梓
「マジで?それは助かるよ♪」
「良いよ♪ 困ってるときはお互い様だし♪」
「へぇ~」
「あっ!今ウチの事、結構まともな事言うヤンキーだな~って思ったっしょ!」
「思った。」
「えぇ~そこは普通、そんな事はないって否定しない? プハッ♪ お兄さん正直者じゃん♪」
「クス♪ 面白い女だな♪」
「ひゃ~その笑顔ヤバくない? 普通ならイチコロだわ」
「それも良く言われる♪」
「アハ♪ ウチ田辺梓って言うだけどお兄さんの名前も教えてよ♪」
「俺は神山龍徳だ♪」
「へぇ~名前もカッコいじゃん♪ あっ!もしかしてお兄さんホストかなんか?」
「ブハッ・・・な・何でホスト?」
「アハハハハ♪ 何驚いてんの? だってスーツ着てるしさぁ~佇まいって言うの? 何か雰囲気があるもん♪ タバコもパーラーメントだし♪」
「プハッ♪ 確かにな♪ だが、ホストじゃないよ♪」
「違うの~? ウチこれでも相手の仕事当てんの得意なんだけど。そっか~じゃ~社長さんか♪」
「へぇ~」
思わずタバコを落としそうになった。
「アハ♪ 今度は、外見の割には良く見てんなコイツって思ったしょ♪」
「思った♪」
「プハッ♪ お兄さんじゃなかった・・・えっと・・・」
「神山龍徳だよ。」
「そうそう神山さんだ! 神山さん本当に正直だよね♪」
「まあな♪・・で?君は・・・失礼。 田辺さんは・・・」
そこまで言うと
「あぁ~田辺さんって何か違和感あるから梓で良いよ♪」
「じゃ~梓君は・・・」
そしてまた、話を挟まれた。
「君って受けるわ♪ 流石社長さん♪ 梓で良いって♪」
「じゃ~失礼して・・・梓は現在家出中ってところか?」
俺の言葉に海風でたなびく髪を手で押さえながら目を見開いて固まった。
「な・何でそう思うの?」
「クスクス♪・・・見たら一目瞭然じゃね?」
女性が持つようなバッグではなくリュックサックを背負ってスカートではなく動きやすいズボンにスニーカー。
髪が金髪で化粧をしているから大人びているものの歳は俺と変わらないと思う。
ヤンキーなら友達といるはずだが、彼女は一人。
ここが住宅街であるなら話は違うが、こんな時間に高校生がいる様な場所ではない。
「いやいや・・・言われたの初めてだし・・・」
「ふ~ん・・・それで?」
「それでって何?」
「ここにはムシャムシャする事があったから来たのかなって思ったんだが・・・違ったか?」
「アハ♪ 神山さん探偵さん並じゃん♪」
「フム・・・だったら。ちょっと梓の事を予想してみるか♪」
「ウチの事を?」
「ああ♪ そうだな・・・年齢は17歳。O型。恐らく偏差値60以上の私立高校。 ヤンキーぽく見えるけど実際は、2ヶ月くらい前に初めて染めた。家出はその後だな・・・精々1~2週間っと言ったところだな。タバコもその間に始めたってところか。 家は裕福で母親が専業主婦で口やかましいタイプ。お父さんは真面目で融通が利かないが梓に対して無関心。」
「マジ・・・」
「ついでに予想すると家での切っ掛けは母親が将来の事をうるさく言い続けてウザかった事と父親の浮気現場を目撃・・・否、違うか・・・帰って来ない父親が水商売の店に通っている現場を目撃ってところだな。」
「えっ? ウチ心を読まれてたりする? ちょっと怖いんだけど?」
「プハッ♪ そんな分けないじゃん♪ 予想だよ、よ・そ・う♪」
「あってから10分しか経ってないんだけど?意味分かんないし・・・」
「って事は当たっていたのかな♪」
「いやマジでビビるわ。全部正解!お手上げ!」
「クスクス♪・・・梓も正直者だね♪」
「アハ♪ 神山さんがそれ言っちゃう? アハハ♪ ウチ今日ここに来て良かったよ♪」
「泣きたいなら胸位貸してやるぞ?」
そのセリフにカァ~っと顔を染める。
「べ・別に・・・泣きたい訳じゃないし・・・」
「そっか♪ じゃ~外れちゃったな♪」
「もし・・・さぁ~・・・」
そう言って梓が話し始めた。
先程、俺が推理した事は全部当たっていた。
家に帰ってこない父親と母親は毎日喧嘩。
だから母親は父親の様にならない為に口うるさく将来の事を梓に語ったそうだ。
梓が大学に進学したら離婚すると毎日言われ続け、心配した梓が父を探しに夜の町を徘徊しているとキャバ嬢と戯れる父の姿を見付けたそうだ。
後日、このままじゃ離婚になると父の説得を試みるが、夫婦の間には既に修復不可能な亀裂が生じていた。
そんな日々が続き嫌気がさした梓が、2か月前に髪の色を金髪に染めて親の注意を引こうとしたが、両親はその事さえも互いのせいとののしり合ったそうだ。家を飛び出したのは、期末テストが終わってからなので、今から1週間ほど前だそうだ。
「そっか・・・良い経験してんじゃ♪」
「良い経験?」
「真面目な梓にはショックだったのは分かるが、見方を変えると自分の視野が変わるものだ。」
「どう言う事?」
「例えば、梓の両親が仲睦まじい夫婦だったら、今ここに梓はいない。」
「うん・・・それはそうだね。」
「今まで通り勉強して・・・否、もしかしたら勉強はしなかったかな・・・心の優しい梓は真面目でいれば両親が仲良くなってくれるかもって思ってただろう?」
「・・・ちょっと・・・止めてよ・・・何でそんな事まで分かるの?」
「クス♪ そう言う子の方が家出するんだよ♪ では、もっと早く両親が離婚してたら?」
「家出してないと思う・・・」
「クス♪ 俺がなにを言いたいかって言うと本来ちょっと未来が違っていたら、俺と梓は出会っていなかったって事だ♪」
「うん・・・何となく分かる気がする・・・」
「人間て言うのは、出会った人との繋がりで成長するし逆に愚かにもなる。そうなると俺は愚者ではないから梓にとって成長させるための縁だって事になる。」
「はぁ~・・・何か分かるわ~」
「クス♪ 当然、梓次第だが、俺と出会った事で素晴らしい成長を遂げる事が出来るのであれば、いずれ親に感謝する事になるだろう?」
「マジで神山さんって何者?」
「俺か? ん~通りすがりのお人好しかな♪」
「アハ♪ 何か分かるよ♪ こんな時間に私なんかの話を真剣に聞いてくれてるもん♪」
「だろう♪ で、さっきの話に戻ると良い経験にするかどうかは全部、自分自身だ。因みに俺だったら良い経験にする自信があるからね♪」
「ちょっと感動かも・・・そんな事を言う人はいなかったなぁ~・・・みんな同情か説教か・・・調子の良い事しか言わなかったし・・・。」
「俺が一番嫌いな人種がそういうタイプだな。」
「それ言ったら殆どじゃん?」
「だな♪」
「アハ♪」
「まぁ~そうは言っても今の梓はまだまだガキだ。そう簡単に頭で割り切れないだろう。」
「そうだね。正直家には帰りたくないもん・・・」
「ふむ・・・いつもはどうやって過ごしてるんだ?」
「今までは友達の家を点々としてたけど、流石に限界だから知り合った男の人のところに居候中・・・。」
「なるほどな・・・それで逃げ出してきたのか・・・」
「何で分かるの!?」
「元が真面目な梓が肉体関係を求められたら悩むだろうからな・・・」
「ウッ・・・何か私の事全部分かっちゃうんだね?」
「全部は無理♪」
「カァ~そこは否定しないで欲しかったぁ~」
「クス♪ で?」
「で?って・・・言わなくても分かってる気がするんだけど・・・」
「あのなぁ~俺は超能力者じゃないんだぞ? 梓が持ち金も少ないし行く当てがなくって困っているなんて分かる訳がないだろう?」
「分かってるじゃん! もぅ~」
「ハハハ♪ だからどうするつもりなのかなぁ~っと思ってな♪」
「う~ん・・・まだ考え中。」
「だろうな・・・公園で寝ようと思っても怖いし、ネカフェに行く金はあるけど持ち金を考えると難しいってところか♪」
「もぉ~全部あってますよ~! そんなに私の事が分かるなら何考えてるか当ててみれば!」
「クスクス♪・・・仕方がないな・・・良いぞ。」
「へっ?」
「何だその面は?」
「だって・・・私今・・・」
「だったら神山さん家に泊めてよって思ったんだろう?」
「なっ・・・怖っ!やっぱり超能力者じゃん!」
「プハッ♪ 梓の顔に書いてあるんだから仕方がない♪ 泊めてってハッキリ書いてあるぞ?」
「嘘ッ?」
そう言って自分の顔をゴシゴシと擦るが・・・
「って!そんな分けないじゃん! もぅ~本気で擦っちゃったよ!」
「面白い女だな♪ ほら!行くぞ!」
「ど・どこに?」
「俺ん家に行くんだろう?」
「本当に良いの?」
「ん? 来たくないなら来なくて良いぞ?」
「行く!行きます!」
「クス♪ 素直で宜しい♪」
『なんか私・・・狐に摘ままれているのかな? 困ってたらイケメンに合うし・・・メチャクチャ頭が良さそうだし・・・絶対に優しいだろうな・・・はぁ~多分・・・ウチって言葉使いもバレてるっポイや・・・』
「早く来い!置いて行くぞ!」
「あっ!待ってよぉ~! 歩くの早過ぎ~!」
「梓が遅いだけだ。」
「私小走りなんだけど?」
「何だ?足が短いって自慢か?」
「なっ! 酷くない? まぁ~そんなにスタイルは良くないけど・・・」
「クス♪ スタイルは悪く無いよ♪」
「えっ・・・あ・ありがとう・・・ってかマジで早過ぎなんですけど~」
『アハッ♪ 私・・・嫌な事、スッカリ忘れてたよ・・・面白い人・・・』
そして、分ほど歩くと龍徳のマンションに到着したのだった。
「着いたぞ!」
「はぁはぁはぁ・・・あぁ~疲れたぁ~ って!ジョーク?」
目の前には30階建ての高層マンション。
「ここまで来てジョークって言える梓が凄いな・・・早く来ないと置いて行くぞ?」
「あっ待ってよ~!」
エレベーターに乗ると梓が無口になって驚いていた。
『佇まいからして金持ちだとは思ったけど・・・本当に何者なんだろう・・・って!最上階のボタン押してるし! マジで?』
「うわぁ~何この景色・・・凄い綺麗・・・」
「おいてくぞ!」
「あん!待ってよ~!」
『最上階・・・4部屋しかないし・・・』
「ここだ。」
そう言ってカードキーを差し込む。
「おじゃましま~す・・・って!広っ!・・・はぁ~何LDKあるの?」
「さぁ~?」
「さぁ~?って!自分の家でしょう?」
「まぁ~滅多に来ないからな・・・ここにいるのも精々8月までだな。」
「へっ?」
『ダメだ・・・全く今までであった人達と違い過ぎる・・・意味分からん。』
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文字数は少ないですが、出来る限り毎日アップしていこうと思いますので宜しくお願い致します。