初めての喧嘩と出会い。
初の恋愛ものを書いてみました。
毎週水曜日と土曜日にアップします。
作者的には自分で書いていて泣いてしまうような物語だと思っています。
文字総数334000文字で完結迄書き終わっているので、良ければご一読ください。
冒頭は主人公の現実。
第3話辺りから主人公の生い立ち
第6話辺りから本編と言った感じになると思います。
充実した毎日を送っているとあっと言う間に6年生になっていた。
龍徳はと言うと相変わらずポヤァ~っとしている。
そんな中、龍徳の人生の分岐点となる出来事が起こった。
ある日、学校帰りにいつもの公園を横切っている時の事。
「ねえねえ!あんた何年生?」
『何だコイツ?』
そこには、龍徳より10㎝以上背の高い少年の姿があった。
「ねえねえ!何年生だよ?」
「6年だけど?」
「6年生?見えねぇ~」
「やったねジュンちゃん!」
口の悪い少年のコバンザメみたいな子供がそう言うと
「ああ!なぁ~俺と喧嘩しようぜ!」
ニタニタと近寄って龍徳を睨む。
「はぁ?何言ってんの? お前は何年生だよ!?」
「俺は4年生。まさか年下に負けないよね!」
そして突如、龍徳の胸ぐらを掴みかかってきた。
「何すんだよ!?」
「ホレホレ!どうしたよ!」
「やっちゃえジュンちゃん!!」
「何だよ一体・・・やめろよ!」
「年下にやられて情けなくないのか!?」
「止めろよ!」
『あっ・・これ・・・デジャヴってやつだ・・・確か・・・この後・・・負ける?』
「なさけねぇ~な。それでも年上か?」
「いい加減にしろよ! ウッ・・・」
流石に頭に来て押し返そうと力を入れた時だった。
ジュンちゃんと呼ばれた少年がバックステップの後、龍徳の懐に入り込むと同時にボディーにパンチを放っていた。
初めて味わった痛みにしゃがみ込むと
「ダセェ~年下に負けるなんて!恥ずかしくねぇ~のかよ!弱ぇ~」
「ゲホッ・・・何すんだよ・・・」
「へぇ~俺のボディを喰らって良く立って来たじゃねえかよ!」
「何でこんな事をするんだよ!」
苦しそうにお腹を押さえ息を整えていると
「年上って言ってもこんなもんか・・・何か白けたな・・・行こうぜカズ!」
そう言って苦しんでいる龍徳を軽蔑した目で睨み付け去って行った。
初めてのケンカ。
しかも年下に負けた事で、流石の龍徳も傷付いた。
小6になったばかりの出来事である。
学校では見た事もない少年。
ただでさえ小食の龍徳がその日は、殆ど食事に手が付かなかった。
それ程、悔しかったようだ。
いつもであれば、初恋の女性の笑顔を見れば嫌な事など吹っ飛んでいくのだが、この時ばかりは自分の弱さに凹むだけだった。
「情けない・・・こんなんじゃ・・・志津音を振り向かせるなんてむりだよな・・・」
その後、何かにつけて思い出す。
だが、日々の習い事が忙しかった事もありいつしか忘れていった。
ところが、イヤイヤ始めた音楽隊の練習に向かう為、駅で電車を待っている時の事だった。
「行きたくないなぁ音楽隊の練習・・・」
毎回行く度に憂鬱になる。
何故なら市川駅から600m程行ったところにある江戸川河川敷の土手でマラソンと発声練習、それが終わると川に向けて音出し及び演奏をするからだ。
マラソンもそうだが発声練習は恥ずかしい。
内向的な性格である龍徳にとっては恥ずかしくて仕方がなかった。
学校が終わって遊ぶ暇もない。
土曜日と言えば友達と長い時間遊べる唯一の曜日なのに・・・
そんな精神状態でホームを眺めていると
「あっ・・・あいつ・・・」
快速列車のホームの隣、各駅停車のホームに以前、龍徳に屈辱を負わせた男の子の姿があった。
≪1番線に快速東京行きが・・・≫
ちょうど待っていた電車が入ってくるアナウンスが流れ始めた。
『今日は一人・・・なのか?』
≪白線の内側に・・・≫
後ろ姿だが見間違える訳がない。
気が付いたら龍徳は階段を降りだしていた。
「はぁはぁはぁ・・・」
≪3番線に各駅三鷹行きが・・・≫
今度は各駅のアナウンスが流れ始めた。
「急がないと・・」
慌てて階段を駆け上がると電車が入って来た。
既にドアが開いていて少年が入って行く姿が辛うじて目に入った。
「・・・!」
プシューっと扉がしまる。
『なにやってるんだろう・・・』
無意識に電車の中に飛び乗っていたのだった。
少し混んでいる電車の中を進んで行くと少年の姿が目に入る。
「いた・・・。アイツだ。一人で何してんだ?」
龍徳がこう考えたのには理由がある。
今まで、私立に通う小学生なら見た事があるが、子供一人で電車に乗っているのを見た事がなかったからだ。
余談だが、ポヤァ~ッとしている龍徳が私立の小学生がどの様なものなのかを知っている事はない。
気が付くと
「次は市川~次は市川~・・・・・」
『っ!・・・降りないと・・・』
プシューっと扉が閉まる。
『アイツ・・・どこに行くんだろう・・・』
市川から先に一人で行った事がない龍徳は、少年の事が気になって仕方がなかった。
気が付けば・・・
『なにやってるんだろう・・・ボクは・・・』
「次は小岩~・・・」
『バレたらお母さんに怒られる・・・』
人生で初めてのサボタージュ。
そして、いそいそと少年が動き出す。
「次の駅は・・・亀戸・・・ってどこだ?」
初めての駅。
少年が降りて行く後を探偵気分で尾行する。
「どうしよう・・・道・・・覚えていられるかな・・・」
必死に道を覚えようとしたのは、数える程度の事だ。
思い出すのは、初めてお幾円に連れて行かれた時の記憶。
最初に必死に覚えた道は3歳の時に母親から何にも説明されず連れて行かれた保育園。「どこに行くの?」との龍徳の質問に不安そうに「お友達のいるところ」っと話す母の違和感と普段は通らない道を自転車で向かった事で、必死に道を覚えたのだ。
家から2㎞を超える道のりであったが・・・
「ウェ~ンおかあさ~ん」
初めての保育園。
自分が捨てられたと思った龍徳は保育士の目を盗み一人で来た道を帰った事があった。
龍徳は知らないが、かなりの大事になるところであったそうだ。
保育士も母親も初めての道を迷わず家に帰れるとは思っていなかった為、家にいる龍徳の発見にかなりの時間が掛かった。
そんな話はさておき、幸いにも道を3度曲がった駅から6分位の場所にある建物の中に少年が入って行く。
「あそこだ!」
誰もいない事を確認すると近づいていき看板の文字を読む
「かつ・・・何だっけあの文字・・・」
勝俣と書いてあるが馬鹿だから読めない。
「でも・・・ここがどこだか分かった・・・ボクシングジムってやつだ・・・。アイツ何しにこんなところに・・・習っているのかなぁ?」
窓はあるがすりガラスになっていて中の様子が良く見えない。
入り口の扉についている窓からなら見えそうと思い切って近寄って行く
すると・・・
タッタッタッタッタ・・・とかシュッ!シュッ!と言う音やバシッ!バシッ!っと何かの音が様々聞こえて来た。
身長の低い龍徳には、ギリギリの高さに窓が付いていて背伸びをして中を見つめる。
『あっ・・・これ・・・見た事がある・・・これもデジャヴだ・・・』
マズいっと思い後ろを振り返ると
「どうした少年! 練習生希望か?」
「いえ・・・あの・・・」
「ほら!入った入った♪」
ロードワークから帰ってきた2人の男に押されて中に入ってしまう。
「ち・違・・・」
「お~い!会長~! 小さな練習希望者連れて来たぞ!」
そう言って中を見渡す男性。
「あれ?会長どこ行ったの岩瀬さん!」
そう言って練習生のトレーニングを見ていたひとりの男性が
「さっきジュン君が来たから会長室だよ。」
「おぉ~そう言えば今日は土曜だったな! だったら~・・」
そう言ってさらに目を横に動かすと
「植田さ~ん!この子に説明してやってよ!」
「あの・・・ボクは・・・違っ・・・」
「おお!こりゃまた小さい練習生が来たもんだ♪ 分かった!こっちにおいで坊や!」
「えっと違っ・・・」
さっきから何度も断ろうとしているのだが、大声で邪魔されたり、今度は背中をドンと押され言葉に詰まる。
そのせいで、トットットっと走って来たように見られ
「ハハハ♪ そんなに慌てないで大丈夫だよ。だが、やる気があって良いぞ!」
「ち・違っ・・・」
その時奥の扉がバアンっと開かれた。
ビクッとして振り返るとションボリした少年の姿があった。
「おう!会長!・・・ん?どうしたジュン?」
「ふん!この馬鹿、この2ヶ月間に年上に喧嘩を売りまっくっておった!」
「お~ぉ!そりゃスゲエ!何人ぶっ飛ばしたんだジュン!」
「えっと・・・20人です真嶋さん。」
「そりゃスゲエな! 将来大物だぜコイツ!なぁ~そう思うだろう会長!」
「うるさい馬鹿者! その前に!このまま育ったら将来犯罪者になっちまうわ!」
「デー丈夫だよ~俺だってガキの頃は、そうだったんだからよ~」
「お前は今でも危ないだろうが!」
「ヤベッ・・・藪蛇だ・・・オッと!そうだった!会長ほら!新たな練習希望者が来たぞ!」
「ん?どこにいる?」
「はぁ~ボケたのか?そこにいんじゃねぇ~かよ!」
そして、龍徳と目があった。
「いえ・・・ボクは・・・」
「アホか貴様!!どう見ても小学生じゃないか!」
「やる気があるんだった良いじゃねぇ~かよ!」
「ふむ・・・。そりゃ~そうだわな・・・ウチの純一も小4だしな・・・」
その時、純一と呼ばれた少年が・・・
「あれ?どっかで見た事があんな・・・」
「なんだ!純一の友達か?」
「こんな弱そうな奴、友達にいねぇよ爺ちゃん!」
「そうなのか?」
「あぁ!!お前!」
そう言われてギクッとする。
「何だ!やっぱり知り合いか?」
「違いますよ真嶋さん!ホラ・・・さっき言ったじゃないっすか・・・」
そう言われて思い出したように
「おぉ~なるほどね!さっきジュンの言っていた20人切りの一人って事か!?」
「そうです。」
「ダァ~ハッハッハッハッハ~♪ こりゃ面白れぇ!偶然か? 多分違うよな?」
そう言って龍徳に顔を向ける。
「いえ・・・その・・・」
「馬鹿者!!純一は、少しは反省しろ! 要するのこの子はお前の被害者って事だろうが!お前が大人だったら犯罪者だぞ!」
そう言われて一同ハッとする。
「おお・・・そうだな・・・警察行くか?」
牧島に言われて今度は純一が“へっ?”っと変な顔になった。
「お前が話すとややっこしくなるから出しゃばるな! それより少年!偶然じゃないんだよな?って事は仕返ししたいって事か? まぁ・・・こいつが悪いんだけど・・・どうすっかな・・・」
「いえ・・・そう言う訳じゃ・・・」
違うと何度も言っているのだが、声が小さいせいか龍徳の言葉を無視して話が進んで行く。
『ああ・・・このシーンも見た記憶がある・・・確か・・・』
「そうだ!だったら互いにフルセット付けて殴り合え!それが終わったら手打ちにしよう!なっ!」
「何んの事? ボクは別にそんな事は・・・」
「当然、純一にはハンデとして16オンスのグローブを付けさせるから!なっ!それで良いだろう?」
「えぇ~いくら何でも16オンスは重すぎだよ!」
「おぉ~そりゃ~ナイスアイディアだな会長!」
「だろう! そうとなりゃ! そっちは岩瀬頼んだぞ!」
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