告白前の告白
毎週水曜日と土曜日にアップします。
作者的には自分で書いていて泣いてしまうような物語だと思っています。
文字総数334000文字で完結迄書き終わっているので、良ければご一読ください。
「はぁ~・・・」
「どうした?」
「いやぁ~なんか・・・凄いなぁ~って思って・・・」
ストローの刺さった缶ジュースを飲みながらポォ~っとした表情を浮かべて龍徳を見る。
「何が?」
「だって・・・龍徳君スポーツ全般得意じゃない?・・・頭も良いし・・・何か私と住む世界が違うなぁ~って思っちゃって・・・何で私なんかといるのかな~って・・・」
志津音からすれば当然なのかもしれない。
実際どのスポーツも国体選手以上の実力。
前回の人生でもそうであったが、不運によって夢が散った当時の龍徳は、中途半端な男を見ると虐めたくなる悪癖があった。
ツッパってはいたものの努力する週間だけは、ボクシングのお陰で週間となっていた。
その為、ふざけた男を見かける度に相手の土俵で捻じ伏せる事に喜びを感じていた。
相手が3年かかって辿り着く場所に1ヶ月ほどで辿り着いてしまう。
それこそ、相性が良いスポーツや武道であれば僅か1週間で届いていたのだ。
その様な悪癖は、大学3年生になる頃まで続けた事で、様々なスポーツが人並み以上に出来てしまう。
今回の人生では、そこまでの経験が無いものの前回得た経験と鍛え上げた肉体によって直ぐにでも実現できてしまうだけなのだ。
普通に考えたら有り得ないクオリティ。
人生をやり直す事になった歳まで、努力し続けた龍徳の経験と知識が全て14歳の龍徳へと受け継がれていれば、桁が違うと誰もが思ってしまう。
元の人生であっても異常と言われた龍徳が2度目の人生を送っているのだ。
志津音からすれば天井人のイメージを抱いたとしても仕方がない。
だが、志津音は知らない
龍徳が何でここまで努力する様になったのかを・・・
「ふぅ・・・住む世界が違うか・・・」
「うん・・・」
「俺もそう思っていた時期があったよ♪」
「龍徳君が?うそ~!」
「嘘じゃない・・・小学生の時はずっと劣等感を持ってたよ・・・。」
「あ~そう言えば、小学生の頃って龍徳君の印象あんまりなかったなぁ~」
「だろう♪ で、ある人に近づきたくて頑張る様になったんだよ・・・」
「へぇ~・・・その人凄いんだね~」
『ある人ってだれだろう・・・女の子じゃないよね?』
「ああ・・・本当に当時の俺にとっては手の届かない雲の上の存在だった・・・。それこそ未だに憧れてるよ。」
「うわぁ~龍徳君がそこまで言うんだ~」
「そんなに俺は大したもんじゃないけどね♪ でもその人は、本当に凄い人でね・・・その人に近づきたくて・・・その人と同じレベルで話したくて・・・でも、どんなに努力しても追い付いた気がしなかったから未だに努力してるだけなんだよ・・・」
「はぁ~今の龍徳君なら十分だと思うんだけど・・・まだ届かない様な人なんだ~」
「うん・・・その子に認めて欲しくて・・・その人に振り向いて欲しくて・・・だから人の何倍も頑張ってきた・・・」
「へ・へえ~・・・もしかして、女の子だったりして・・・」
「そうだよ♪ その人の横にいてもまだ俺の憧れなんだなぁ~って・・・」
そう言って志津音を見つめる目に熱が籠る
「そ・そうなんだ・・・」
『だれだろう・・・何か・・・やだなぁ~・・・』
「近くにいるのに・・・遠い存在・・・それ位俺は、その子に心を奪われてるよ」
「ふぅ~ん・・・」
『なんかヤダ・・・』
拗ねた様な顔でそっぽを向く
「何ムッとしてるんだ?」
「何か、その人が羨ましい・・・。私も知っている人?」
「ああ・・・一番知っていると思うけど♪」
「そうなの? えぇ~誰だろう・・・」
あの子じゃないだろうし・・・あの子でもないよなぁ~っとブツブツ独り言ちる。
「聞きたい?」
「ちょっと待って当てたいから!・・・」
『ああ・・・この子は何て純粋なんだろう・・・』
十数秒して答えられない志津音に対して
「ブブ~時間切れで~す♪」
「えぇ~全然分かんな~い・・・誰なの・・・その・・・龍徳君の憧れの人って・・・」
聞きたいけど聞きたくない・・・だけどやっぱり知りたい・・・そんな心の差異が見て取れる。
「知りたい?」
「うん!知りたい・・・。」
「そっか♪・・・じゃ~恥ずかしいけど教えるよ・・・その人は、小学生の頃にミニバスをやってて・・・」
『えっ・・・』
「その人が吹奏楽にいるって姉貴に教えて貰ったから俺も入部する事にした・・・全然ダメダメだったけどね♪音楽何て全く才能がないのに・・・ただ、その子の近くにいたくて・・・」
『うそ・・・』
「その人は頭が良くて、運動神経も良くて、優しくて面倒見が良いのに根性迄ある・・・本当に憧れた・・・だから馬鹿だった俺は、少しでも追い付きたくって頑張る様になったんだよ・・・」
「そ・それって・・・」
「フフ♪ 中学生になった時にクラスが離れてメチャクチャ凹んだ。俺にとっては女神の様な人だったから・・・クラスが違うから何の部活なのかもわからないし・・・だけど運良く中2の時にバスケ部だって分かったから俺も入部したんだ♪」
「・・・」
予想外の話に声を失ったようだ。
驚いた表情で龍徳の顔をシッカリと見つめている。
「その人を守れるような男になりたい・・・告白する為に、その人に相応しい男になりたい・・・そう思ってきた・・・俺が凄いって?ハハハ・・・それが本当なら・・・そうなる切っ掛けをくれた君が凄いんだよ・・・志津音・・・君なんだ。」
ハッキリと自分だと諭されビクッと身体を震わせて目を見開く
「だ・だって・・・わ・わたし?・・・そんな・・・そんなに凄くないよ?」
その言葉に龍徳は目を瞑って首を振る
「あぁ~!また揶揄ってるんでしょう~もう騙されないもんねぇ~」
一瞬驚くが、即座に考えを改める。
日頃から揶揄われるのにそんな訳がない
そう思った志津音に龍徳は・・・優しく首を振って否定する。
「こんなに近くにいるのに・・・」
そう言って志津音に触れる。
「やっぱり・・・まだまだ俺には遠い人だと思ってしまう・・・。」
「だって・・・龍徳君モテるんだよ? 私なんて・・・」
「他の女の子なんてどうでも良い・・・誰よりも君に惚れている・・・まだまだ実力不足だけど・・・時が来たら・・・告白するから・・・」
「う・うそ・・・」
自分の頬を指で抓って目を見開いている。
「今は中学生だから我慢するけど・・・高校生になったら、遠慮しないから・・・覚悟しておけよ♪」
「うそ・・・」
「だから~嘘じゃないって・・・あぁ~我慢しているって話か?マジだぞ!?今だって本当は志津音に告白して付き合いたいし!抱きしめたいし!キスだってしたい・・・だけど、今からそんな事したら我慢できなくなる・・・だから本当に我慢してんだぞ?」
龍徳の言葉を聞いていた志津音の目に涙が浮かぶ
「な!ななななな・・・ど・どうした・・・そんなに嫌だったか?」
慌てる事のない龍徳が動揺を隠せない。
「・・・ううん・・・違うの・・・」
『泣いているところも・・・可愛いなぁ~って!』
「えっと・・・ゴメン。多分俺が悪いんだよね? でも本気なんだよ・・・自分に嘘は・・・もう吐きたくないんだ・・・」
「・・・うん・・・」
「え~っと・・・ゴメン!本当なら高校生になってから話そうと思ってたんだ・・・フライングだよな・・・だから・・・今の無しで!」
「ダメ~!! ヒック・・・無しになんて・・・しないんだから・・・」
「・・・そ・そうだな!無しはダメだよな・・・えっと・・・」
狼狽えるばかりで言葉が思いつかない。
『だめだ・・・何も思い浮かばん・・女性で狼狽えた事なんて経験がない・・・』
前回の人生でも龍徳の女性関係はハッキリ言って凄まじかった。
運命の日の後、何かに覚醒したような龍徳は、モテ始めて行った。
一生のうちにモテ期が2回や3回はあると言われる中、14歳の8月から36歳までモテ続けた。
特に15歳から22歳までは遊び人であった事もあり付き合った女性は100人を超え、肉体の関係を持った女性の数は500人を超えていた。
2股、3股は当たり前。
一番ひどい時には、最大6股をかけるほど遊び慣れていた。
精神年齢はオッサンである龍徳からすると相手は今日で15歳。
どう考えても犯罪だ。
本来なら同い年であるのだが、どうしても前回の人生の考えが邪魔をしてしまう。
高校生になったら我慢しないとは、前回、高校に入ってから女性経験豊富になった事で、高校生ならある程度は許されると勝手に思っているだけなのだ。
告白などしようものなら自分の感情が抑えられなくなる。
出来れば結婚したい・・・
本来なら重たい話だが、実年齢49歳と今回の人生分の歳を重ねた龍徳にとっては至極当然の思いなのだ。
だが、結婚となると前回の失敗が教訓となる。
だからこそ、一定の距離を保ちながら徐々に近づいて行った方が良いと思っていたのだ。
一瞬で距離を詰めた恋愛程、終わる時も速い。
今回は絶対失敗したくない!
モテ期時代に“強引番長”と揶揄された龍徳でも志津音だけは本当に特別な存在なのだ。
だからこそ思ったように言葉が出ない。
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