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そこにいる君に逢いたくて。  作者: 神乃手龍
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思い出の場所で

最初の人生でも良く“神”とは言われていたが、それは“マジ神!”って言う表現方法であって流石の龍徳も全知全能の神などとは言われた事がない。


「龍徳様が望む事は全て叶うと言われてきました。」

「なにそれ?どう言う事?」

『ドラゴン〇ールか? 神龍なのか?』


「この高校に入り親衛隊を名乗るには神山様を神と敬い慕いなさい!そう先輩達から教わってきました。」

「まぁ?気持ちは分かるわね・・・。」


『何言ってんの紀子さん?』

って顔で相川紀子に目を向けるとオホホホホっと笑って誤魔化された。


「えっと・・・ちょっと待ってね・・・今整理するから」

余りにも突拍子がない会話に龍徳の頭脳が誤作動を起こす。


「続けても宜しいでしょうか?」

「宜しくないけど・・・どうぞ・・・。」

有難うございますと続け


「我々トップの親衛隊は龍徳様をご主人様として主が望む全てを叶える事に最上の喜びを感じ・・・」

「ちょっと待った!!スト~ップ!!」

「はい!」


「じゃあ何か?俺が語尾にニャンを付けろって言ったらやるのか?」

「もちろんですニャン♪」

「ブハッ! ゲホッゲホッゲホッ」


「大丈夫ですか社長?」

「大丈夫でしょうかご主人様」

「ふにゃぁ~ご主人様がたいへんだぁ~」


「あっ!何を・・・加奈!あなた・・・」

イキナリとち狂った加奈が龍徳に跨って自分の胸で龍徳が吹き零した飲み物を拭きとり始めた。


「あぁ~ズルいですわ加奈ったら!それなら私も!」

「ちょ・・・ちょっと貴方達!!」

『な・・・何だこの状態は・・・』


龍徳に跨る加奈。

その背後から龍徳を抱きしめようとする詩織。

それを阻止しようと龍徳の右頬にふくよかな胸を押し付けて防ごうとする紀子。


その後、落ち着きを取り戻した彼女達に俺の素性を絶対にばらさない様にと伝えたのだが

「我々親衛隊は一心同体なので、隠し事など出来ません!」

って言うもんだからツイ・・・


「ご主人様のいう事が聞けないのか!!」

っと言ってしまった事が運の尽き・・・

2人共目をトロ~ンとさせていた。


俺自らご主人様と言ってしまった事で、彼女達の脳裏に俺が認めた事がインプットされてしまった。


彼女たち曰く

「「神は一人の所有物ではありません。皆で共有するものです!!」」

だそうだ。頭が痛くなりそうだ。否・・・本当に痛い。


親衛隊を抜けるなら秘密が守れると言ってくれたが、その為に失うものが大き過ぎると駄々をこねられた。


兄弟が俺の会社の社長である限り、近い内に俺のマンションがバレるのも時間の問題だと諦めた俺は親衛隊を辞めるのを条件に俺の家に遊びに来ても良い権利をやるって言ったらあっさり脱退すると言い出した。


疲れた・・・

メチャクチャ疲れた。

こんなにドッと疲れたのはいつ以来だろうか・・・


そして、運が悪い事にこのトラブルのせいで俺はすっかり忘れていた。

頼んでいた品物が届く事になっていたのだが、紀子からの呼び出しに望と静音の2人に荷物を俺の代わりに受け取って貰う為に部屋のカギを渡していた事を・・・


その結果、4人が鉢合わせひと悶着あった後、さっきも言ったが前の2人と似たような状態になってしまった。

と言うかさっきの件で、ゲッソリ疲れていた俺が途中でギブアップしたような感じもするが・・・


結局この世界でも同じ様な事になってしまうんだなぁ~っと諦めの心境だった。

最初は、上手く行かなかった4人だが、俺の話になると満場一致になるらしく次の日にはメチャクチャ仲良くなっていた。


えっ?その2人とは寝たのかって?

そんなの当たり前だろう?

正直、望や静音とは違う意味で興奮した。


詩織と加奈は完全なMだった。

完全に俺に服従なのだ。

俺が言えばどんな事もする。


望や静音は嫌いやらしい言葉を言わせようとすると恥ずかしがって中々言えないのだが、詩織と加奈の2人は恥ずかしがりながらも口に出せる。

自分でして見せろと言えばそれに従う。

そういうエロさがあった。


しかも最初っから3人で盛り上がった。

俺も大概だと思うが、望と静音の2人もそれを聞いて収まらなくなっていた。




そして、高校最後のGWを迎えた。

この少し前に総業4年目を迎え拡大した神木グループは、全国に広がっていた事で、移動手段が車だけではなく、ヘリコプターを導入した。


その為、各地に俺専用のヘリポートが置かれる事となったが、その中のいくつかは高層マンションの屋上であった。

これは、バブル景気による販売戦略によるものなので、わざわざホテルに泊まる時間を省く為でもあった。


その為、1年に数回しか使わないマンションがいくつか点在していた。

それでもビジネスが集中している東京は渋滞を避ける為にも都合が良かった。


夏の期末試験の少し前。

バブル崩壊後の戦略として一つのビジネスが始動した。

その為、週の半分は渋谷ではなくお台場で過ごす事が増えていた。


最初の人生で、俺が18歳の時にやっていたホストで初めてお客から貰った最高額のプレゼントがこのお台場で1年後に完成する高層マンションだった。


1993年8月26日に開通する事になる東京湾連絡橋。通称「レインボーブリッジ」の施工が既に始まっている。


その為、相当数の工事車両が絶え間なく働き続けている。

当時、女性関係に疲れた俺が自分の心を癒す為に来ていた場所でもある。


海岸沿いの夜間工事はしておらず、一般車両が進入禁止となってはいたが、場所によっては簡単に侵入する事が出来た為、後々完成するお台場海浜公園には良く侵入して夜景を見ては癒された。


車のカセットデッキから流れる曲はサザンとユーミン。

俺は、この歌手が好きだった。


世界の景色が白と黒の世界になりそうになる度、足を運んだ。

この誰もいない場所で、シートを倒し眼前に広がる夜景をタバコを吸いながらボォ~ッと眺めるのが好きだった。


徐々に俺の世界から色が失われていく中、ここだけは色鮮やかな世界が広がっていた。

だからホッとしたのだ。

俺は大丈夫だ・・・そう自分に言い聞かせた。


オッと!話がそれたな。

今回は、他のビジネスで来ていたのだが、ここでも一つの出会いがあった。


7月15日土曜日の事だった。

最初の人生でもそうだったが、俺は既に酒を飲む。

ボクシングがあったので、タバコは吸わなかったのだが、今回の人生でもボクシングが出来なくなった事で、どうしても吸いたくなり今でも偶に吸う事がある。


今後、日本の中でも世界の注目を浴びる一つとなるこの場所で、各分野の経営陣と屋形船で宴会をした後の事だった。

車でマンションまで送ってくれると言ってくれたのだが、昔懐かしい場所を一目見たいと俺は途中で降りる事にした。


「本当に懐かしい・・・記憶のままだ・・・。」

舗装された道路を進み昔の記憶のまま工事現場の中に入ると俺の眼前に宝石の様な景色が広がっていた。


「何んか・・・泣けてくるな・・・」

俺としては珍しく着飾ったスーツのネクタイを崩し古い記憶を懐かしむ。


最初の人生でモノクロとなった世界から抜け出すきっかけとなった女性。

誰も愛せないと思っていた俺に唯一愛を思い出させてくれた女性だった。


志津音の面影があったその女性に対しても他の女性と同じ様に接していたが、彼女だけは他の女性と違った。

俺の幸せだけを只管に願う無償の愛を教えてくれた。


俺が、ホストを辞め普通の人生を歩むきっかけをくれた。

当時6人の女性と交際し、それ以外にも毎日違う女を抱いていた。

その全てを清算し、彼女の想いに応えたかった。


モノクロの世界に色鮮やかな景色を取り戻させてくれた女性に俺から告白させて欲しいっと1週間の時間を貰って迎えた約束の日。

彼女は謎の疾走。


今回の人生で志津音は別格としても、当時志津音と出会う事がなかった俺があんなに取り乱したのは彼女の疾走だった。


今でも覚えている。

ほろ苦い失恋にも似た感覚。

人を愛する感情を思い出した俺に虚無感を与えた女性。

知り合って1年も経たない関係だったが、俺の中には一生消えない思い出た。



そんな昔を懐かしむ。

胸元からタバコを取り出しジッポで火をつける。

この匂いが好きだ。


カチン!っと閉じてタバコを吸いこみふぅ~・・・っと吐き出すと深夜の東京が煙に覆われて行く。

「この場所も来るべくして来たって事か・・・」


何度かの人生で分かった事がある。

どんなに違う人生を送ろうと必ず通過する場所やイベントが存在する。

そうなるとこの場所にも何か縁があると考えた。


暫く時が止まったようなこの景色を思い出と共に堪能し、もう一度懐からタバコを取り出して吸おうとしたらジッポのオイルが切れている事に気が付いた。


「ちぇ・・・もう一本吸いたかったな・・・」

イメージとしてはお墓に備えるお線香の様な感じだ。

過去の自分に対する手向けの様なもの・・・


何度か火を付けようと試みていた中、人の足音が聞こえ振り向くと

「お兄さんタバコ吸いたいならこれ使ってよ♪」

そう言って一人の女性が立っていた。


俺の後ろの街灯からは光が届き切れず、微かな輪郭がシルエットの様に映し出された。

この場所へは何度も来た事があったが、俺以外の人がいるのを初めて見た。

俺が驚いていると彼女が笑い出した。


「プッ・・・アハハハ♪ 何その顔~♪ 幽霊だと思った? アハハハハ♪」

「ああ・・・本当に驚いた・・・この時間のこの場所に人がいるとは思わなかったな・・・」


「アハ♪ それ私も思ったし♪ カチカチ言ってるから何かと思ったよ♪」

「フッ・・・オッとライター貸してくれるなら助かるよ♪」


「あぁ~そうだったね♪ ホイッ♪」

そう言って100円ライターを投げ渡されたので、微かにライターに反射する光を頼りにキャッチする。」


「ナイスキャッチ♪」

「サンキュー♪」

早速、タバコに火をつけ彼女にライターを返そうと目線を上げると


「へぇ~お兄さんメチャクチャカッコいいじゃん♪」

「フッ、良く言われる。」


「カァ~背負ってんなぁ~♪ まぁ~そのルックスじゃしゃ~ね~わ♪」

「ライターサンキュー♪」

そう言って返そうとすると


「良いよ♪ ウチ他にも持ってるから♪」

ニィ~っと屈託のない笑みを向けた。


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