父親との絆
初の恋愛ものを書いてみました。
毎週水曜日と土曜日にアップします。
作者的には自分で書いていて泣いてしまうような物語だと思っています。
文字総数334000文字で完結迄書き終わっているので、良ければご一読ください。
冒頭は主人公の現実。
第3話辺りから主人公の生い立ち
第6話辺りから本編と言った感じになると思います。
その後も似たような出来事が何度もあったが、周りの友人達は何があってもいつもと同じ様にただの偶然と認めず大した話題にも上らなくなっていった。
そして、5年生に上がると龍徳の初恋となる出会いがあった。
その少女は、とても可愛く、頭も良く運動神経も抜群、男勝りなのに女性らしい。性格は明るく面倒見が良い女の子で、男共のマドンナ的存在となっていた。
龍徳も例外に漏れる事無く、この子に惚れたのだった。
クラスの班分けで同じグループ。
この幸運に龍徳は毎日幸せだった。
この娘の名前は鈴木志津音。
ミニバスと吹奏楽をやっており、この子を見たいだけの理由で龍徳もトランペットを握る様になった。
ただ、それだけの理由であった龍徳が上達する訳もなく周りの男性陣からは、やはり馬鹿にされてしまう。
音程は外すし、ハッキリ言って音符さえ読めないのだ。
余談だが、トランペットの才能がなかっただけで、トロンボーンの才能があると吹奏楽で何度も全国優勝していた知人に教えてもらった。
どうやら唇の形が大きく影響するらしい。
実際吹かせて貰ったら一発で音があってしまった。
兎も角、貧乏であった神山家ではあったが、龍徳が習いたいと自分から言い出した事が嬉しかったらしく父、昌男は仕事終わりにバイトをしてまで購入した事を龍徳はしらない。
少しでも初恋の娘に振り向いて欲しく龍徳的に努力はしていた。
実は姉であるノンちゃんもミニバスと吹奏楽をやっていたから知った情報だった。
奇しくも初恋の女性の先輩にあたるノンちゃんには絶対にバレる訳にはいかない。
当時、龍徳を虐める事が好きだったノンちゃんにバレたらどれだけ揶揄われるか想像に容易かった。
惚れた女性の前で少しでもカッコいいところを見せたいと思うようになってからは、勉強が出来ない事や運動神経が悪い事が徐々に恥ずかしいと思うようになると以前から母が言っていた様に塾に通う様になっていく。
英語専門の塾と通常科目の塾の二つ。
関西から父に嫁いだ龍徳の母、恵美子は海の近くにある青果市場にパートに出ている。
今であれば子供たちの為に働いてくれていた事が分かるが、当時は他所の家が羨ましく見えていた。
昔は土曜日も午前中だけ学校があった。
当然、給食はない。
その為、龍徳は土曜日だけ母親がいる青果市場まで歩いて行き昼食を取っていた。
当然だが作ったものが食べられる訳はなく毎回カップ焼きそばである。
当時、この辺りは開発が進んでいてあちこちに大型重機が置いてあった。
今の様にフェンスで囲まれていない工事現場も数多く建物の立っていない建築予定地は子供たちの格好の遊び場所となっていた。
海まで2㎞の距離を歩くと海だけでなく大きな市民プールがある。
毎年1回だけ父親が連れて行ってくれる事が楽しみだった。
小4の頃から始めたスイミングスクールは、父が唯一教えてくれたスポーツ。
教わっても今一つ理屈の分からない龍徳は感覚だけで泳ぎ続け、気が付けば上級クラスに上がっていた。
細かく等級分けされており、毎月昇級テストがあったのだが、始めた当初は一番下のCクラスの16級。
実力に合わせて飛び級がある昇級は、上になる程厳しくなるのだが、何をやっても認めて貰えない龍徳にとっては、何かを認めて貰った結果であり、それが嬉しいだけで続けていた事を両親は知る由もない。
習い始めて1年でAクラスの11級は、実は大した才能であったのだが、その事に龍徳が、気が付く事はなく、上級生達と一緒に練習に勤しんだ。
龍徳的には、努力しているつもりの勉強は一向に芽吹く事はなく母親からは、「将来が心配だ」っと泣かれてしまう。
みんなが何であんな事をやっているのか意味が分からないけど周りの真似をしているのだ。少し位は努力を認めて貰いたい。・・・そう思っている龍徳の事を褒めるのはいつも父、昌男であった。
自分にそっくりな龍徳は昌男に取って唯一の心の安らぎ。
釣り好きであった昌男と一緒に毎週釣りに行くのは、小4になってからの趣味となっている。
龍徳が生まれた頃まで“へら釣り協会”で断突トップであった昌男は、釣りの難しさを楽しむ為に協会を辞め現在は野釣り一本であった。
父の釣り方は、一切の矛盾を感じる事がない。
その為、龍徳は何の疑問もなく釣りを楽しむ事となった。
釣りの中でも難しいと言われるヘラブナは野釣りともなればボーズ(0匹)は珍しくもない。
そんな中、周りの釣り人達を寄せ付けない釣果を出す父が誇らしくて仕方がない龍徳は、知識は無いものの釣りの仕方だけは父の姿を見て完全に真似る事が出来るまでに成長していた。
その結果、自然の釣りであるからこそ大の大人達が、挙ってボーズであっても神山親子だけは釣果を出すのであった。
魚が釣れると“タモ”と呼ばれる網で魚をすくい“フラシ”と呼ばれる網に魚を入れる。
だからこそ、魚が釣れていなければフラシを川に付ける事はないのだが、毎回釣れている神山親子にとっては“フラシは常に出して当然なもの“であった。
川釣りなどでは、他の大人達の中に子供の姿を見た事がない。
それ程、ヘラブナ釣りとは難しく本格的にへら釣りをする子供がいない事に気が付きもしなかった。
毎週必ず釣りに行き、毎週必ず周りの大人たちが揶揄いに来るのも日課となっていた。
「ほ~フラシを出してるって事は1匹は釣ったのかい? 大したもんだ。」
「坊主・・・本当に連れたのか? 連れてないならフラシは水に漬けたらダメだぞ?」
「それ位は知ってるだろう? って事は、みんなボーズの中釣れたんだから大したもんだよ」
大体がこんな感じで揶揄ってくる。
自分達が多少釣れている時であれば
「今日は食いが良かったから坊主も釣れたみたいだな。」
「おじちゃん達が10匹位釣ったから2、3匹位は釣れたのかい?」
等など自分達より“釣れている訳がない“っと言う考えが見え見えであった。
そして、必ずフラシの中を見たがるのだ。
大人達が釣れていない時であれば
「どれ!釣れた一匹見せてよ」
ここで、“良いですよ”っと答えないとしつこく見たがることは経験済み
だからこそ
「はい。構いませんよ」
と龍徳は応える。
するとニヤニヤしながらフラシに近づき網を上げる。
この時、龍徳を馬鹿にしようという気が丸見えなのだが、馬鹿な大人たちは気が付かないのだろうか?
龍徳がそんな風に思っている中
「「「おわっ!!」」」
「おい!坊主!こんなに釣ったのか?」
「うそだろう・・・俺でさえ1匹なのに・・・」
バシャバシャバシャっとフラシの中には十数匹のヘラブナの姿があった。
「しかも半分位は尺ベラじゃねぇ~か・・・」
尺ベラとは30㎝を超えたヘラブナの事で釣り人の一つの目標の様な物なのだ。
「この辺は釣れるのかぁ~」
「そうだな! 対岸よりこっちが釣れる日だったんだよ!」
「なぁ坊主!この左に入っても良いかい?」
あくまでも場所が良いから釣れた。
大人達は決して龍徳の実力とは認めない。
毎回、そんな大人達を見ている龍徳の言葉は・・・
「ええ。構いませんよ♪」
「本当か!俺バッグ取ってくる!」
「だったら車を回した方が早い! 俺車回すから!」
そう言って隣に入り込むが、連れた姿を見た事がない。
その間も神山親子は釣り続け十分満足した様に日が暮れるには、まだまだ余裕がある時間には撤収するのだった。
そして、帰り道
喜色満面の父、昌男が嬉しそうに先程の出来事を詳細に語り始める。
最初の頃はおっかなびっくりしていた龍徳が心配で他人が来るたびに、自分の釣りを止めて助けに行っていたのだが、何度も続く中、龍徳の対応が上手になっていきそれを含めて見ている事が楽しみの一つとなっていたようだ。
釣果は昌男が37匹で、龍徳が26匹。
周囲の大人たちは、釣れた人で2匹。
大半がボーズであった。
釣れない事でストレスが溜まった大人たちがフラシを出した子供の事を馬鹿にしょうと正に“釣られたように”毎回群がってくる。
そして、フラシを上げた大人たちが余りの重さに先ずビックリする。
中には「重っ!石でも入ってるのか?」などと言い出す輩もいるが、フラシを上げていくと
バシャバシャバシャっと凄まじい魚の量に腰を抜かす大人までいた。
子供を馬鹿にして揶揄おうとしていた大人たちが反省する事なくしどろもどろになっていく姿は滑稽の一言。
それを何かある度に自慢げに話す昌男を見る事が嬉しくて仕方がなかった。
人に認められる事がない龍徳は父、昌男のそういったところが好きでしょうがない。
息子の事を誇らしげに語る父の姿が龍徳の自慢だった。
小5になってもポヤァ~としている龍徳は気が付けば、週の大半に習い事が入っていた。
毎週2回の塾は夕方6時から9時まで。
さらにスイミングスクールも週2回。A級になってからは19時から21時の2時間
英語専門の塾も週2回それに吹奏楽。
さらに、母親がやっていた宗教の活動に音楽隊と言うものがあり、興味もないのにやらされる事になってしまった。
水曜日、土曜日、日曜日の週三日と言われたが、日曜日だけは絶対に拒否。
その結果、毎週土曜日だけ市川駅まで通う事となった。
そして、毎週日曜日は釣りと気が付けばいつ遊んでいたのだろうか?
答えは簡単で、塾が始まるまでの僅かな時間だけ友達と遊んでいた。
だが、遊ぶ時間が短くなった事で友達が離れて行った事に龍徳は気が付きもしない。
その為、一人で壁当てをする日が増えていった。
公園の入り口にある高さ1.2m程の壁にストライクゾーンを自分で書いて毎日毎日、飽きる事無く投げ込んだ。
投球数は軽く600球を超える程投げていた事は異常な事なのだが、龍徳は知らない。
入り口の地面に埋め込まれた丸石がイレギュラーを起こす為、気が付けばフィールディングが上達していた。
偶に同じ団地内に住む友人の頼朝(あだ名:本名は中村)と一緒に壁当てをする事があった。
頼朝は野球部レギュラーで肩が強い。
団地の横壁に当ててキャッチする遊びを良くしていた。
そんな折、頼朝が屋上にボールを投げられるようになって何度も団地の屋上に上がる様になっていった。
気が付けば龍徳も屋上へとボールを投げられる様になり2人で遊ぶ時には一人が屋上で一人が下と訳が分からない事まで始めたのだった。
本来、野球部の外野手と同じ距離が投げられるだけで大したものなのだが、龍徳は、それがどう言う事かを理解していない。
小学5年生から友達と始めたゴルフも気が付けば大人顔負けになっていた。
これは、長くなるから割愛しよう。
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