と言う男がいる。
此奴は野球部のエースで4番という漫画の世界の様な奴だ。
俺の高校は野球部が強い訳ではないが、それでも彼は本気でプロを目指している。
本気で努力をしている奴は好きだ。
昼時を偶に学食で済ます時があるが、俺を見かけると必ずやって来る。
話を聞いたら今年の夏の大会で県大会の準々決勝で負けたそうだ。
何で野球部でもない俺をここまで慕うかというと俺が1年生の時に野球部の助っ人として何度か練習に混ざった事があるからだ。
高2は大怪我を負ったので、雄大との接点はなかったのだが、監督が偶には顔を出せと声を掛けてくれた為、ちょうど大怪我を負った俺としてもリハビリの一環と思って、8月から週に一回練習に参加させて貰う事があった。
その時に悩んでいた雄大に志津音の弟の健一を思い出し放っておくことが出来なかった俺から声を掛けた。
「神山先輩マジスゲェ~・・・」
「左だからまだまだだけどな・・・」
雄大は県大会の準々決勝でマウンドに上がったが自分のせいで負けたと悩んでいた。
「いやいや・・・左手で120㎞とヤバいっすよ?」
「右が使えればなぁ~・・・痛っ・・・」
「無理はダメっス!」
「そうだな。後10日位は安静にしないと・・・」
「異常な回復力っすね・・・」
「取り敢えず雄大のピッチングも見たけどもう少し肘と肩を柔らかくした方が良いな。」
「やっぱり固いですかね?」
「固すぎ! 今の俺は右肩は無理だけど・・・俺の左手を持って動かしてみろ!」
「失礼します。・・・」
そう言って俺の左肩の関節可動域を調べ始める。
「マジか・・・メチャクチャ柔かいっスね・・・ここまでくんの? スゲェ~・・・」
「どうだ? 柔らかいだろう? ついでに手首も指もどこもかしこも柔らかい方が良い。」
「分かりました!俺ストレッチ強化します!」
そうして、一月、二月と過ぎていく中、持ち前の根性で雄大の身体がかなり柔らかくなった。
「神山先輩のアドバイス通りやってたら球速が10㎞も速くなりましたよ!」
そう言って投げた雄大は130㎞もの速球が投げられるようになっていた。
この頃には、軽くであれば右でも投げられる様になっていた俺は時速90㎞程しかなかったが、左は125㎞を超える様になっていた。
「う~ん・・・やっぱり右とは感覚が違うな・・・」
「マジ勘弁して下さい。野球部じゃない・・・しかも逆手で投げて俺と5㎞しか違わないって・・・右で投げたら何キロで投げられるんスか?」
「どうかな?忘れた♪」
「そうだ!この前、バッピやってた嶋中先輩が、あの後泣いてましたよ。」
「あ~あいつな♪ やけに絡んでくるからツイ・・・な♪」
それは、一年前の話になるが、野球部でもない俺が参加する事に反対だった同級生だ。
ある意味、中学生の頃を思い出すようなタイプだったので、本気で相手の心を砕こうと2球に1球はスタンドに運んでやった。
普通なら打ちやすいボールを投げるのに俺の時だけ本気で投げるからイラっとしてつい本気で打ってしまった。
嶋中が嫌がらせするのには、もう一つ理由があって俺が2年生の時に1学年上の田辺桃花先輩と言うマドンナ的な野球部のマネージャーが俺の事を好きだと告白したからだ。
「神山君ちょっと良いかな?」
「どうしたんですか?」
練習が終わりロッカーに向かう途中に声を掛けられた。
ついて来てと言われて道具入れの部屋に入ると話し始めた。
「あのね・・・神山君て年上は好きなのかなぁ~って思って・・・」
『ふむ・・・先輩方と上手く付き合えてないって言いたいのか? そんなに気にしてないし、俺からすれば全員ガキみたいなもんだからなぁ・・・』
「たかが1歳や2歳程度は年下にしか思ってないですね。」
「年下? アハ♪ そうなんだ♪ そっか♪」
「この頃、良く話しかけてくれると思ってましたけど、心配してくれなくても大丈夫ですよ♪ それより先輩は自分の方を心配した方が良いと思いますよ?」
「別に心配して話しかけてた訳じゃ・・・ん? 私の心配? 何の事?」
「先輩に彼氏がいるのかは知らないですけど、みんな先輩の事を狙ってるんですから彼氏がいるなら早めに伝えた方が良いですよ?」
「私に彼氏?アハハハハ♪ いないよそんな人♪」
「男に興味がないなら仕方がないですけど先輩はモテるからてっきり彼氏がいるのかと思ってました。」
「神山君は私に彼氏がいると思ってたんだ。」
「ん~そうですね~先輩可愛いからいると思ってましたね。」
「か・可愛い? そ・そうなんだ・・・」
「クス♪ 他の女の子達より一生懸命に頑張っている先輩は野球部のマドンナの様なもんですから♪」
「そんな事はないよ~」
「何にしても来年引退したら告白するって先輩方も言っていましたから他の運動部も同じだと思いますよ? もし先輩に好きな人がいるなら先に告白しないと他の人に取られちゃいますよ?」
「そ・そう言う神山君はどうなの?」
「どうなのって?」
「その・・・今、付き合っている人とかいないの?」
「付き合っている人か・・・今はいませんね・・・」
そう言われて志津音を思い出すが、形としては付き合っている訳ではない。
高校を卒業するまでは、普通の高校生生活を出来る限り送ろうしている限り、自分に言い聞かせる様に返事を返す。
「フ~ン・・・そっか♪・・・じゃ~・・・私と付き合ってみたりする?」
恥ずかしそうにテレを隠すかのような告白。
「クスクス♪ 先輩みたいな可愛い人から告白されたら嬉しいけど俺には先輩は勿体ないよ♪」
「そんな事はないよ!」
「あれ?もしかして本気で言ってます?」
「当たり前じゃない・・・」
カァ~っと顔を赤く染めて龍徳を見つめる。
「そっか・・・参ったな・・・」
「いや・・・その先は言わないで・・・返事はしなくて良いから・・・」
「でも・・・」
「お願い・・・」
「ふぅ~・・・先輩は俺のどこが良いんですか?」
「どこがって・・・神山君が入学した時から見てたから・・・」
「そっか・・・でも俺の事そんなにしらないでしょう?」
「少なくとも貴方が優しくて努力家だって事は知ってる。」
「はぁ・・・野球部の中にもいっぱいいますよ?」
「ううん・・・もう自分の気持ちを誤魔化せないの・・・気が付くと私は神山君を目で追っているの・・・さっきもそう・・・グラウンドの端にいる神山君を探してしまう・・・」
『参ったな・・・雄大の件があるからスパッと切る訳にいかないか・・・』
「えっと・・・悪いけど俺は先輩の事をそんな風には見れないって言うか・・・」
「良いの・・・今は・・・ただ、私が神山君の事を好きだって事を知っていて欲しかっただけだから・・・」
「俺なんか止めた方が良いよ・・・桃花先輩にそこまで言われて返事が出来ない。 桃花先輩はモテるんだから・・・」
そこまで話すと
「無理よ・・・貴方が好きなの! 寝ても覚めても神山君が頭から離れないの! 今日のスコアブックにね・・・気が付いたら神山龍徳って名前にハートマークを書いてる自分がいたの・・・自分の気持ちに気が付いてから・・・抑えられないのよ・・・」
『この手のタイプは嫌われる様に持って行った方が良いな・・・』
「悪いが俺は先輩が思っている様な男じゃないんだ。 あんたがどう思っているか知らないけど俺は碌な奴じゃない!」
「そんな事ない! 神山君は紳士的で優しいもの!」
「へぇ~だったら俺がどう言う男か教えてやるよ!」
そう言って桃花の肩を掴んで壁に押し付けた。
「なに・・・何するの・・・」
「俺が優しいだ? 可愛い女がいたら手を出すような男だぞ?」
そして、桃花の目の前まで顔を近づけた。
「やだ・・・」
「クックック・・・気が付くのが遅せ~んだよ・・・」
そして、桃花の唇ギリギリのところで止めた。
「はぁはぁはぁ・・・」
「怖かったよな? 今、俺以外の男の顔が頭に過ったなら、そいつが先輩の本当に好きな奴だ。」
「だったら神山君だった・・・」
「あれ?」
「キスしてくれるかと思ったのに・・・」
「ヤダって言ったよな?」
「だって、息がかかる程近い距離に神山君がいるんだもの・・・私の息も掛かってると思ったら恥ずかしいもの・・・」
『ヤバい・・・初心な人だと思って間違えた・・・』
どうしたら良いものかと黙っていると
「良いよ・・・神山君なら・・・」
そう言って龍徳を抱きしめる。
「なっ!」
「神山君・・・ドキドキしてる・・・」
「ち・違う!」
「違くない・・・ほら・・・私もドキドキしてるもん・・・」
桃花が龍徳の手を取って自分の胸に龍徳の手を当てる。
「なぁ~!!ちょっと落ち着け!」
「無理・・・さっきから胸が張り裂けそう・・・」
「先輩!一旦離れましょう! だから手を放して・・・」
「嫌よ・・・それに・・・桃花って呼んで。」
『ヤバい・・・地雷を踏んじまった!』
最初の人生でも龍徳が一番苦手としたタイプだ。
全ての出来事を自分の都合の良い方に捉えるタイプの女性。
恋は盲目と言うが、そんな生易しい物ではない。
何を言おうが何をしようが龍徳の事を良い様に捉えるから質が悪い。
この手のタイプの女性は一歩間違えるとストーカーに発展する事を龍徳は覚えている。
「桃花先輩? その俺は好きな人がいるんだ・・・だから先輩の気持ちに応える事はできない。」
「・・・・・」
何故かツーンっと反応しない。
「先輩聞いてます?」
「・・・って・・・くれなきゃ・・・」
「何ですか?聞こえない・・・何て言ったんです?」
「桃花って呼んでくれなきゃ返事しない」
「取り敢えず一旦手を放して下さい! 誰かに見られたらどうするんですか?」
「・・・・・」
「はぁ~・・・桃花・・・」
「うん♪なあに神山君♪」
「取り敢えず手を放してくれる?」
「嫌!」
「兎に角離れて~・・・誰かに見られたら先輩に迷惑がかかるから~!!
桃花の顔を手で押さえて引き離そうとするが梃子でも動かない。
「フフ♪これでも中学生までは野球をやってたから♪ 腕力には自信があるの♪ だからキスしてくれるまで話さないから♪」