志津音の予感
毎週水曜日と土曜日にアップします。
作者的には自分で書いていて泣いてしまうような物語だと思っています。
文字総数334000文字で完結迄書き終わっているので、良ければご一読ください。
8月中旬・・・
本来であれば神山家恒例で毎年キャンプに行くのだが、父“昌男”が会社を起業する事となり準備に東奔西走していた。
その為、今年のキャンプが無くなったのだった。
姉の日野美がブウブウ言っていたが、会社の全貌を話したところ協力的になったのだった。
何かと忙しかったが、その間も志津音のポケベルには“114106”
電話で志津音が
「これどう言う意味?」
っと聞かれても
「その内分かるよ♪」
っと答える龍徳。
基本的には電話で話せるが、受験勉強機関であっても龍徳は、ボクシングに水泳。毎日ではないが、週に一回は自分の会社に顔を出していた。
その為、外にいる時間が長い龍徳との遣り取りが出来る事を志津音は喜んでいた。
2度目の人生は、最高のものにしたいと思っている龍徳のパフォーマンスは常にMAXなのだから普通の中学生は愚か、高校生や大学生と比較するものではない。
神木商事が龍徳の父親に出している仕事は年間5億との事だったが、急激な拡大を図る龍徳の会社は起業半年で、700億以上の売り上げを叩き出していた。
未来を知っているのだから当然と言えば当然の結果。
全事業部を合わせた利益率は25%と既に175億以上の経常利益を出していた。
広告宣伝費の予算をはじめから利益の5%と決めていたのだが、既に5億を超える予算となっていた。
父、昌男の会社はやはり前回と同じネーミングであった。
“神山総合企画”本来の未来ではパートを合わせて10人程の会社であったが、最初は父一人からのスタート。
だが、今回は印刷技師を始め営業、制作、撮影、事務と総勢15人からのスタートとなった。
営業利益としては20%を上乗せする為、毎月の仕事だけでも800万以上の利益がある。
多い時には1200万円を超える様になっていた。
龍徳は自分の父親の為に、錦糸町駅の近くにあった1500坪の工場を購入し印刷に係わる全ての設備を導入させたのだった。
これは、将来を見越しての買い物なので、僅か15人程度では半分も工場を使えていないが、そう遠くない内に人数が何倍にもなると分かっているからこそ、この物件に決めたのだ。
そして、龍徳の父親もやはりただものでは無く、広告代理店として本人が手掛けるものは、通常広告の4倍と素晴らしい宣伝効果を生み出したのだった。
その結果ウィンウィンの関係を築く事になった。
龍徳はと言うと、将来の事を踏まえ父親の会社に週に1回は顔を出していた。
最初は社長の息子程度の扱いだったが、経営能力は言うまでもなく営業のスキルや事務能力さらには制作スキル迄見せつける事で、社員達に一目置かれる様になっていた。
そして、11月頃に本来なら昌男が務めていた会社を辞め、難癖をつけた会社の社長が昌男を訴えた事件があった。
これは、昌男が育てた社員達が、商店街のお買物券を無断で増刷し使いこんでいた事によるものだ。
それが発覚し関与していた社員達が昌男に教わったと吹聴した事で、無意味な裁判に巻き込まれる事となった。
だが、今回は社内の犯行として新聞に掲載されたのを昌男が見つけた事で、発覚したのだった。
捕まったのは、本来の未来であれば昌男と一緒に退職するはずであった釣り仲間の小林と言う男性。
「アイツがそんな馬鹿な事をする訳がない!」
っと憤慨する昌男だったが、知った時には引っ越していて所在がつかめなくなってしまった。
運命はやはり確定しているのだろうか・・・
当事者が変わるものの誰かが犠牲になる事が少し怖い。
9月に入り約束通り電話でのやり取りを繰り返す。
電話を切る時に必ず志津音がコンコンっと6回鳴らすのが当たり前になっていた。
「本当は知っていてやってるんじゃないのか?」
「ううん♪ 全然分かんない♪」
「何で、声が嬉しそうなんだよ?」
「そう? 龍徳君と話しているからじゃない?」
「クッ・・・電話越しでも・・・」
そして龍徳も6回鳴らす。
「ウフ♪ じゃ~私も♪」
っとノックをし返す。
「絶対知らないんだよな?」
「うん♪ 全然分かんない♪ なんだろぉ~♪ 分かった! “またあそぶぞ”かな?」
「クッ・・・そ・そんな感じだ・・・」
「そっか~♪だったら~5回だったらどうなの?」
そう言って受話器に爪で5回叩く。
『ウフ♪ あ・い・し・て・る・・・』
「し・知らん!」
「そっか~なんかこれって龍徳君の事を考えるとピッタリなんだけどなぁ~♪」
「ブホッ・・・ゲホッ・・・」
『フフ♪ 焦ってる焦ってる♪』
「ゲホッ・・・ほ・本当に知らないんだよね?」
「うん♪」
「・・・高校入試が終わったら覚えてろよ・・・あ~んな事や!そ~んな事もするからな!」
「キャァ~♪ なにされるんだろう私♪ 楽しみにしてるね♪」
「本当になんて女だよ・・・」
そして、4回爪音を立てた。
「私も・・・」
っと同じ様に4回音を鳴らす。
『私もあ・い・た・い・・・』
「ちょっと待て!今なんて言った!」
「えぇ~なんか言ったっけ♪」
「ヌゥ~逢えないからって・・・次あったら絶対我慢しないからな!」
「いやぁ~ん私何されるんだろう♪ 全部、龍徳君の物にされるのかなぁ~♪」
「ブホッ・・・ゲホッ、ゲホッ・・・・お・女の子がそう言う事を言っちゃいけません。」
「えぇ~龍徳君の彼女になるって意味だったんだけど♪ 他にも何かあったのかなぁ~♪」
「ブホッ・・・ゲホッ・・・」
「キャ~ハハハハ♪ 大丈夫? プッ・・・キャ~ハハハハ♪お腹痛いよぉ~♪」
『キャァ~♪楽しい♪ 電話だけでも凄い幸せ♪』
「ふ・深い意味はございま・・・って!そんな事あるか! はぁ~俺の負け! 絶対追い付いて惚れ直させてやるからな!」
「うん♪ でも、あんまり頑張り過ぎないでね♪」
『もぅ~1分前より惚れてるよ~っだ! 知らないくせに! だからお願い・・・頑張り過ぎないで・・・私がドキドキし過ぎて死んじゃうよ・・・』
そして、龍徳の中学校では球技大会の時期となった。
当時の龍徳は、廃れ始めていた為、球技大会には参加していなかった。
くじ引きによって龍徳はサッカーとバスケに出る事となった。
「良いなぁ~龍徳君の雄姿を見たかったなぁ~・・・」
電話越しでもハッキリ落ち込んでいる事が分かるテンション。
「そんなにションボリするなよ♪ 受験が終わったら健一も誘って遊びに行こうぜ♪」
「そう言うんじゃないもん・・・」
「違うの?」
「だって・・・龍徳君スポーツしたら絶対に女の子が放っておかないもん・・・」
「プッ・・・ないない♪ 中学校の中じゃ俺がモテないの知ってるじゃん♪」
「はぁ~分かってないんだからぁ~心配だよ私・・・」
この志津音の予感は当たってしまう。
「キャァ~♪凄いよ龍徳君♪」
「うん♪ 本当にカッコいいよねぇ~♪」
全8クラスのトーナメント戦で、既に両方とも決勝へと駒を進めていた。
運動会の時から気になりだした女子を除き、最初こそ誰からも注目を浴びていなかったのだが、駒を進める度に否が応にも目立ってしまう。
サッカーに至っては元サッカー部と現役のサッカー部が6人もいる中で、既にハットトリックを決めている。
実は、元の世界では全国大会に出場経験があるサッカー部から助っ人に呼ばれていた程の実力を持っていた。
その技術と経験を持ったまま、前回を上回る身体能力で発揮するのだ。
いくらサッカー部だと言っても弱小サッカー部。
ハッキリ言って大人と子供ほどの実力差だったのだ。
「凄い♪凄い♪ また抜いた♪」
「まだ抜くよ! 凄~い♪6人抜き・・・」
「キャ~♪また決めたよ♪」
っと結果を見れば5対3で龍徳のクラスが優勝。
だが、それよりもバスケの試合は凄かった。
相手は5人中3人がバスケ部員。
全員が知っているレギュラーメンバーだった奴らだ。
だが、現役を離れてしまった奴らと今でもなお鍛え続けている龍徳とは何もかもが違うのだ。
今では身長が165㎝となった龍徳は、以前のなんちゃってダンクではなくギリギリダンクが出来る程の成長を遂げていた。
身体能力の全てが日本トップクラスかそれ以上。
そんな男が前回の経験と今回の経験と技術を持って遊べば結果は一目瞭然だった。
「キャ~♪龍徳く~ん♪」
「凄~い♪ カッコいい~♪」
先程から黄色い声援が飛び交っている。
どうやらサッカーを見ていた女子たちも龍徳がバスケもやっていると噂になって見に来たようだ。
気が付けば体躯間の周囲に1年生から3年生の女生徒が150人程集まっていた。
「神山龍徳先輩・・・うん♪決めた!」
「久美どうしたの?」
「私、あの先輩に告白する!」
胸元のネームプレートには2年3組“森田久美”と書かれている。
「嘘・・・久美が?何の冗談? 少し前にサッカー部の神代先輩と剣道部の菅野君を振ったばかりじゃない。」
「だからよ! この人以外いないもん!」
「だって・・・私に釣り合う男がいないって言ってたじゃない・・・」
「だってしょうがないじゃない!龍徳先輩が部活やってるの見た事ないし・・・運動会の時から気になってたけど・・・やっぱり凄いや♪」
「へぇ~他校からも告白されたあんたが・・・」
「ほら見て~♪またダンクしたよ♪ キャ~♪龍徳先輩~♪ カッコいい~♪」
「ハハ・・・目がハートになっとる・・・でも、ライバル多そうだよ?」
華麗なドリブル。
他者を寄せ付けないフィジカル。
圧倒的な跳躍力。
そして、圧倒的なシュート力。
そうそう、伝え忘れたが、前回の人生でサッカーと同じく全国出場経験のある・・・っと言うより通っていた高校自体が運動部に全力で力を入れていた高校だったので6割以上の運動部が、全国大会経験があったのだが、同じ様に助っ人として何度も呼ばれていた。
既に高校1年生の時の身長を超えた龍徳は、現在過去の自分を凌駕する身体能力を得ていた。
そんな男を引退したバスケ部が止められるはずが無い。
気が付けば82体37のダブルスコアで優勝したのだった。
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