父を護るために
毎週水曜日と土曜日にアップします。
作者的には自分で書いていて泣いてしまうような物語だと思っています。
文字総数334000文字で完結迄書き終わっているので、良ければご一読ください。
こちらも良ければ読んでくださいね♪
■「小さな小さな 大冒険!!」続編を開始しましたので、宜しければご一読下さい。
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文字数は少ないですが、出来る限り毎日アップしていこうと思いますので宜しくお願い致します。
7月に入っても続く雨にウンザリする中、龍徳の目的の一つであった日を迎える。
「明日は・・・親父と一緒にいなければ・・・。」
極秘と書かれたノートを開いて真剣な顔を見せる。
1986年7月12日
この日付は俺の誕生日の4ヶ月後だったからハッキリ覚えている。
親父が仕事中に事故に巻き込まれ頭に20針縫う大怪を負った。
話を聞くとどうやら通行人を守ろうと庇ったからだそうだ。
本当は入院しなければならなかったのだが、家族を養う為に入院を拒否して血だらけで帰ってきた。
そうノートに書きこんであり最愛の父が晩年に苦しんだ原因を取り除く。
その為に準備をしてきたのだ。
龍徳の仕事のパートナーとなった木村と様々な分野に着手していたのだ。
実案は龍徳で実行に移すのが木村であった。
今では、社員6人となった会社の名前は“神木商事”
神山と木村から取った名前だ。
木村は、元から何でも屋と開業しようと思っていたのだが、龍徳と出会った事で一緒に会社を経営する事を選んだのだ。
元から器用で頭が良かった木村はボクシングの才能は無かったが経営の才能を大きく開花し始めていた。
6人の社員もそれぞれの分野で実績を積んだエキスパートだ。
木村の人脈からもリクルートした。
田中美里26歳は経理、総務、人事と事務職のスペシャリストで、この若さにして大手企業の中枢を担っていた程の人材だ。
IQ145の天才で、どうやら木村に恩があるらしい。
中村浩平28歳は幅広い営業のスペシャリストで元大手の若手No.1で将来を約束されたエリートだったが、遣り甲斐を無くしていたところを引っ張った。
俺も営業時代は名前が売れていたので、かなり期待できる事が分かった。
上田健也31歳は大手建設会社で現場監督をしていた建築関係のエリートだ。
難しい現場は全て上田に任せろと言われる程、有名人らしい。
この上田さんも元プロボクサーで俺が通い始める前に引退したらしい。
持田香24歳はプログラマーのスペシャリストだ。
この時代では彼女の才能を生かしきれないだけで、凄まじい才能の持ち主だった。
周りから見れば突拍子もない持田は、神木商事の将来性に魅力を感じたらしい。
上田勉30歳は両親が海外暮らしの帰国子女だ。
少し前に倒産した大手貿易会社の部長を任されていたらしい。
要は海外貿易のスペシャリストって事だ。
この人も練習生としてボクシングジムにいた事があったらしい。
相川紀子23歳は、元モデルで、つい最近までアパレルメーカーに在籍していた。
当時のファッションは、少し控えめな服が多かったのだが、彼女はミニスカートを始めとするセクシー系を販売しようとしたのだが、反対派に押し切られ悩んでいたところを引き抜いた。これはラッキーだと思ったものだ。
各自の人脈を生かし商品を仕入れて販売が基本だが、それ以外にもビジネスチャンスと思えば何でもチャレンジして構わないと伝えたところ全員やる気になったようだ。
この時代としては、かなり待遇が良いと思う。
完全週休二日制の上に有給休暇は完全消化。
9:00~17:00で原則、残業なし。
フレックスを導入しているので、結果を出せばかなりの自由が利く。
結果に伴っての昇給と歩合、さらに年6倍以上の賞与を約束した。
実は、木村と大勝ちした競馬の後、会社の設立だけではなく極秘ノートの通りに馬券を買い続け、100億を超えた時点で株を購入したのだ。
正確な時間が記されていなかったせいで損する事もあったようだが、ストップ高やストップ安などはシッカリと抑えたようで、着々と資金を増やしていた。
今後の事になるが、極秘ノートには
1987年10月19日 ブラックマンデー
と記された箇所には最重要と記入されている。
他にもいくつか似たような記入があるが、一番年代が近いためか最重要と書かれていたのはこの部分だけであった。
何にしても木村と言うビジネスパートナーを見つけた龍徳達は、既に所持金が2000億を超える事になっていた。
なので、社員がやりたい事があれば1億円を上限にプレゼンテーションを随時行わせたのだ。
その結果、海外ではやりの飲食店を始めたり、テレビを使っての通販を始めたりと効率良く稼げる体制や目新しいビジネスをどんどん進めている。
話は逸れたが、明日7月12日の23:00頃に親父が大怪我をする。
これは、俺の学費を稼ぐために仕事が終わった親父が土木作業員のバイトをしていた時に鉄パイプを縛っていたロープが切れた事で起こった労災だ。
だが、当時の俺は知る由もなかったが、この時代の建設会社は国で定めた保険を使わせなかったのだ。
理由は、事故を起こす会社はイメージが悪く国の仕事を貰えなるからだ。
その為、親父は実費で診察を受けた。
当時貧乏であった事で、入院費など払う余裕がなく一家を守る為、親父は無理に無理を重ね続けた。
その為、晩年に苦しむ事になる。
今思い出しただけでも泣けてくる。
グレ始める頃の出来事だったが、どんな時でも俺は親父が大好きだった。
痛々しい傷口を見て心配した俺に
「こんな傷、大したこたぁ~ない♪ 放っておいても治るのに大袈裟に縫われただけだ」
っと子供達を安心させた。
だが、俺は知っている。
ボクシングが出来ないと分かっても長年しみ込んだロードワークの習慣で夜中に目を覚ました時に親父が苦しむ声を何度も聴いたからだ。
うっ・・・クッ・・・
っと唸ってはトイレに駆け込んで吐きまくっていた。
当然だ・・・一トン以上の鉄パイプを受けて無事な訳がない。
死んでもおかしくない事故だった。
それ程の重傷を負いながらも家族を安心させようとする。
子供ながらに偉大な父の背中に涙が零れた。
親父は印刷会社の会社員で、ふざけた社長に良い様に使われていた。
名目上は副社長。
実際は、平社員に毛が生えた程度だった。
親父が、この会社の息子さんが乗ったバイクと接触事故を起こした事が切っ掛けで努め始めたところ僅か2年で売り上げが4倍増となったそうだ。
当時の日本は、ゴルフの会員権を持っている事がステータスだったらしく。
稼いでも、稼いでも社長さんが女とゴルフの会員権に費やしたそうだ。
だから、木村さんに印刷の依頼を親父に出させ打ち合わせを土曜日の夜にしたのだ。
当時は、親に内緒で始めたボクシングだったが、成績も上がり母親に文句を言われない事で、今では、隠さず通えるようになっている。
そこで、出会った知り合いが広告を出したいと親父に伝え接点を設けたのだ。
実際、一番利益を上げている事業が不動産事業部だったので、住宅の売り出し広告を作る予定だった。
1986年はバブルの走り出しの年で、情報が速い人なら不動産は金の鳴る木であった。
当然、知識のある俺が木村さんを通して指示を出す。
さらに時代は好景気へと突入していく為、ファッションもイケイケの様相を醸し出している。
なので、合わせてアパレル部門を任せていた相川紀子の雑誌や広告も頼む予定だ。
当時、親父は俺の高校受験に合わせて会社を作った。
時期はもう少し後だったが、今回の件を含めて独立を促す予定だ。
当然、金の無かった親父はブローカーとして自分の知識を武器に広告代理店を始めたが、弱点として印刷機が無かった事だった。
だから、親父の為に様々な出会いを演出する予定だ。
そして、互いに忙しく会話が少し減ってしまった親父と合流し一緒に待ち合わせ場所へと車で向かう中、親子水入らずの会話を楽しんだ。
「まさか龍徳の知り合いから仕事が貰えるとはなぁ♪ だが、あまり無理はするな。お父さんは、龍徳が元気でいてくれるだけで嬉しいんだからな。」
『泣きそうだ・・・やっぱり昔のままだ・・・』
俺が自分の子供に対して無償の愛を注いだのは間違いなく親父の影響だ。
本当にこの人の子供である事が嬉しい。
だからこそ、親父にはもっともっと幸せになって貰いたい。
「そうだね♪ まさかお父さんと一緒に仕事の話をするとは思わなかったよ♪」
「お父さんの夢が一つ叶ったな♪」
「そうなの?」
「ああ。釣りもそうだったけどやっぱり息子と一緒に仕事が出来たら嬉しいだろう。」
「そっか・・・だったらそうなる様に俺も頑張るよ♪」
俺との会話が本当に嬉しいのだろう。当時も喜んでくれている事は分かったが、自分が親となったから親父の思いまで読み取れてしまう。
「そうだな♪ だけど今は友達を大切にしなさい。大人になったらいくらでも仕事は出来るしやらなければならない。でも学生時代との友達は今だけだからな・・・友達を大切にするんだぞ。」
『このセリフ・・・何度も言ってくれたなぁ・・・』
「お父さんに教わったから友達は大事にしているよ。」
「そうか。」
「俺が、大人になったらまた一緒に釣りにつれてってよ!」
「そうだな♪ それも楽しみの一つだ。」
「俺も楽しみだよ♪」
「っと!待ち合わせは、この辺りだな・・・。」
待ち合わせ場所は、俺の会社がある青山だ。
渋谷の駅から徒歩10分で青山学園近くのオフィスビルだ。
実は6月末に所有していた会社が倒産してオークションにかかる前に銀行から話があった。
これも、銀行に話があったら買いたいと伝えていたからこそだ。
20階建てのオフィスビルと隣の200坪程度の土地を併せて、本来なら250億程の物件を100億で入手する事が出来た。
「そうだね・・・このビルだね。隣の駐車場に止めて平気だよ。」
そして、車を止めてエレベーターに乗り最上階へと向かった。
扉の外で既に待っていた木村さんと顔合わせをして中に入り早速本題に入った。
「早速ですが、現在複数個所に20棟前後の住宅を売り出す事になっておりまして。その広告を神山さんにお願いしたくお呼びしたのですが、良いアイデアがあればお知恵をお借り出来ればと」
「戸建ては、不動産の知り合いが多く広く手掛けていますので、お役に立てるとは思います。」
「おお!それは心強い!」
親父の言った事は嘘ではない。
実際いくつか付き合いのあった不動産屋の内3つの会社は、親父が作った広告がヒットして、かなり大きな会社へと成長した。
だが、時代共に金の亡者となったあいつ等は親父を次々に裏切った。
今回は絶対に親父にあんな悲しい思いはさせない!
「なるほど・・・これは面白いアドバイスを頂きました。」
「お役に立てるようで何よりですよ。」
「いやいや・・・流石は龍徳君の父上と言った感じですね。」
「子供を褒めて頂き有難うございます。親だから龍徳の才能が楽しみでね・・・素直に嬉しいですよ。」
『本当に・・・昔のままだ・・・ヤバい・・・涙が・・・。』
「ハハハ。龍徳君からはお父さんの自慢を卒中聞かされていましたから似た者親子と言ったところですね♪」
「そうだね♪ 凄いでしょう俺の親父♪」
「ああ。これなら他の案件もお願いしようかと思うんですが、如何ですか?」
「他の案件ですか?それはどの様な?」
そして、印刷物に係わるもの全てを相談していく。
「正確な見積もりを出さないとハッキリした事は言えませんが・・・億単位は間違いなく行きますが、大丈夫ですか?」
「お金の心配はいりません♪」
「それは凄いですね・・・儲かって何よりです・・・」
「なるほど・・・龍徳君から聞いていた通りの人格者ですね・・・もう一つ提案があるのですが・・・宜しいでしょうか?」
「ハハ。私にできる事なら」
「ズバリ申し上げますと・・・神山さん自分の会社を持つ気はありませんか?」
「自分のですか・・・正直考えていない訳ではないんですがね・・・。」
「龍徳君から聞いています。今の会社の社長が理不尽だそうですね。」
「龍徳・・・そんな事まで言ったのか?」
「ごめんなさい・・・だけど俺、悔しくって・・・あの狸爺・・・自分の会社が親父のお陰で大きくなったのに・・・自分は遊び歩いているくせに・・・朝から晩まで安月給で、こき使われる親父を見ていると辛いんだよ・・・。」
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