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そこにいる君に逢いたくて。  作者: 神乃手龍
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神木グループ


「1990年で一旦不動産事業部を縮小する・・・ですか?」

「そうだ。正確には1992年の3月までにだがな。」

「何故・・・否、龍徳君・・・神山社長の深遠な思考に我々凡夫が口を挟む事ではありませんでした。」


「大袈裟だな・・・しかし、それだけではない。」

「どう言う事ですか社長?」

突拍子もない話に田中美里が口を挟む。


「俺の予想では、このバブル景気が1991年の3月に崩壊し1993年の3月までに未曽有の大不況になると考えている。」

「いやいや・・・この好景気ですよ?そんな先の話を・・・ねぇ?」

そう答えたのは営業畑の中村浩平だ。

周りに同意を求める様に見渡すが・・・


「社長が仰るならそうなるんでしょうね」

「ええ。社長の先見性なら間違いないと私も思います。」

持田香は全面的に俺の信奉者だ。

相川紀子は俺のアドバイスを全面的に信じた結果今がある。


「確かにこの異常な好景気が何時までも続くと思う方がおかしい」

「そうですね・・・逆に社長が仰った通りになると思うとゾッとしますね・・・。」

上田健也の俺への忠誠心は絶対だ。

上田勉も同じ様なものだろう。


「えっ? そうなんですか? いや・・・俺だって社長を信じていますからね?」

相変わらず調子の良い奴だ。


「君達が言ったようにこれだけ実体のない金が動いている社会で、突然足元が消えたらとんでもない事になるのは明白だ。

逆に馬鹿みたいに規模を広げすぎればダメージは計り知れない。」


その言葉を想像したのか全員固唾を飲む。


「そうなると1991年の3月からと仰いましたが、仕入れを考えたら1990年までと考えた方が良いかも知れませんね。」

「そうなるな、特に不動産関連は、1992年までに全て処理を終えろ。案件によっては1991年までに完結した方が良いだろう。」


「全部ですか・・・」

「そうだ。不動産関連に係わる全てが最悪の結果になる。」

その言葉にまたしても固唾を飲む。


「そうなると当然、買い控えが蔓延するだろう。」

「となるとその後に飲食店や娯楽施設が影響を受けると?」

「流石ですね木村さん。」


「そんな時代が来るとは・・・」

「確かにダメージを最小限に抑えないと我が社も無事ではすみませんね・・・。」


「だから先に話したんだがな。我が社は、それを利用して一気に拡大を図る!」

「分かりました。肝に銘じておきます。 お前達も努々忘れるなよ!」

「「「「「「はい!」」」」」」


これで取り敢えずは最悪を逃れるだろう・・・



そして、時は流れ、龍徳は高校3年生となっていた。

時代は1989年。バブルに浮かれる大人たちはさらに狂っていく。

それを見た学生・・・否、高校生や中学生までもが狂っていく。


この年に昭和が終わり “平成”へと変わっていく。

新しい時代の幕開けに人々は歓喜していた。


周りの同級生たちが一気に受験モードに切り替わる。

未だに続く望と静音の関係に新たに追加された2人の女の子がいた。


名前は、相川加奈と持田詩織だ。

この二人は同じ学校の後輩にあたる。


そうなった経緯は望と静音と似たようなものだ。

少し違うのは、この2人が俺の会社の部下の妹であったことだ。


子会社の社長を任せている相川紀子と持田香の妹が偶然俺の高校にいたのだ。

そのせいで、俺の秘密4人で共有するようになっていった。。


基本的には木村さんに指示を出すのだが、部下達から知恵を借りたいと連絡が入る事がある。そんな時の事である。


「社長わざわざ申し訳ありません。本来であれば私が伺うのが筋なのですが・・・」

「良いんだよ俺は君達に比べて時間があるんだから♪」

相川紀子が新作のブランドや次の流行りもので悩んでいると聞き俺が駆けつけていた。


「ほらほら!みんなこっちの事は良いから!仕事に集中して!」

ここに来るのは構わないのだが、ほぼ女性だけの職場でどうしても目立ってしまう。

その為、ある程度は顔が分からない様に変装していくのが当たり前になっていた。


「紀子さ~ん。私達にも紹介して下さいよ~♪」

「私も!私も~♪」

「ダメです!貴方方が気軽にお話しできる様な方ではありません。」


「「「「「えぇ~」」」」」

「申し訳ありません社長。」

「ハハ。相川さんのところは相変わらずだね♪賑やかなのは良い事だよ♪」

「そう言って頂けると助かります。」


そして、本題に入って俺の考えを話して良く。

その発想に相川紀子の目が驚いたり感心したりと忙しく動いていた。


「全く・・・社長の頭の中はどうなっているんですか? 正直私なんか必要ありませんよ・・・」

どうやら本気で落ち込んでしまったらしい。


「バカだな・・・この事業は君だから成功しているんんだ。シロートの俺が入っても成功なんてする訳がない。俺が直接引き抜いたんだぞ。もっと自分を信じろ。」


「はぁ・・・私がもう少し若かったら・・・絶対社長の女にして貰ったのになぁ~」

「何言ってんだよ。紀子さんは今でも十分綺麗だそ?」

「あ~ん社長~♪大好きです~♪」


「こら!素が出てるぞ!」

「あら・・・オホホホホ。」

「ったく少しは成長したと思ったら・・・」

「だって~社長ってば年下に見えないんですもの・・・」


そう言われて少し考える。

「ふむ・・・確かに良く言われるな・・・。」

「ですよね!どうです~年上の女性は~♪」

「良いね~♪」

「あ~ん♪だったら~・・・痛っ!」


「ったく・・・本当に俺のどこがそんなに良いのか・・・君にはもっと素敵な出会いが待ってるよ♪ さて、冗談はここまでにして・・・」

「冗談じゃないんですけど・・・」


「あっ!お姉ちゃん!ここにいたんだ~♪」

「だれ?妹さん?」

「加奈!失礼ですよ! 申し訳ありません社長。妹の加奈と言います。」


「お姉ちゃんの会社の社長って・・・こんなに若いの?」

「バカね・・・神山社長はそんな簡単な話で説明できない方なのよ♪」

「そっか~。コホン。失礼いたしました。紀子社長の専属モデルをさせて頂いております。妹の加奈と申します。今後とも宜しくお願い致します。」


「ほぉ・・・シッカリ挨拶が出来るじゃないか。」

「エヘへ♪有難うございま~す♪」

元気があって活発そうな子だ。


「あれ~?でも、この会社の社長ってお姉ちゃんでしょう?別の会社の社長って事?」

「バカね~!神木グループ知らない訳ないでしょう?」

「うそ・・・」

「本当よ。私の才能を認めてくれた只一人お方です。」


「ハハ・・・凄過ぎて私には分かんないや♪ あぁ~良いところに来たぁ~詩織ちゃ~ん!!こっちこっち~」

「バカ!」


加奈が大声を掛けて呼んだことで、詩織と呼ばれた女の子以外にもここぞとばかりにモデル達が集まってきた。


「あれ・・・なんで?」

「あんたは知らないでしょうけど神山社長は凄くモテるのよ! 折角私が抑えていたのに・・・」


それから猫なで声を上げたモデル達が引きりなしに龍徳の元へやって来ては自分達をアピールしていく。

「あんた達!仕事に戻りなさい!」

「「「ズルいですよ社長ばっかり~!!」」」


「私は仕事の話をしているだけです!」

そしてブーブー言いながら仕事に戻って行った。


「ご・ごめんなさい・・・」

「はぁ・・・次から気を付けてくれれば良い。」

「社長・・・本当に申し訳ございません。」

「良いよ♪ 知らなかったんだからしょうがない。」


「そうだ!詩織ちゃん・・・何でそんなところにいるの?」

衣装ケースの裏に恥ずかしそうに隠れているがチラチラとこっちを伺っていた。


「加奈ちゃん・・・そ・その人・・・」

「うん。どうやら神木グループの社長みたい♪」

「見たいじゃなく神木グループの最高責任者ですからね!」


「ち・違う・・・そうじゃなくって・・・」

「もぅ~良く聞こえないからこっちに来なよぉ~」

そう言って詩織の手を引っ張る。


「ヒャァァァ~わ・私の恰好ど・どこか変じゃないよね?」

「いつも通り綺麗だけど?どうしたの?今日おかしいよ詩織ちゃん?」

「加奈だって知っている人だよ・・・」


「だから~神木グループの~」

「そうじゃなくって・・・私達の憧れの先輩だよ~!!」

「え?」


当たり前だが、誰に見られているか分からないのに普通の姿で来ている訳がない。

ブランド物を身に付けるのはいつもの事だが、今日は帽子を被って伊達メガネをかけている。そのせいでさっきから22,3歳に見られている事はモデル達のヒソヒソ声で分かっていた。


「このお方は・・・うん・・・間違いない・・・龍徳先輩だよ~!!」

「えぇぇぇぇ~!!うそ・・・」


『マジか・・・まさか後輩がいたとは・・・これはマズい・・・』

「あの・・・申し訳ありませんが・・・帽子とサングラスを取って頂けないでしょうか?」

「えっと・・・却下で・・・。」


「社長・・・そんな事を言われたら・・・」

「ほら~! 本物だから取れないんだよ・・・私ったら恐れ多い・・・龍徳様・・・わ・わたくし持田詩織と申します。」


「あぁ~宜しく・・・。」

「ああ・・・そう言えば・・・」

「どうしたの加奈ちゃん?」


「さっき・・・神山社長って・・・お姉ちゃんが言ってた・・・ど・どうしよう・・・」

さっきと打って変わってオドオドし始めた。


「龍徳様・・・私達高校2年生の龍徳様の親衛隊の総まとめを任されている持田詩織と相川加奈と言います。龍徳様の大・大・大ファンです~!!!」

「はぁ・・・厄日だ・・・。」


「妹の高校と神山社長の高校が同じとは知りませんでした・・・加奈・・・あれ加奈は?」

「あぁ~加奈ちゃん!何失神してるのよ?憧れのご主人様に会えたからって・・・」

「はひぃ~ご・ご主人様が~本物だぁ~・・・はひぃ~」


「えっと・・・さっきから気になってるんだが・・・」

「はい!何なりとお申し付けくださいませ!」

「・・・はぁ・・・まあいいやそれよりも何でさっきから神山様とかご主人様って・・・何?」


「はい。それは私達からすれば神山様が全知全能の神だからです。」

「はい?」

またしても訳の分からん奴が出てきたな・・・。



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