お前も相当に病んでるな
相手を尊重し・・・守るだけじゃなく。厳しく相手を認める・・・こんな言葉を無意識で言える貴方の優しさにどれだけ惹かれたか・・・
「全部言いたいけど・・・多過ぎて話しきれません・・・。」
そう言って龍徳を熱い目で見つめる。
「それは・・・ホレるよね・・・。」
キッ!
ボソっと相槌を入れるんじゃない!
何がお淑やかな社長令嬢だ・・・そそくさと目を反らす芸当を覚えやがって・・・
「私言いましたよね♪ 諦めないって♪」
「あのなぁ・・・分かってないからもう一度言うぞ?」
「分かってます!」
「ほぉ・・・じゃ~分かってなければ帰るんだぞ!!」
「分かってます・・・龍徳君には最愛の女性がいるって・・・」
『この世界で唯一貴方が追い求めている女性・・・鈴木志津音さん・・・』
「なっ!・・・」
キッと望みを見ると目を反らされた。
『アイツ・・・』
「だから・・・私も!身体だけの関係で良いの!少しでも龍徳君を感じたいの!!」
「バカだな・・・」
「うん♪馬鹿だから・・・最初は友達だけでも我慢しようと思ってた・・・けど・・・望ちゃんの幸せそうな顔を見たら・・・我慢なんて出来ない!!」
「はぁ・・・」
「お願い・・・絶対に彼女にしてって言わないから・・・彼女が現れるその時までで良いから・・・私を・・・」
「お前も相当に病んでるな・・・」
そう言って静音の腕を掴んで引っ張ると抱き寄せて背中に手を回す。
「龍徳君・・・」
もう片方の手で静音の顎を持ち上げて
「約束しろ・・・俺以外に惚れた男を絶対に作ると・・・」
「はい・・・。」
「だったら今日から静音も俺の女だ。」
そう言って静音にキスをしたのだった。
『はぁん・・・凄い・・・腰が・・・抜けちゃう・・・』
「良いなぁ~」
その後ろで望が股間を抑えてクネクネしている。
「望・・・悪いが・・・」
「ううん・・・最初っから分かってるし♪ 静音の気持ちは知ってたから・・・何だろう・・・別に嫌じゃないよ♪ 私に見られたら恥ずかしいだろうから・・・客間にいるね♪」
「もう・・・後戻りできないぞ・・・。」
「嬉しい・・・あぅ・・・」
上から隈なく舐め降ろす。
「そこは・・・はぁん・・・ンン・・・」
「俺・・・上手いから気が狂っても知らないからな・・・」
「うぅ・・・も・もう・・・おかしくなる・・・」
その頃、隣の部屋に行った望は、壁に耳を付けていた。
「私の時もあんなんだったのかな・・・凄い・・・さっきまでしてたのに・・・ムズムズしちゃう・・・あぅ・・・」
見悶えながら恍惚とした表情を浮かべる望が何をしているのかは割愛する。
その後、獣の様に発狂する静音の喘ぎ声が、落ち着くと龍徳が客間に迎えに行く。
「何やってんだお前・・・」
「だって・・・あんなの聞いちゃったら・・・」
「エロっ!ったく・・・我慢出来ないのか?」
「うん・・・お願い・・・」
そして、今度は客間でいつも以上に興奮した望の姿があった。
『す・凄かった・・・自分じゃないみたい・・・アン・・・自分で触れても気持ちい・・・初めては痛いって言うけど・・・嘘だったのね・・・望ちゃんが幸せな顔になる訳だわ・・・こんなに心から満たされるなんて・・・』
未だ荒い息遣いの中、自分に起きた事を振り返る。
布団をそっと捲ると血痕の跡がある。
「私・・・龍徳君の女になれたんだ・・・嬉しい・・・」
静音の目から涙が零れ落ちる。
その時・・・
『うそ・・・望ちゃん・・・してるの?・・・声・・・こんなに聞こえるんだ・・・って・・・私の声も聞こえちゃったかも・・・凄い・・・獣みたい・・・あぅ・・・』
ムズムズする自分の身体を抱きしめ布団の中で静音が何をしたのかは誰も知らない。
その後、2人は大の親友となっていった。
土曜日には必ず2人で来る。
最初は恥ずかしがっていたのに・・・女は怖いな・・・。
そんな事を思い出し静音を見ると幸せそうな顔で俺を眺めている。
『やれやれ・・・』
リハビリを終えて家に帰ろうとしたら望みも来た。
「お疲れ様でした♪ありがとう静音♪」
「うん♪助かるよ望♪」
そう言うと左右に分かれて俺の手を肩に回して歩き始めた。
「痛くない龍徳君?」
「ああ・・・平気だ・・・。」
「そんな顔して・・・平気じゃないよね?」
リハビリを終えると無理をするせいか身体が悲鳴を上げてしまう。
正直、初日は動けなくなってしまいタクシーで帰ったのだが、少しでも歩いた方が、回復が早いと言われていたので、無理をして壁伝いに歩いていたら、2人が助けてくれるようになった。
「でも、最初の頃より良くなってきたよね♪」
「うん♪私もそう思う。」
「・・・・・・!」
その時、誰かの声が聞こえた気がした。
「ん?今・・・」
「どうしたんですか?」
「いや・・・誰かが俺の名前を・・・」
立ち止まって周りをキョロキョロと見渡すが誰もいない。
「そう?聞こえませんでしたよ? 静音は聞こえた?」
「ううん。私も聞こえなかった・・・空耳じゃないの?」
「そうだな・・・」
そんな日常が続く中、季節は夏へと突入していた。
本当であれば直ぐにでも彼女を探しに行きたかったが、行ったところで満足に動けない身体ではどうしようもないと思ったからこそリハビリを頑張っていたのだ。
前回の人生のお陰で新潟の住所は志津音本人から聞いて暗記している。
GW手前までは、リハビリの過酷さに身体が悲鳴を上げてしまい手紙を出そうと思えば出せるのだが、自分で文字が書ける状況ではなかったので、木村に指示を出して何度か俺の変わりに手紙を送って貰ってはいる。
とは言っても経過報告程度だ。
やはり自分の想いは自分で書きたい。
『志津音・・・もう少しだけ待っていてくれるか・・・
必ず迎えに行くから・・・』
俺の住所を勝手に伝えてはいけないと思った木村は神木商事宛でやり取りをしていたそうだが、2通しか届いていなかったそうだ。
ちょっと寂しい気持ちもあるが、俺の状況を知ってしまえば志津音がそうする可能性が高い事は分かっている。
前回の人生では、手紙を送っていない。
たった、これだけでも未来が変わる可能性があると自分の軽率な行動に嫌気がさす。
だから、俺が関与しきれない事は出来る限り避けようと考えた。
前回の様な悲しい結末にはしたくない。
最悪、20歳で団地に引っ越す事は分かっている。
記憶が戻っているとしても高校卒業までは新潟の住所なのだ。
少し悲しませてしまうかも知れないが、余計な事をしなければ確実に志津音に会えるのだ。
知っている未来を出来るだけ変えなければ65歳の志津音ではなく最悪でも20歳の彼女に会える。
自分の誕生日までに免許を取得すれば、高校を卒業する前に志津音に会いに行く事だって夢ではない。
実際、望の未来が少し変わってしまっていた。
彼女の誕生日は1月22日。
本来であれば16歳の誕生日に婚約者と出会う事になっていたはずなのだ。
婚約しているはずの望みが俺のリハビリに来たので、叱ったら
「婚約者と会う少し前にお父さんが突然私に行ったの・・・結婚しなくても大丈夫になったって・・・だから・・・私言ったの!好きな人がいるから結婚したくないって! そうしたら分かったって・・・」
この時、また未来が変わった事に気が付いた。
本来であれば望は自分の夢が叶い婚約者と結婚していたはずなのだ。
だから今俺の傍にいる女性は静音だけだったはずなのだ。
後で分かった事だが、俺の手術に難航していた中、有名な医者を探していた木村さんが望の父なら紹介できると話を聞き今後の仕事で魅力ある提案をプレゼントしたそうだ。
それは、望を嫁がせる事で、合併する予定だった会社とのメリットを大きく上回るものだった。その為、神木商事との付き合いを優先させた方が良いと判断した結果、望の結婚が無くなったのだった。
その事を知った俺が、慎重になるのも無理はないだろう。
だが、それは俺が影響を与えたからだ。
前回と同じ様に志津音に接触しなければ必要以上に未来は変わらない・・・。
だから・・・それまでの我慢だ・・・。
その為、本来の未来で自分の若かりしき頃の動きを真似して過ごす事に決めたのだった。
季節は夏。
青春を取り戻す様に俺は遊んだ。
今ではバイクの免許を取得したから移動には大変助かっている。
本来高校では禁止されていたが、バレなければなんて事はない。
学校の友達には免許を取得する奴がいなかったので、一人の時にしか乗っていない。
望や静音が乗りたがったが、最初に乗せる人は決まっている。
期末試験が終わり、いよいよ高校2年生となった俺達の夏が始まる。
試験の結果は、俺は不動の1位だったが、望と静音がかなり成績を伸ばしていた。
「やったぁ~♪ 前回より65位も上がってる♪」
「凄いね望!全体11位って凄いよ!」
「静音だって13位じゃない!」
「うん♪ 前回より60位上がってた♪」
「これも龍徳君と一緒に勉強したからだね♪」
「うん♪ 間違いないね♪ それにしても面白い勉強の仕方だよねぇ~♪」
「そうだね♪ 歩き回ったり、ガム噛んだり・・・」
「ノートを取らないし、時間を細かく区切るし・・・」
キャッキャと可愛らしい笑顔で喜んでいた。
「それにしても相変わらず満点だね・・・」
「私、龍徳君の席の後ろだから見ていたけど全教科15分位したら寝てたよ・・・」
「「ハハハハハ・・・はぁ~・・・」」
お互いに見つめ合うと嘆息を吐く。
「もうちょっと私達のところまで降りて来てくれないかな・・・」
「無理だろうね・・・だって本人的には手を抜いているって言ってたもん・・・」
「だよね~・・・」
な会話をしていると
掲示板を見に来た龍徳が・・・
「・・・順位が上がって良かったな・・・」
「うん!これで問題なし!」
「そうですね!約束守って下さいよ♪」
「やれやれ・・・お前達・・・男作る気あるのか?」
「「もちろん♪」」
『どう見てもそう見えないが・・・』
少し前に点数が下がったら出入り禁止と言われた2人が
「「だったら勉強を教えて!!」」
と言い出した。
そして、調子に乗った彼女達は
「順位が30位以上上がったら夏休みいっぱい遊びに連れて行ってね♪」
「上位30人に入ったらご褒美下さいね♪」
っと強引に約束したのだった。