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そこにいる君に逢いたくて。  作者: 神乃手龍
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望と静音


時は流れ・・・龍徳は高校一年生となっていた。

楽しみにしていた自分の誕生日は、最悪な気持ちだった。


父、昌男の会社も順調。だが、高所得者となってしまい団地を出される事となってしまったので、今後の事も考えて墨田区に家を構える事となった。

15歳となった龍徳の本当の未来では、神山家が一軒家を購入する事になるのは20歳になってからの話。本来の未来とはかけ離れて行く。


志津音の消息を未だ追っているが決定的な情報は得られていない。

未だに立ち直る事が出来ない龍徳は新しい学友が出来るが、どうにも地に足が付かない。


悲しいかな、努力をする習慣が身に付いてしまい気が付けば学校でも目立ってしまう。

気力が抜けてしまった龍徳は、大好きだったはずのボクシングでさえも週に1~2度程度、通えば良い方になっていた。


当初はボクシングに集中する事で気持ちが紛れると思っていたのだが、未だに連絡が取れない事に逆にイライラしてしまう。


今までは、スパーリングパートナーを気遣っていたのだが、つい八つ当たりの様に叩きのめしてしまう。

その為、実力の違いにショックを受けた練習生はおろか8回戦のプロボクサーでさえジムを去って行く事が増えてしまった。


その事もあって、週に1,2度しか通わなくなっていたのだが、志津音の居場所が分からない事に対しての不安とイライラを町の不良にぶつける事が増えていた。


入学して数ヵ月もすると・・・

既に何人もの女生徒から告白を受けたものの当然、志津音を超える様な女性はいない。

女生徒たちも龍徳にフラれても憂いを帯びた龍徳に近づきたくて仕方ない。


見た目だけなら綺麗な子も可愛い子も多いのかも知れない。

有名校の上、お金持ちが多い学校だ。

東京、しかも渋谷と言う場所の影響か普通の高校生に比べ大人びた学生が多く感じた。



高校入学と共に親に一人暮らしをすると言って現在の住まいはワンルーム・・・どころではない。2LDKのデザイナーズマンション。

龍徳に何かあったらっと自宅を墨田区にしたのも理由の一つ。


そもそも自分の会社を高校の近くにしたのだ。

その方が、効率的だと思ったから最初から木村が用意していた。

たかが高校生には持て余すマンション。


だが、前回の人生でホスト経験があった龍徳は18歳の時に同じ様なマンションに住んでいた経験があった事で違和感はなかった。


それでも普通の高校生としては有り得ない状況だ。

出来る限り高校の友達にはバレない様にしていたのだが、龍徳の追っかけをしていた何人かの女生徒にはバレてしまう。


過去この時期の龍徳の身長が163㎝もなかったのだが、現在既に170㎝を超えていた。

どうやら交通事故は身長にも影響していたようだ。

本来なら視力がどんどん落ちていったのだが、現在視力は2.0のまま。


前回の人生で煩わしかった眼鏡を掛けなくなった事は僥倖だった。

だが、そのせいで前回よりもモテてしまう。


前回は友達と一緒にナンパする時に眼鏡をはずす事が多かった。

その方が、女性受けが良かったからだ。

だが、今回はその必要すらない。

視力が悪くなった事で、いつしか奥二重となった前回と違い今回はシッカリと二重のままだ。


入学してから1ヶ月もしない頃には、2年生どころか3年生の女生徒からも告白される様になっていた。


心にポッカリと穴が開いている龍徳が、志津音と来た事がある駅前のカフェで悲しみに暮れていた時の事・

「隣良いかしら?」


そう言って同じ学校の2歳年上の女性が話しかけて来た。

「勝手にどうぞ・・・」

「ありがとう・・・私は3年の小林恵。宜しくね♪」


暫く沈黙が続くが龍徳にとってはどうでも良かった。

『神山君のこの表情・・・物凄くセクシーよね・・・本当に年下なのかしら・・・何って言ったら良いんだろう・・・切ない表情を見るとキュンキュンする』


「神山君って年上の女性はどうなのかしら?」

「・・・お子様には興味がないな・・・」

これは、本当の事。


前回の人生でも高校生で年を誤魔化してバーテンをやっていた事もあり年上と付き合う事が圧倒的に多かった。

その為、大学生の頃に高校生が話しかけてくると決まって言うセリフが


「お前等の黄ばんだパンツには興味がない。」

っであった。

それ位、高校生がガキ臭いと相手をする事がなかったのだ。


「お子様って貴方の方が年下じゃないの・・・」

「クスクス♪・・・じゃ~あんたは俺より何が凄いんだ? まさか生まれたのが自分の方が早いってだけで俺を子ども扱いしてるんじゃないだろうな?」


当時も同じ様なセリフを言った事があるが、今の龍徳は自分がガキだからこそ志津音を救えなかったと苦しんでいた。

その為、ガキ扱いする言葉に対して昔の様な言葉遣いになってしまっていた。


「貴方の事を子ども扱いしてる訳じゃないわ! それでも私の方が2年分の人生経験が豊富なのも事実じゃない?」


「クスクス♪ たかが2年で? 笑えない冗談だな・・・」

先程から冷えた笑い方。

感情をどこかに置き忘れてしまったかのようだ。


「冗談じゃないわ。2年もの時間は女性を大人にするもの。」

「へぇ・・・だったら試してやろうか?」

「試すって・・・あっ・・・」


そう言って隣の恵みの肩を抱き強引に顔を近づけた。

「ちょ・ちょっと・・・ここじゃ・・・」

「大人なんだろう? こんな程度で恥ずかしいのか?」


「・・・は・恥ずかしい訳ないじゃない・・・」

「だったら目を瞑るなよ」

そう言って恵の耳に触れながらさらに顔を近づける。


「はぁ・・・ちょ・・・だ・ダメ・・・」

『イヤ・・・何なの・・・そんな顔で見られたら・・・も・もう・・・』

そして顔を背けてしまう。


「クスクス♪・・・冗談よお姉さん。」

「はぁはぁはぁ・・・か・揶揄わないでよ。」


「揶揄う?ククッ・・・恵って言ったな?」

「えっ・・・う・うん。そうだけど・・・」


すると一瞬で恵の目の前に顔を近づけると共に恵みの後ろの衝立にドンと手を突き立てた。

そして耳元でこう囁いた。


「恵・・・」

「あぅ・・・」

『ヤダ・・・声が・・・』


「俺に抱かれたいなら女を磨くんだな。」

「あ・・・ンン・・・ダメ・・・耳は・・・」

『ゾクゾクする・・・』


そして離れると

「悪いがあんたじゃ俺の相手は務まらないよ・・・」

そう言って放心している恵みを置いて会計を済ませ出て行った。


「ヤバい・・・この前会った大学生の人達より興奮しちゃったよ・・・あれが大人の色気ってやつかな・・・まるで・・・裸にされて抱かれたみたいだった・・・」


こんな感じで、龍徳が一人で店にいる時は必ず誰かが近寄ってきたのだった。

逢えないと分かっていても志津音との思いだがあるカフェに暫くの間、無意識に足が向いてしまう。


「志津音・・・」

思い出すのは幸せだった日々。

気が付けば窓ガラスに映った涙が零れる自分の姿


受験で会えず気が狂いそうな程、逢いたかった想いを我慢して

やっと会えると歓喜して向かった事で、地獄へと叩き落された。

連絡が取れない程の何かが起きた事は間違いない。


生きていて欲しい・・・

最悪が頭を過る度に頭を振るう。

「絶対・・・生きている・・・」


どんなに否定しようが、連絡が取れない事が死をイメージさせてしまう。

それに耐えられない・・・だからこそ他に好きな男が出来たのかも知れないと強制的に思い込む事で辛うじて地面に足を付けているだけなのだ。


「逢いたい・・・志津音・・・胸に穴が開いちまったよ・・・お前じゃないとダメなんだよ・・・」

上を向いて涙を堪えようとしても溢れ出てしまう。


「君の微笑みが見たいよ・・・」

そして、誰もいない寂しい家へと戻って行く。

そんな生活が続く中、仕事に力を注ぐ事で何とか学校の生活を送れるようになっていた。





「ねぇ~龍徳君~帰りどっか寄って行こうよ~♪」

「何抜け駆けしてんのよ麗華!」

「あれ~美香さんいたの~」

「行かない。お子様はさっさと家に変えれ!」


「酷~い。麗華これでも大人の身体なんだけどなぁ~」

この子の名前は三角麗華。

高1の癖に既にEカップの我が儘ボディの持ち主だ。


「あんたねぇ~龍徳君が嫌がってるでしょう!でも私だって子供じゃないからね!」

この子は相川美香。

東京に通う子はどの子も発育が良いのか?

この子も麗華には負けるがCカップはあるスレンダーな女の子だ。


「龍徳さん私と一緒に帰りませんか?」

「あぁ~委員長ずる~い」

「後から来て図々しいわね!」


「前にも言ったが俺には惚れた女がいるから他を当たるんだな。」

「そう言うところも素敵です♪」

この子は木村望。

実は、俺の会社と付き合いのある会社の社長令嬢でもある。

困った事に俺の素性がバレた一人でもある。


「兎に角、俺は忙しいんだ。お子様はサッサと帰んな。」

「えぇ~たまにはいいじゃ~ん」

「じゃ~この後、皆誘ってカラオケ行こうよ!」

「それはいい案ですね♪」


「だから俺は・・・」

それを嗅ぎつけた男共が


「どこ行くんよ!カラオケ?OK~!俺も混ぜてちょ!」

「一馬行くならボクも行くよ。」

「Ohナイスだぜ秀俊!乗れる男だな!」


「なになに~何処に行くの~?」

「加奈っちも行くカラオケ~?」

「うわぁ~久しぶり~行く行く~♪龍徳君も行くんでしょう?」


「だから俺は・・・」

「龍徳君も行くなら私も行こうかな・・・」

「えっ? 静音も来るの?」


「Oh静音ちゃん来てくれるんかよ!ゴージャスだな!だったら省吾と健一も一緒に行こうぜ!」

「何か言ったか一馬?」

「この後カラオケ行くから一緒に行こうぜ!」

「あ~皆行くなら良いぞ。」

「俺も良いよ」


「これで5対5でバランスが取れたっしょ♪」

「だから俺はいかないつーの!」

「行かないの龍徳君・・・」


この子の名前は・・・工藤・・・静音

名前を呼ぶ度にイヤでも思い出してしまう。

しかも何となく似ているから質が悪い。



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