思い出との決別
毎週水曜日と土曜日にアップします。
作者的には自分で書いていて泣いてしまうような物語だと思っています。
文字総数334000文字で完結迄書き終わっているので、良ければご一読ください。
こちらも良ければ読んでくださいね♪
■「小さな小さな 大冒険!!」続編を開始しましたので、宜しければご一読下さい。
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文字数は少ないですが、出来る限り毎日アップしていこうと思いますので宜しくお願い致します。
「ふぅ・・・そうだな・・・お父さんも納得してはいないな・・・」
「ならば、うちの会社がバックアップしますからご自分の会社を作ってみませんか?」
「どう言う事ですか?」
「その話をする前に龍徳君の事をお話した方が良いかも知れませんね。」
「龍徳の事?」
「ええ。そこにいる龍徳君に私は救われたんですよ・・・。」
「龍徳が?どう言う事ですか?」
そして、木村はボクシングジムで悩んでいた事や龍徳が未練を断ち切ってくれた事。そして、一歩踏み出す勇気を貰った事を話して聞かせたのだった。
「そんな事が・・・」
「ええ・・・言葉で言うのは簡単ですが、私は本当に救われた・・・今の私があるのは全て龍徳君のお陰と言っても過言ではありません。正直、龍徳君にぞっこんなんですよ。」
「龍徳・・・お父さんはお前が誇らしいぞ・・・。」
『ヤベッ・・・メチャクチャ嬉しい・・・何か涙が出てきた・・・。』
「う・うん・・・ありがとう・・・お父さん・・・。」
「そこで、相談ですが、今後ウチの印刷物を全て受けて下さることを条件に無利子、無担保、支払期限なしで印刷会社を経営して頂きたいのです。」
「それって事実上・・・」
「ええ・・・お返しいただかなくても結構です。形式上は、広告物の売り上げの5%をお返し頂く契約にしますが、最初から見積もりに含んでいただいて結構です。」
「それは、嬉しい申し出ですが、そちらに何のメリットが?」
「ありますとも! 先程のアドバイス然りです!広告を出す事は、当然幅広く宣伝する事ですから、製作者の能力によって圧倒的に結果が変わります。」
「俺が、お父さんのお客さんの話をしてあるんだよ。」
「なるほど・・・確かに私の手掛けた会社は大半が大きくなりましたね・・・。」
「ご理解いただけるなら話が速い。東京にある幾つもの印刷会社から最高の会社を探し出す事なんて実際何十年かかるか分かったものではありません。」
「それだけ父の事を認めてくれたって事ですか?」
「そう言う事ですね。受けてくれるなら10億が20億でも儲けものですよ。広告宣伝による効果の違いや新しい宣伝戦略。時代はバブルに突入しようとしていますから今が最大のチャンスになります。」
「バブル・・・ですか?」
「そうです。神山さんも何となく分かっておいでではありませんか? 土地の値段が徐々に上がり住宅が飛ぶように売れ始めている事を」
「確かに・・・なるほど・・・バブル・・・面白い事を考えますね」
「これに気が付いたのも龍徳君のお陰なんですけどね♪」
「そうなのか?」
「う・うん・・・偶々何だけどね」
「元から自分達でも広告会社を考えていたのですが、一からとなるとどれだけコストがかかるか・・・さらに臨んだ結果が得られるとも思えません。そこで、龍徳君から話を聞かされてからずっとお会いする事を楽しみにしていたんですよ。」
「そうでしたか・・・」
「現在の弊社の広告費の予算は年間5億を予定していますが、恐らく今後、2年以内に20倍以上に膨らむと考えています。」
「それは凄い。」
「建築、不動産だけでも2社。現在進行中の案件を含めれば既に800件の戸建てに着手しておりますし、ビルの建設も予定中です。さらにアパレル部門もブランド化を目指し現在、都内を中心に8店舗。2年後には100店舗を目指しています。飲食店も同様です。」
「先程も仰っていましたね。」
「他にも海外の主力商品を、テレビを使った通販で販売しております。」
「なるほど・・・説明書やラベルですか・・・」
「さすがですね、海外製品のラベルを日本語に変えるのもかなりの量になります。」
『さすがにやり過ぎたか? でも・・・親父なら・・・』
「かなり魅力的なお話です。」
「こちらからお願いしたい事は、2年後に年間100億もの広告予算を処理できる状態へと会社を育てて頂く事です。」
「確かに一人で熟せる量を遥かに超えてしまいますね。」
「なので、最初にこちらで、印刷工場と4色輪転機、2色機を含め必要な印刷機材の全てを準備いたします。」
「いくらかかるかご存知ですか?」
『この質問は当然だな・・・4色の輪転機だけでも10億はするだろうからな・・・』
「ええ♪ 先程お話したではありませんか♪10億が20億でも安い物だと♪」
「ふぅ・・・本気なんですね?」
「ええ。こんなもので、龍徳君への恩を返せるとは思っていませんが、本気です。ですが、勘違いしては困ります。あくまでもギブアンドテイクです。」
「私から御社に与えるものがあるとは・・・」
「ですから先程、お話したじゃありませんか・・・神山さんの才能を買うんです。」
「龍徳・・・」
不意に名前を呼ばれる。
「なに?」
「カッコいいお父さんが良いよな?」
「お父さんは今でも十分カッコ良いけどね♪」
そして、何かを考えると
「分かりました。そのお話受けようと思います。」
「本当ですか! 有難うございます!!」
この出来事によって、神山家の運命の歯車は、未来と大きく変わっていく。
以前、龍徳が感じた事だ・・・犠牲にならなかった場合・・・運命は他の誰かを犠牲にする。
時は進み学生たちは夏本番へと突入する。
本来であれば心を閉ざし始めた龍徳が喧嘩に明け暮れる中、ある人物と出会うはずだった。
その物の名前は正樹龍也。
当時、目付きの悪かった龍徳は駅周辺で必ずヤンキーと喧嘩になっていた。
そんな中であった本物の一人。
喧嘩を撃ったのはヤンキーだけでなく、武道を学んでいる学生全てを妬んだのだ。
自分より弱い奴が偉そうにしている事が許せない。
自分より弱い奴がヘラヘラしている姿が癇に障ってしょうがない。
そんな中であった強者が正樹龍也であった。
龍徳の2つ上であった正樹も喧嘩上等を地で行くタイプで、同じ様な境遇であった龍徳と喧嘩して以来、無二の親友となっていった。
だからこそ龍徳は悩んでしまっていた。
『正樹さんと本当なら明日出会うはずなんだよな・・・』
運命を回避した事で、現在の龍徳は喧嘩に明け暮れる事はない。
だが、正樹に会うという事は、喧嘩をしに行かなければならないという事。
『どうしたら・・・』
悩み抜いた結果、龍徳が正樹に合う事は無かった。
折角、人生をやり直しているのにわざわざ前回をトレースする必要はない。
既に受けようと思っている高校でさえ違うのだ・・・
そうなれば当然、高校時代の友達も初めての彼女も・・・大学生の思いでの何もかも失う。
そう考えると心にポッカリと穴が開いた気がした。
『志津音によく似た女性に惚れた記憶も・・・失う事になるのか・・・って!本物がいるのに関係あるか!』
それは、龍徳が大学1年生の頃の記憶。
交通事故の医療ミスにより年々事故の後遺症に悩まされる龍徳が高校に上がると悪友に恵まれ喧嘩にナンパとグレて行くが、そんな時でも大好きな父親の悲しむ顔だけは見たくなかった龍徳は常に家族にバレない様に生活していた。
本当ならば高校卒業と同時に就職したかったのだが、成績の良かった龍徳を周りが放っておかなかった。
余りにも煩い周りの意見にイラっとしてしまい大学に行く事に決めたのだ。
中途半端な事が嫌いな龍徳は高校3年生の夏から猛勉強をする事で偏差値を20も上げた。
もっと優秀な大学を受験しても受かったのだが、悪友の何人かが同じ大学を受ける事が分かり、その大学以外を志望する事はなかった。
大学生となり親元を離れると我慢していた分、遊びに拍車がかかって行った。
そもそもが、大学などに行きたくなかったのだ。
大学に行けるのに勿体ないと目的が無いのに大学生になった龍徳は徹底的に遊んでいく。
その為、暴走族だけではなくヤクザに目を付けられたこともある。
苦い記憶では、18歳の頃に高校時代の友達が新宿でヤクザを指してしまい。
その事を龍徳達に隠したまま龍徳のマンションに転がり込んで来た事があった。
この事に仲間達が全員キレた。
当たり前だろう。巻き込まれては溜まったものでは無い。
そんな中、新宿で遊んでいる時に友達の一人がヤクザの抗争に巻き込まれ銃で頭を打ち抜かれ殺された事があった。
この時、初恋の女性に良く似た女の子を守る為に龍徳も怪我をした。
この時代の龍徳としては珍しく態度とは裏腹に大事にしていた女性だ。
大学生になりいくつかバイトをしたが、一番羽振りが良かったのはホストであった時だ。
高校時代から身長が伸び170㎝を超えると徐々にモテて行き大学生になった時には異常な程モテる様になっていた。
常に遊びでもコンパでも中心にいた。
当時としては奇抜な髪形で、どうやっても周りから注目が集まってしまう。
右肩の脱臼癖を克服する為に徹底的に鍛え上げた肉体は凄まじい膂力を秘めていた。
ベンチプレス140㎏を上げる腕力と100㎏の握力。
100メートルを11秒台で走れる脚力と1メートルを超えるジャンプ力。
さらにフルマラソンを2時間半で走れる持久力。
悲しい事にボクシング時代の影響で徹底的に生きた筋肉をつける癖が付いていた。
そして、ギャンブル運が強く元から金を持っていたが、ホストによって桁違いの金を持つ様になっていった。
ナンパとホストで培ったトーク力や情報力に生まれ持った隠せない優しさ、それでも世の中を斜に構えたギャップ、運動神経が良く、頭が良い。そこにブランドに身を固め、何でもスマートに熟してしまう器用さ。そんな男が大金を持っているのだから女性は放っておかなかった。
当初は女性に対して青臭かった龍徳も女性経験が5人を超えた頃には、周りが見えなくなるような恋愛が出来なくなっていった。
何をしようが、何処にいようが常に女性が傍にいる。
時代がバブルだったからなのか、それとも龍徳が遊び人だったからなのか近寄ってくる女性は全員同じ様に見えて行く。
実際には社長令嬢やモデル、夜の蝶やAV女優、大学生は当たり前で社会人と様々なのだが、同じ様な事ばかり話す女性に心が冷えて行った。
思い出すのは、初恋の女性。
思い出の中の女に現実の女性が勝てる訳がないのだが、唯一龍徳が心残りとなっている女性である事は事実。
女性に飽きているのに近寄って来られる事で、女性に対して常に冷めた態度で接していた。
どの女性も「他に女がいても良いから!」と余りにも愚かな女性に自分は女に惚れる事はもうないのかも知れない。
そう思っていた時に知り合った女性
名前を神木雫と言った。
最初は他の女性同様に接していたが、初恋の女性の面影があるこの女性に徐々に心が引かれていった。
龍徳が、この女性とならば恋愛が出来るかも知れないっと思った時に謎の疾走。
その後、何度も探したが、2度と出会う事はなかった。
前回の人生で結婚した妻とは恋愛感情より放っておけなかった・・・そう言った方が正しいだろう。
正直、結婚などは考えていなかったが、付き合っている時に妻の両親が2人共亡くなった。
その時に、必ず幸せにすると約束したからこそ責任を取ったに過ぎない。
かと言って愛情が無かった訳ではない。
少なからず自分が愛する女性なのであれば、周りの男に負ける訳にはいかないと努力し続けたほどだ。
龍徳が21歳の夏に出会ったのだが、その当時は既にホストを止めていた。
否、正確には恋愛出来るかも知れない女性が現れた事で当時の女性関係を清算する一環にホストを止めたのだ。
別に失恋した訳ではないのだが、心に穴が開いた様な感じだった。
良い年になったにも拘わらず、それが切っ掛けでツイツイ喧嘩をしてしまっていた。
そんな中、ドライブをしているとウッカリ当時流行っていたゼロヨンに混ざってしまう。
周が冷やしたてる言葉にキレ、そのままゼロヨンに参戦。
勝ったもののプライドを気付付けられた男達が後を追ってきて大乱闘へと発展。
この時のゼロヨンの観客の中に元の妻がいた。
喧嘩が始まり龍徳の圧倒的な強さにビビり手を引いたが、
別の日に一人で走行していると車をその中の一人に車をぶつけられ大事故を起こした。
隣を走行していた車がいたお陰で事なきを得たが、隣の車は大破して死亡事故となった。
周りの目撃証言があった事で、龍徳は無罪放免となったのだが、この事を証言してくれた一人が元の妻であった。
前回の龍徳の人生は壮絶だった。
地べたを這いずり回る思い。
金がなく浮浪者の様に公園やトイレで寝た事もあった。
それでも上を向いて努力を続けた結果、32歳からお金に困る生活はしなくなっていった。
だが、それでも命の危険を感じる出来事に何度も巻き込まれては、その全てを乗り越えてきた。
それは全て、それまでの人生に出会った経験によるもの・・・。
友に裏切られ、部下に裏切られ人を信じられなくなった事もある。
それでも平均よりは上の生活が遅れる程、余裕がある生活が遅れる様になったのだ。
中には2度と味わいたくない記憶も沢山あるが、幸せな記憶も沢山ある。
その全てを失う。
そう龍徳は決意したのだった。
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■「新世界!俺のハチャメチャ放浪記! 記憶喪失の転生者」もアップしましたので宜しければご一読ください
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月曜日の朝7時に更新します。
■「勇者撲滅! 2度目の人生はハッピーエンドで!」もアップしましたので宜しければご一読ください
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火曜日と金曜日の朝7時に更新します。11月分まで予約してあります。




