誕生日プレゼント
「梓・・・君のゴールは何だ?」
「私のゴール・・・」
「人は目標を持つから努力が出来るんだ。明確に持たなくったって、それなりに楽しむ事も出来るだろう。でも行き先が分からない船に乗っても目的地に着く事は有り得ない。」
「行き先が分からないから目的地に着かないか・・・」
「もう一度聞くよ? 君は何の為に家出をしたんだい? そこに何かしらの意図があって正しく進んでいると胸を張れるか? 小さい時から努力し続けた君は、マグロと同じだ。」
「マグロ?」
「そうマグロだ。泳ぎ続けていないと死んでしまう。だからこそ一度シッカリと足元を見た方が良い。努力し続ける事は素晴らし事だよ、でもね?その努力は自分が決めた目標へと向かっていると胸を張れるかい?」
「私の努力・・・目標か~・・・そう言えば親に言われた事をやればって思っていただけだったなぁ~・・・自分で決めた目標ってなかったかも・・・」
「クス♪ 君は本当に素直な子だ♪ まだ時間はある。先ずは梓がどうしたいのか。それをシッカリ見つけてごらん♪」
「私がどうしたいのか・・・か~・・・うん♪ 私逃げていただけだった! そうだよね! これじゃ~意味のない行動だよね!」
意味のない家出、それではダメだと龍徳は諭したのだ。
「まだ間に合うよ♪ 君なら出来るよ♪」
「ん~ウフフ♪ 何か嬉しいかも♪ 今はまだ、どうしていいか分からないけど・・・必ず答えを出すから・・・それまでは、ここにいても良いかな?」
「ああ♪ もちろんだ♪」
「ありがとう♪龍徳さん♪ 私甘えてた・・・見ててね!」
『頑張れ梓・・・』
その事があってからの梓の顔付が変わっていった。
龍徳からすればであった時の梓の顔には「助けて」っと書いてあった。
力のない自分じゃどうする事も出来ない・・・だから誰か助けてっと・・・
それが、今では自分の人生は自分で切り開くっと顔に書いてあるような感じになっている。
『根が真面目だからなぁ~目標さえ間違わなければ・・・こうなるよな・・・』
我が子でも見るかの様な目で梓を見つめる龍徳の顔が優しく微笑む。
「あぁ~今日も帰ってこないのかぁ~・・・何だろう・・・早く日曜日にならないかな・・・」
今までは、龍徳を見返したかっただけだった。
「こんなんじゃダメだ! やるべき事をやらないと! 龍徳さんに認めて貰えない!」
そう言って今の自分に出来る事にチャレンジしていく。
「なんだろう・・・早く龍徳さんに逢いたい・・・」
トクン・・・
「フフ♪ 何か良いな・・・こう言うの・・・」
トクン・・・
「ん~・・・胸が・・・あれ?何ともないな・・・やっぱり一人だと寂しいよぉ~文句言われても良いから龍徳さんと話がしたいなぁ~・・・」
トクン・・・
「まただ・・・胸が・・・んん?・・・なんだろう・・・龍徳さん?」
トクン・・・
「うぅ~ 胸が~なんか変! こんなんじゃダメだ! 頑張るぞ梓!」
そんな事を繰り返し気が付くと夏が終わろうとしていた。
「ただいまぁ~♪」
その声にドタバタと足音が聞こえると慌てた梓がやってきた。
「お帰りなさい♪ どうしたの今日は?随分早かったね? まだお昼だよ?」
「仕事がある程度片付いたからな♪ 偶には梓と出かけようと思ってな♪」
爽やかな笑顔を梓に向ける。
「あぅ・・・ほ・本当に?」
初めてそんな事を言われ照れてしまう。
「ああ♪ いつも掃除と食事を作って貰っているご褒美だ♪」
「やった~♪ ねえねえ!どこ行くの?」
「すぐ出られるか?」
「うん♪ 直ぐ準備するね♪」
ものすごい勢いで準備を終えると龍徳と外に出た。
「それで、何処に行くの?」
「クスクス♪ 黙ってついて来い♪」
「は~い♪」
そして、梓がまだ昼食を取っていないと言っていたので、築地で一緒にお寿司を食べた。
「美味しい~♪ こんなに美味しいお寿司初めて食べたぁ~♪」
「ほら♪ 口元にご飯粒が付いてるぞ♪」
「えぇ~どこ~?」
そう言って梓の口元のご飯粒を龍徳が指で摘まんで自分で食べた。
「ここだよ♪」
「はぅ・・・」
『恥ずかしい~』
「クスクス♪」
照れている梓を見る龍徳の顔は優しさに溢れている。
「これってデート見たいだね♪」
「デートだそ?」
「そ・そうなんだ・・・アハ、アハ、アハハ・・・」
『ニャァ~!! この人は何で、そう言う事を恥ずかしげもなく言えるのよぉ~!!!! もぅ~!!意識しちゃうじゃん!!』
食事を終えて銀座まで足を延ばすと向かった先は・・・
「ねえねえ・・・こんな場所・・・何しに来たの? 場違い感が半端ないんだけど・・・」
「気にするな♪」
そして最初に入ったのは、有名な高級ブティック。
ドギマギしている梓は借りてきたマネキンの様に次々と洋服を宛がわれては着替え、気が付いたら立派な女性の姿になっていた。
「ひゃ~これ私? 髪形迄・・・いつの間に・・・」
「クスクス♪ 馬子にも衣裳ってやつだな♪」
「ブ~・・・そんな事分かってるもん!」
「そんなにブーたれると良い女が台無しだぞ?」
「えっ?・・・今なんて・・・」
「ほら!次行くぞ!」
そう言って踵を返して外に出てしまう。
「えっ・・・ちょ・ちょっと待ってよぉ~!」
次に向かった先はジュエリーショップ。
「はぁ~キレイ~ って!高っ! いち・じゅう・ひゃく・せん・まん・・・ヒィ~場違い感が半端ないんだけど・・・」
小さな指輪が目に入り値段を見たら86万円と書いてある。
隣に目を向ければ、どれもかれもが100万円以上の宝石ばかり。
「まぁ~見れただけでも眼福、眼福♪」
別々に行動していた龍徳が梓に声を掛ける。
「流石にお子ちゃまには、早過ぎる場所だったな♪」
「フ~ンだ! そんな事分かってるもんね~っだ!」
ベーっと舌を出して目を瞑る。
『クスクス♪ 本当に可愛い奴♪』
そのまま宝飾店を出ると休憩がてらに前にあるカフェに入った。
「はぁ~楽しかったぁ~♪」
ニコニコと無邪気な顔を龍徳に向ける。
「楽しかったか?」
「うん♪ でも~こんな素敵な服を買って貰っても良かったの?」
「だから言っただろう?ご褒美だって♪ 嬉しくないなら捨てて良いぞ?」
「なっ!そんな事言ってないもん! 捨てないからね!」
「クスクス♪ そっか♪ 気に入って貰えたなら嬉しいよ♪」
本当に嬉しそうに梓を見つめる。
「うぅ・・・ズルいなぁ~その笑顔・・・」
『なんかずっとドキドキするんだけど・・・顔が熱い・・・』
恥ずかし過ぎて龍徳から顔を背けて赤く染まった自分の頬を両手で押さえてしまう。
すると龍徳がポケットの中から箱を2つ取り出した。
「梓・・・お誕生日おめでとう♪」
その言葉に顔を背けたまま驚きゆっくりと龍徳に向き直る。
『えっ・・・私誕生日・・・言ったっけ?』
龍徳を見ると指輪の入ったケースを開いてちょうど指輪を取り出すところだった。
「何驚いてんだ? ほら!指を出せ!」
「う・うん・・・」
オドオドと龍徳に手を差し出すと龍徳が梓の右手を取って薬指に指輪をはめた。
「ひゃ~・・・な・何か照れちゃうよ・・・」
「うん♪ ピッタリだな♪」
「何で私の指のサイズ知ってるの?」
「さあな♪ それよりもう少しこっちに来い!」
そう言ってもう一つの箱を開ける。
「ひゃ・ヒャイ・・・」
近寄った梓の髪をかき上げて耳を出す。
「な・な・・・うぅ~・・・」
恥ずかし過ぎて目を瞑る梓の両耳にイヤリングを付けて上げた。
『ヒィ~近い・・・ドキドキする~・・・ヒィ~み・耳に触れた・・・ヒャ~・・・』
「うん・・・良く似合ってるよ♪」
そう言われてユックリ目を開き自分の指に嵌った指輪を見る。
「これ・・・ペリドットだ・・・」
『私の誕生石だ・・・』
ポォ~っとした顔で龍徳を見ると何とも言えない優しい微笑みを向けていた。
「・・・・・」
『何でそんなに優しい顔を向けてくれるんだろう・・・』
トクン・・・
「その顔好きだなぁ~・・・」
思っていた事がウッカリ声に出てしまう。
「プハッ♪ 梓・・・思っている事が声に出てるぞ?」
「へっ? 私今何か言った?」
「クスクス♪ ああ♪ 龍徳さんが大好きって言ってた♪」
「なっ! そんな事言ってないもん! その表情が好きって思っただけだもん!! あっ・・・ち・違うもん! そう言うんじゃないし!!」
「ブフッ・・・プッ・・・クッ・・・ブフッ・・・」
「何笑いを我慢してるのよ! 笑いたければ笑えば良いじゃん!」
「だ・大丈・・・ブフッ・・・」
「また馬鹿にして~! どうせ私はお子ちゃまだもんね!」
「はぁ~苦しかった・・・クスクス♪ 梓は可愛いな♪ 素直で誠実で・・・本当に魅力的な女性だと思うよ♪」
「はぅ・・・また馬鹿にしてる・・・」
「してないよ♪ 出会った時とは見違えるほど綺麗になったよ・・・」
そう囁く龍徳の表情は優しさに満ちている。
「あぅ・・・あ・ありがとう・・・」
「梓、18歳の誕生日おめでとう♪」
「うん♪ 嬉しい♪」
『ヤバい! 顔が勝手にニヤニヤしちゃう!・・・もぅ~この人・・・人を喜ばせる天才なの? 嬉し過ぎる♪』
そして、食材は準備が終わっていると梓が言ったので、移動で使っていたハイヤーをマンションの手前で止めて2人で歩いてデートの続きを楽しんだ。
陽が沈む公園を横切り歩いていると
「もぅ~歩くのが速い~ぃ!! ヒールだからそんなに早く歩けないよぉ~!」
「仕方がないな~・・・ほら♪ これなら良いか?」
そう言って梓の腰に手を当ててエスコートする。
「ひゃ・・・ひゃい! 良いと思います!」
「ブフッ・・・何で敬語? クスクス♪ 本当に梓は変わらないな・・・」
「しょうがないじゃん! こんな短い時間じゃ変わらないもんね~っだ!」
そして、くだらない話をしながら家に辿り着いた。
「どうかな? 美味しい?」
「フム・・・」
一口食べて箸をおく。
「自信あったんだけどダメだったかぁ~・・・明日こそ美味しいって言わせて見せるからね!」
「クス♪・・・やるじゃん梓。」
「えっ?」
「そろそろ俺が教える事はなさそうだな♪」
「どう言う意味でしょうか?」
「今日の料理は本当に美味しいよ♪」
この一言が聞きたかった・・・。
「うそっ・・・・」
「梓・・・頑張ったな♪」
「わ・私・・・あれ?・・・なんだ?・・・エヘヘ♪ 何で泣いてんだろ・・・ゴメン・・・ちょっと・・・嬉しくて・・・うぅ・・・」
『ヤバい・・・メチャクチャ嬉しい・・・何で!? 恥ずかしい・・・涙が止まんないよ・・・』
その梓を優しく抱きしめ頭を撫でる。
「努力は自分を裏切らない。今の君なら結果がどうなろうと胸を張って生きていけるよ」
『アハ・・・やんなっちゃうな・・・最初からそのつもりだったんだ・・・どうしよう・・・嬉しくて・・・嬉しくて・・・涙が止まんないよ・・・』
その後、梓が泣き止むまで龍徳は慰め続けた。
「あぁ~一生分泣いた~♪ 龍徳さん♪ ありがとう♪」
「クス♪ 良い顔だ♪」
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