龍徳の幼少期
初の恋愛ものを書いてみました。
毎週水曜日と土曜日にアップします。
作者的には自分で書いていて泣いてしまうような物語だと思っています。
文字総数334000文字で完結迄書き終わっているので、良ければご一読ください。
冒頭は主人公の現実。
第3話辺りから主人公の生い立ち
第6話辺りから本編と言った感じになると思います。
「起きなさい!龍徳!」
「眠い・・・後5分・・・」
母親に起こされるが、布団をかぶる一人の少年。
「それ何回も聞いた!もう5分経ったの!良いから起きなさい!」
そう言って布団を剥がれるが、今度は敷布団にくるまった。
「お前はミノムシか・・・」
呆れ顔で嬉しそうに見つめているが、朝は時間がない。
「毎朝毎朝・・・いい加減に起きろぉ~!」
母親の怒鳴り声でビクッとして目が覚めた。
「おはよう・・・」
「とっとと顔を洗って来なさい!遅刻するよ!」
「寒いなぁ~」
「お姉ちゃんを見習って、ちゃんと歯磨きしなさいよ!」
「分かってるよ!」
母親に促されブルブル震えながら洗面所に行くと蛇口を回す。
「ヒィィィィ~冷てぇ~ やだなぁ~これで顔洗うの・・・」
バシャっと一回水を掛け擦る様に顔を洗うと手で擦り始める。
急いで顔を拭くと簡単に歯ブラシを済まして食卓へ。
「シッカリ磨いたの?」
「磨いたよぉ~」
「知らないよ虫歯になっても!」
毎朝言われるこの会話が面倒臭いのか話を逸らす。
「はぁ~お腹減ったぁ~朝ご飯なぁ~に?」
「これに決まってるでしょう。」と声の持ち主は少年の姉である。
タイミング良く。チン!っと音が鳴ると同時にオーブントースターからパンが飛び出る。
食卓に出されたのは先日の給食で出された冷凍された食パン。
姉が先に食卓に座り無表情で食パンを食べていた。
「おはよう・・・ノンちゃん。」
「おはよう・・・」
ノンちゃんこと神山日野美は少年の2学年上の姉だ。
『はぁ・・・またこれかぁ~・・・偶には違うものが食べたいなぁ・・・』
億劫そうにパンを手に取る。
その時、父親が仕事着に着替え終わったのか食卓に来ると出された食パンにバターを付けて当たり前の様に食べ始める。
「おはようお父さん♪」
「おはよう。龍徳もサッサと食べないとお母さんに怒られるぞ。」
「は~い。」
オーブントースターで焼いたパンはボソボソとしてカチカチになったパンは、ハッキリ言って不味い。
「ご馳走様でした・・・。行ってきま~す」
「行ってらっしゃい気を付けてね!」
「いってらっさぁ~い」
龍徳が呑気にそう言うと姉のノンちゃんが先に家を出て行った。
砂糖をたっぷり入れたコーヒーに食パンを付けて食べないと食べられるものでは無い。
「またアンタは、そんな食べ方してぇ~!!ほんとにお父さんの真似ばかりするんだから!」
そう言ってお母さんが父親を睨む。
「こ~やって食べた方が美味しいもんな~龍徳~♪」
「うん♪ 間違いないね!」
「ほら!食べ終わったなら食器を流しに出して!もう時間だから急いで!」
「はいはい。」
「ハイは一回!!」
「は~い。」
この子の名前は、神山龍徳。
小学4年生だが、早生まれなので10歳だ。
性格はのんびり。
と言うよりポヤァ~ッとしている。
今でいう発達障害か?と言う位、周りに付いていけない子供。
性格は良いが、兎に角頭が悪い。否、それだけではなく運動神経もどうやら悪いようだった。
成績は、学年の最下位を争う程度の頭の良さ。
通信簿は、5段階評価で“アヒルの体操“と姉に良く馬鹿にされていた。
5段階評価は5が一番よくて1が最悪。
龍徳の通知表の大半が1で、偶に2で会った。
その為、通知が1・2・1・2・1・2・1・1・1と言ったようにまるでアヒルの首が伸びたり縮んだりを繰り返すような感じ。
“アヒルの体操”とは良く言ったものだ。
そんな馬鹿にされた皮肉であっても龍徳には届かない。
逆に一緒に笑っている様な馬鹿な子供であった。
本人は至って真面目のつもりなのだが、何をやっても“何でそんな事をするのか?“、”皆が何をやっているのか?“が理解出来ないのだ。
だから何をするにも周りの動きを真似する。
4月からは5年生だと言うのに早生まれの上に身体が小さいから小学2年生くらいにしか見えない。
その為、足は遅く、友達と遊んでいても“お豆ルール”であった。
年上の子や同い年の子供達と公園で遊ぶ時は必ず
「お前は“お豆”な!」っと言われていた。
“お豆ルール”とは、いてもいなくても同じなので、何をやっても許されるといったもので、周りの友達がどんなにルールを説明しようが、龍徳が理解出来ない上に運動神経も悪いと来たら仕方がない事であった。
ハッキリ言って馬鹿にした言葉なのだが、コレさえも意味が良く分かっていない龍徳は一緒に遊んでくれるだけでも嬉しそうにしていた。
埋立地後に建てられた団地の階段を降りて友達の家に向かうと親友のチミル(清水)と合流し、その後シノタン(篠崎)の家へ向かうのが日課となっている。
「「おはよう~シノタン。」」
「おう!おはよ。今日もさみぃなぁ~」
シノタンは身体が大きく3人のボス的存在だ。
「じゃ~じゃんけんね!」
そう言って荷物持ちじゃんけんを毎日行うのもルールの一つ。
「はい!神さんの負けね!」
龍徳には、これと言ったあだ名が無く周りから“神さん”と呼ばれているようだ。
「えぇ~もうずっと運んでるんだけど・・・」
「神さんが弱いからいけないんだよ。じゃんけんなんだから公平だろう?」
そう言って笑うのはチミル。
背中と胸にランドセルを掛け片手でもう一つのランドセルを持っての登校。
チミルとシノタンの2人は楽しそうに会話しながら気軽に歩いている。
小学校の校門の近くになるとイソイソと自分のランドセルを背負い始める2人。
今思うと確信犯だったのかも知れない。
教室に入ると昔懐かしの石炭ストーブが起これている。
その周りには、何人かの男女が暖を取っていた。
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪
チャイムが鳴るとそそくさと自分達の椅子に座りガラガラっと扉が開くと担任の先生が入って来た。
「起立っ! 例! おはようございます!」
「「「「「おはようございます。」」」」」
「ん。おはよう。」
こうしていつもの学校が始まって行く。
すると後ろの席の友人が消しゴムのカスを龍徳に飛ばす。
「なんだよ末永!?」
「なぁ、神さん宿題やってきた?」
そう言われてポヤッとする。
「何だっけ宿題って?」
「はぁ?この次、算数の宿題を出されてただろう?」
「えぇ~そうだったっけ!?」
そう言って日課表を取り出すと確かに宿題の事が書かれている。
「ヤバい・・・忘れてた。」
「やっぱりなぁ~ほら!今の内に映しちゃえよ!」
そう言って末永君が算数のノートを龍徳に渡してくれた。
「ありがとう末永♪」
国語の教科書を机に立てて、いかにも“黒板を写しています“と言った感じで、次々に宿題を書き写していくと・・・
「あれ・・・この問題の答え・・・こっちも・・・あれ?何か間違ってるような・・・」
普段の龍徳であったら何も考えずにただ書き写すだけ。
だが、何故だか問題の答えが頭に浮かんで来る。
コソコソっと後ろを振り返ると
「なぁ・・・この宿題の答え間違ってない?」
「っ!? ・・・そう思うなら移さなくて良いよ。」
龍徳の言葉に気まずそうに目を反らす末永。
『余計な事を言っちゃったかな・・・毎日助けて貰ってるのに・・・』
「ゴメンね変な事聞いちゃって・・・」
「ああ・・・。」
違和感のある宿題の答えを書き続ける。
「ありがとう末永!助かった!」
っと小声で伝えノートを返す。
この時の龍徳は気付きもしなかったが、末永の好意は、給食に自分の好物がある時だけのものであった。
当然、見返りを求めての優しさなのだ。
不思議な感覚だったが“自分の勘違いだった“と考える事を放棄した龍徳であったが、次の算数の授業で自分の答えの方が正しかった事が証明された。
「この問題分かる者!」
先生にそう言われて手を上げるのは成績上位者のみ
そう言った友達は、既に答え終わっている為、2回目はそうそう先生から名前を呼ばれない。
手を上げない大半の生徒が“限りなく存在を消す技”を発動させる中、必ずと言って良い程、
龍徳が指される。
いつもなら「分かりません。」とか間違った答えを言うのだが今日に限っては
問題が書かれた黒板に向かいコツコツコツっとチョークで答えを書き込んで行くと・・・
「ほぉ~正解だ!」
「「「「「おぉ~!!」」」」」
1年で何回かはまぐれ当たりがある。
だが、今日だけは答えが“分かった”のだ。
と言うよりも“既に知っている”っと言ったような感じであった。
回りの友達に持て囃される恥ずかしいのだが、不思議な感覚に戸惑っている自分の方が気になっていた。
しかも、その出来事は、算数の授業だけではなく他の授業でも同じ様な事が起こったのだ。
下校中。
「おい今日はどうしたんだよ?」
っとチミルが驚いて声をかける。
「神さん隠れて勉強してんじゃね?」
っと今度はシノタン。
「ボクにも分かんないんだけど・・・何か答えが分かったんだよね・・・。」
「ふ~ん。」
「まぁ~そんな時もあるかもな。それより!早く公園行こうぜ!」
シノタンの言葉に賛成し家に戻ってランドセルを置くと中央公園に向かう。
団地の中にあるかなり大きな公園は、小学生に取っての聖地である。
上級生から下級生までたくさんの子供達が集まる公園はある意味早い者勝ちなのだ。
だから、野球やサッカー、ドッチボールに缶蹴りや鬼ごっこなど年齢がバラバラでも一緒に遊ぶ事も多かった。
本日は、野球。
身体の大きいシノタンは上級生にも負けないパワーが売りだ。
当然、本人も野球で遊ぶことが好きだったようだ。
そして、龍徳の打順。
「お前は打たなくて良いからボール狙っていけよ!」
いくらお豆ルールと言っても野球には適用されない。
いつも三振の龍徳は毎回フォアボールしか許されなかった。
これでも一人で遊ぶ時はボールを壁当てしてかなりの時間投げるのだが、バッティングとなると一人では練習しようがない。
ボール玉を見切ってフォアボールになっている訳ではなく突っ立っていれば50%以上の確率でフォアボールになるだけだった。
カウントがワン・ツーからツー・ツーとなり、後ろからは「こりゃ~ダメだな」っと馬鹿にされる声が耳に入る。
そしてピッチャーが投げた次のボールがストライクゾーンに入る!っと龍徳が“分かった”。
気が付くと無意識に身体が動きバットを振っている。
野球で遊ぶ事はあるが、習っている訳ではない。
そんな龍徳が力みのない完璧なスイングでボールを捉えると
「「「「おぉ~!!」」」」
「マジか!?」
「「「すげぇ~!!」」」
ボールは放物線を描き公園の端であるフェンスに直撃した。
この中央公園は、野球場の様な広さの公園と遊具場、そして、バスケやミニサッカーが出来る金網に覆われたコート、さらに丘の様な場所まである大きな公園だ。
野球をする広場は、ナツに盆踊りで使われるほど広い。
端のフェンス迄70mを超える広さがあったにも拘わらず直撃したのだ。
ホームベース代わりの段ボールからでも60mは余裕の距離。
これには、打った本人も驚いた。
パワー自慢のシノタンでさえフェンス直撃は見た事がない。
『一体・・・ボク・・・どうしたんだろう・・・』
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